穣さん+佐和子さんインスタLIVE Vol.7は『バレエ談義』♪

日差しも和らぎ、風は秋色。2020年9月19日(土)は4連休の初日。その夜、21時より、穣さん+佐和子さんによるインスタLIVE Vol.7が配信されました。

先ず公開されたのは凜々しいふたりの画像♪インスタ・アカウントからの転載です。

この日の配信は、穣さん+佐和子さんのアカウントではなく、穣さんのアカウントで行われましたので、最初、見つけられなかった方もいられたのではないでしょうか。かく言う私も、おふたりのアカウントへ行って待機していたものですから、「なかなか始まらないなぁ」と思っていたところ、連れ合いから「もう始まってるよ」と言われ、「えっ!?」ってなって、慌ててストーリーに戻り、まだ「傷も浅い」ところから視聴することが出来ました。

このインスタLIVE Vol.7『バレエ談義』は、穣さんのアカウントにアーカイヴがありますので、よろしければ、こちらからどうぞ。(約56分)

以下に少し、内容をご紹介しようと思いますが、もともと、バレエの素養がない私には手に余る部分、伝え切れない部分が、これまで以上に多くあります。その点、ご容赦いただき、アーカイヴをご覧になる参考程度にお考え頂けたらと思います。

*バレエを始めた頃: 佐和子さん3歳から17歳にベジャールの許に行くまでバレエ一筋。穣さんは6歳で踊りを始めるが、最初はジャズで、バレエは10歳から。

*バレエって世界の入り口(佐和子さんの場合): 「ずっと大好き。パリ・オペラ座に入るって思ってた。私にとってそれは(きらびやかな世界とかではなくて)『芸の道』みたいなもの。ドキュメンタリーとか、どういう道で上り詰めていくかに共感していた。キラキラしたチュチュが着たかったとか、そういうのは全然ないの。ただバレリーナたちがカッコイイと思っていた。カッコイイ人への憧れから、そういう人になりたいと思っていた」(佐和子さん)「初耳だね」(穣さん)

*バレエって世界の入り口(穣さんの場合): 「男の子ひとりでタイツ履いて、女の子のなかにいて、始めた当時はジャズの方が好きだった。バレエは『基礎だからやっとけ』と父に言われてやっていた部分があった」(穣さん)(上の写真は、穣さん14歳、バレエ団の公演に出て、『くるみ割り人形』でクララの兄・フリッツ役をやったときのプログラム用のもの、とのこと。)「普段の先生・先輩が全然別人みたいになってそこにいる、舞台芸術としてのバレエの世界観に魅了された」(穣さん)「自分はその世界観のなかに入っていく自分が楽しかった。自分が演じる、表現するってことに快感を覚えていた」(佐和子さん)

身体と向き合うこと: 「年を重ねてくると真摯になってくる。続けていれば、向き合う日々も増える。若い頃のように勢いではいけないから、考える。骨格、構造がバレエのなかにあることに気付いていって、『凄いな、バレエって』と改めて思う」(穣さん)「40代になって、子どもが読むようなバレエ本を買い漁って読んでいる。でも、西洋で生まれて、彼らの骨格に合った方法論。ディープに入っていかないと、『同じ』ってところは分かりづらい。今は自分の身体にバレエの基礎がどう働くのか考えられるようになったから、凄く楽しい。昔は力任せにやっていたから、身体を壊したりもした」(佐和子さん)「自分たちの頃は表面的な『かたち』という捉え方で教えられていた」(穣さん)「日本人のバレエダンサーが踊るときに『かたち』に囚われ過ぎて、本質が出てこないことが多く、『真似事』のような気がすることも」(佐和子さん)「成長過程の身体を理解した上で進めていくためには知識も歴史も必要。バレエは身体を変えなきゃいけないから、時間がかかる芸術」(穣さん)

*バレエの/と歴史(西洋の場合): 「科学技術の進歩、医学の進歩のうち、身体に纏わることが徹底して研究されてきた。バレエは、イタリアで発祥、フランスで成熟、花開いたのはロシア(旧ソ連)。で、旧ソ連において、社会制度とマッチしたことが重要。貴族が愛する芸術分野を脱して、バレリーナを社会制度として育成する道、その文化を担う専門家を育てる道を選んだ」(穣さん)「欧州やロシアには、骨格や解剖学的な基礎の、その先に、『表現として何があるか』っていうことを見ようとする成熟した知性をもつ人が多くて、カッコイイ」(佐和子さん)「フランスの『個の力』、凄い。しっかりした教育制度で育てていくんだけど、『個の力』がポンッて出ると、その人が持っている魅力を評価する。全く異なる個性をそれぞれ芸術的な価値として評価するフランスらしさ」(穣さん)

*日本のバレエ: 「日本もそろそろ日本のバレエ、日本のスタイルを生み出していって欲しい。そうなるためには当然、教育制度だし、そのシンボルは新国立劇場。そのバレエ団が日本のバレエとしてオリジナルなものを作って、世界ツアーをして欲しい。吉田都さんが率いる次のステージに期待している」(穣さん)

*国ごとに異なるバレエのスタイル: Q:「どれが好き?」(佐和子さん)-A:「やっぱり、アメリカン。でも、(ジョージ・)バランシンはネオ・クラで、次の時代に入ってるから、クラシックのスタイルということで、ユーラシアに絞ると、(オーギュスト・)ブルノンヴィル。やっぱり速い、切れのある感じが好き」(穣さん)-A:「私は、ロシア寄りのフランス。子どもの頃、写真で見るロシアは大っ嫌いだった。美しいのは、フランス、ブルノンヴィル。英・ロイヤルだったら、ヴィヴィアナ・デュランテ(伊)。Kバレエで熊川哲也さんと踊った『眠れる森の美女』は何百回も観た。超美しかった」(佐和子さん)「だから、スタイル、って言うより、やっぱり人なんじゃない。フランスって言っても、80%はシルヴィ(・ギエム)でしょ」(穣さん)「あと、(ウリヤーナ・)ロパートキナ(ミハイル・)バリシニコフとシンシア・ハーヴェイの『ドン・キホーテ』(ABT)」(佐和子さん)「バリシニコフ、大好きだった。彼の創作もののソロ、動きも表現力も凄くて、印象に残っている」(穣さん)「バリシニコフは女性の私でも憧れる。身体的には小さいのに、あのテクニックと表現力。ああいうのを子どもの頃に観ていたから、『こっちの世界』にいるんだと思う。『ホワイトナイツ/白夜』も凄く観た」(佐和子さん)「勿論、(ルドルフ・)ヌレエフもバレエダンサーとしての可能性を開いたけど、創作もので、バレエの領域を飛躍させたのはバリシニコフ。バレエダンサーって感じじゃなくて、天才的なダンサー」(穣さん)

*ダンサーの引退に関して: 「パリ・オペラ座の引退は男女とも同じになって42歳。私は今年で最後?(笑)アメリカで、一番身体に負荷がかかる職業のナンバー1はバレエダンサーと。本当にそうだと思う」(佐和子さん)「肉体にかかる負荷は物凄いのに、非自然なことを事もなげにやることによるマジック。背後に、凄い稽古と長年の鍛錬がなければできない。それこそ、生き様というか、それに賭けている人しか、そこには行けない」(穣さん)

森下洋子さん 「子どもの頃からずっと、漫画仕立ての彼女の本を読み続けてきた。彼女は人生を賭けて舞台に立ち、今なお表現することに喜びを感じていて、お客さんも彼女の生き様を観て、それで成立しているもの。私はいつまでも踊っていて欲しいと思う」(佐和子さん)「実演にはピークがある。それを観たお客さんのなかの『永遠なものにしておきたいという心理』も否定できない。それも引き受けて踊る必要がある」(穣さん)「絶対、引き受けていらっしゃる。それがわかる。」(佐和子さん)「勿論、勿論」(穣さん)「ただ、自分が好きだから踊っているじゃない。全てを引き受けて、なお、自分に可能性を感じているから踊っている。今なお、自分が進化していると彼女が思えていることは凄いこと」(佐和子さん)「そうだね」(穣さん)「自分も、明らかに25歳のときよりは、40歳になった今の方が、表現ということを措いても、身体的に進化している部分があることは分かるから、70歳の彼女の場合も、絶対にあることだと思う。毎日、自分の身体と向き合って、自分の可能性を見つけ続けられる限りはずっと踊っていて欲しい」(佐和子さん)

*穣さんの場合: 「30代後半、なんとなく身を引き始めて、そろそろ引退かなと思ったけれど、そこからまたスイッチを入れて踊りを再開したときに、『Noismメソッド』をやりながら、気付くことが明らかに増えた。若い頃は考えてなかった。20代って、ちょっとストリートダンス的な感じになっていて、もう「どこでも踊れます」「なんでも来い」みたいな感じだった」(穣さん)「復活し始めたときに、私が本を読んでいて、『こうだよ、ああだよ』って言うと、聞き入れたから…(笑)」(佐和子さん)「それまでは?」(穣さん)「聞・き・入・れ・ない!」(佐和子さん)(穣さん、大爆笑)「その頃から私が『ここ、こうだよ。だから、こうなんだよ』みたいに言うと、穣さんが『あれ?あれ?』ってなり始めた。目の前にいる穣さんのアライメント(骨の配列)がバレエダンサーになってきた」(佐和子さん)「40代にして!」(穣さん、再び大爆笑)

*バレエの基礎がもつ意味: 「今、もう一度、バレエの歴史を自分の身体を通して遡っている感じ」(穣さん)「ここから、皆さんは崩していったんだ、って感じ」(佐和子さん)「ギリギリ俺らの世代はそこに戻ろうという意識をまだ持てる世代。自分の後の世代にはもう戻る場所がなくなっているように思う」(穣さん)「私たちは戻る場所があったから、そこに行けたけど。もうバレエからも入らない人たちが大半。でも、何事にも基礎が必要」(佐和子さん)「踊りだけじゃなく、あらゆる身体表現、或いは表現のなかで、基礎と呼ばれるものが失われていると言われる。今の時代、新しい基礎が必要だろう。また、振付と稽古とは別物。稽古が大事。稽古を蔑ろにしたら、もう基礎なんてなくなり、単にスタイルの話になっていっちゃう」(穣さん)「戻る場所がないと、振付は、終わったら終わり」(佐和子さん)「戻ることが大事。行ったばっかりになってしまうと、もうどこにも行き着かない。コンテンポラリーダンスでは、もう結構、その臨界点が来ているように思う。今、基礎としてのバレエを大事にするんだったら、そこから日本のバレエ、新しいバレエを考えていく必要がある。伝統だけではガラパゴス化してしまい、それが好きな人たち以外に感動を与えたりすることは出来ない気がする」(穣さん)「でも、バレエは凄い。何万回も『白鳥の湖』をやっていて、今なお、お客さんが観続けている。私は舞台の舞踊を観て泣いたのはバレエ以外、記憶にない。酒井はなちゃんの『白鳥の湖』を観て泣いたし…。それって凄い力だと思う。ストーリーも何もかも分かっていて、それでも人は感動するっていう…。だから、古い体質の人が『バレエをやれ』って言うだけじゃない気がしている」(佐和子さん)「それはでも、マスターピース(傑作)を相手にしているからであって、バレエがどうこうじゃない。『白鳥の湖』っていうのは、(マリウス・)プティパのマスターピース、チャイコフスキーのマスターピースっていう部分があるよね」(穣さん)「そう。だから、あなたの作品も頑張って世界中のバレエ団でやればいいんじゃない、っていうので終わっていい?」(佐和子さん)「ああ、もう時間?」(穣さん)→ふたり、大爆笑。「やっぱり、日本で作られた新しいバレエ、世界のバレエ団がレパートリー化するようなものを作らなきゃダメ。そしてそれに見合う舞踊家たちが必要だし、それをプロダクションとして支える劇場文化も必要。そこまでいかないと日本のバレエが確立されたとは俺は思えないんだよね」(穣さん)

*「バレエ談義」がそもそも…: 「こういう話になる予定じゃなかった」(佐和子さん)「そうだよね」(穣さん)「全然、日本のバレエ界の話みたいな…、じゃなくて、ただ、私はバレエが好きみたいな…」(佐和子さん)→穣さん、みたびの大爆笑。「私のバレエ熱を、次はチュチュでも着て気分を上げて」(佐和子さん)「バレエ談義2?」(穣さん)「タイツとチュチュで」(佐和子さん)「俺、タイツ?」(穣さん)…

…と、まあ、そんな具合でしたかね。私自身がバレエに明るくない分、取捨選択することもままならず、当初は簡潔にいくつもりが、逆にダラダラ長くなっちゃいました。スミマセン。m(__)m

で、次に行われるのだろう『バレエ談義2』については、ラストで、穣さんが、佐和子さんの想定する流れにマッチするような「まだまだバレエは奥が深い」、「我々にとってバレエとは何か」なども挙げておられましたけれど、同時に、それと並んで、「抱えている課題も多いだろうし」とも仰り、またまた楽しく迷走する「談義」になる可能性も秘めています。スリリングで聞き逃せない道理ですね。ではまた。

(shin)

「穣さん+佐和子さんインスタLIVE Vol.7は『バレエ談義』♪」への3件のフィードバック

  1. 皆さま
    浅学非才の身ゆえ、要領を得ないレポートとなってしまいました。
    ここにお詫びします。

    その反省に基づき、しばらくは、三浦雅士さんの『バレエ入門』と富永明子さんの『バレエ語辞典』を枕頭の書としたいと思っております。

    他に、バレエやダンスの初心者向けお薦め本などお教え頂けたらと思います。
    まあ、一番は舞台を観ることなのでしょうが…。(汗)
    (shin)

  2. shinさま
    連続ブログアップありがとうございます!!
    お二人の「バレエ愛」サイコーでしたね!
    要領を得ないレポートだなんて、とんでもないです。
    次のバレエ談議も楽しみですね♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      皆さま
      この日の記事はもっと簡潔に書くつもりだったのに、と歯噛みする思いもあります。
      まず、昨日のうちにアップできるものと高を括っていたのですが、さにあらず。とんだ読み違えでした。
      ネタが「バレエ」だけに、当初からヤバいなという予感はあったのですが、
      実際、書き始めてみると、どう逆立ちしたって、うまく纏めることなど出来ないことを思い知らされ、あえなく方針を変えざるを得なかったのでした。

      でも、私みたいな人も少なからずいるのだろうと思い直して、
      ご覧のような「リンクまみれ」にすることで、なんとか収拾を図ったような次第です。
      ですから、『談義2』だって、思いやられる訳です。
      その際には、もう少し簡潔なご紹介に止めるかたちを考えております。
      その点、ご容赦ください。m(_ _)m
      (shin)

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