Noismかく語る・2020春③ - Noism1メンバー後編

あらゆるものが遠のき、見慣れた日常が一変してしまった感のある日々。未曾有の春の災厄の向こう、まだ見ぬ光輝に満ちたNoism版『春の祭典』へと私たちを誘ってくれるNoismから届いた言葉。3回目となる今回は、Noism1メンバーの後半というかたちで、5人をお読み頂きます。

スティーヴン・クィルダン

現在、私たちは『春の祭典』のリハーサルとクリエーションのさなかにいます。これはとても面白く複雑に込み入った音楽です。実際、私は以前にマーク・ボールドウィン(Artistic Director of Rambert Dance Company:2002-2018)によるヴァージョンを踊ったことがあります。偶然にも元Noismダンサーの浅海侑加さんとも一緒に踊りました。何年も前のことですが。

それから再びこの曲に戻ってきて、異なる解釈を体感することはとても面白いことです。音楽に合わせて強度をもって動くことは楽しいことです。その瞬間、大きな絵の中のほんの小さな一部になるのみです。私はその絵がどう仕上がるのか知りたくてなりません。更に、観客の皆さんがこの作品から何を得るのかも知りたくてなりません。現時点で、踊る私の目に映ずるものからはそれらはまったく想像もつきません。深く作品の中に入り込むことで、私に見えるものは画されてしまうからです。

また、『Fratres III』も踊ります。こちらに関しては、私たちは素材を学び始めたような、それでいて、常に未知のものででもあるかのような、そんな感じがします。他のメンバーは『Fratres I』を踊っていますが、私は出ていませんし、最善を望む気持ちです。

最後に、今、世界は奇妙な時間の中にあります。英国を離れて、封鎖された街の人々、友人、家族や仲間を見ながら、世界の反対側にいる自分が今も活動できていることには憂鬱な気分もつきまといます。それは芸術について数多く自問することにもなりましたが、一方で、寛大にも多くのものがオンラインで共有されている現状には心温まるものがあります。 

(日本語訳:shin)

*スティーヴンさんによる元原稿(英語)はこちらです。

Currently we are in the rehearsals and creation of the rite of spring. This is a very interesting and complicated piece of music.

Actually I previously danced a version of Rite of Spring by Mark Baldwin. This happen to be with Yuka-san(ex noism dancer), many years ago.

It is very interesting to then come back to the music and feel the different interpretations.

It is fun to be working intensely with the music.  At the moment I am but a small part in the big picture. I am curious as to how that picture will be. I am also curious about what the audience will get from the piece. I really have no idea at the moment from my perspective. Being so inside a piece can create this perspective.

Also we will do Frates III, which I have some sense of as we have begun learning some material but it will also be new. Whilst others were in Frates I before, I was not. I hope for the best.

Ultimately this is a strange time in the world. Being from the UK, seeing people, friends, family and colleagues in lockdown whilst I am on the other side of the world still working has been melancholic. It has made me question a lot about the arts but seeing so much being shared online so generously has warmed my heart.

Photo: Noriki Matsuzaki

(イギリス生まれ)

タイロン・ロビンソン

今、この時期にあって、芸術を支えることはかつてないほど重要なことになっています。土地の文化、そして過去と未来は、その土地の人々が創り出す芸術やパフォーマンスによって形作られる性質のものだからです。ですから、Noismの作品が作り続けられるのなら、その土地の、そして同胞の支えが必要なのです。ダンサー、実演家、或いは芸術家としての私たちが目指すものは、私たちのクリエーションを共同体にもたらし、私たちの情熱を一般の人々と共有することです。芸術とはあらゆる人を迎え入れる家族のようなものです。そして、私はいつかNoismがダンスと共同体の連結を成し遂げ得るカンパニーになることを願うものです。コロナウイルスによるパンデミックが過去のものとなったとき、全ての人を再び結びつける役割を果たすものは芸術でしょう。ですから、皆さん、どうか芸術を支えてください。今、芸術を死なせないでください。どうか宜しくお願いします。 

(日本語訳:shin)

*タイロンさんによる元原稿(英語)はこちらです。

Now during this time, it is more important than ever to support the arts. A county’s culture, both past and future is heavily shaped by art and performance that its people create. So if the work of Noism is to continue it needs the support of its county and its fellow countrymen. As dancers, performers and artists our goal is to bring our creations to the community and to share our passion with the public. The arts are like a family that welcomes everyone and I hope Noism will some day be the company that can bring dance and the community together. When the COVID-19 pandemic passes it will be the arts that will reunite everyone, so to everyone please support the arts, and don’t let it die now. Kindest Regards

Photo: Noriki Matsuzaki

(オーストラリア生まれ)

鳥羽絢美

様々なカンパニーや振付家によって使われ、創られ、踊られてきた『春の祭典』。そんな楽曲にNoismメンバーとして挑むことができること、嬉しく思うと共にとても身の引き締まる思いです。皆様に届けられる日を心待ちにしながら、日々稽古に励みます

Photo: Noriki Matsuzaki

(とばあやみ)

⑩ 西澤真耶

「『春の祭典』のクリエーション」穣さんはじめNoism0+1+2の22名が“音“をテーマに真摯に向き合っているこの作品がこの先本番までにどのように仕上がっていくのか、そして本番を重ねどこまで進化していくのか、私達にもわからない。まさに実験舞踊…?

Photo: Noriki Matsuzaki

(にしざわまや)

三好綾音

ストラヴィンスキーの音楽は、一瞬眉を潜めてしまうけれど、しばらく経つと虜になっていて、気がつくと嵐が去った後、騒いだ血の感覚だけが残っている様な。そんな感じがたまりません。しかし、この曲が書き下ろされた当時のダンサー達はどんなに戸惑っただろうと、リハーサル中はそんな苦労も想像します。(笑) 音楽史、舞踊史共に大きなインパクトを残してきた『春の祭典』で新たな創作に関わる機会に恵まれ、とても光栄に思います。是非、楽しみにしていてください。

Photo: Noriki Matsuzaki

(みよしりお)

さてさて、連載最終回の次回は、フレッシュなNoism2のメンバーをお届けします。森加奈さん、池田穂乃香さん、カナール・ミラン・ハジメさん、 杉野可林さん、長澤マリーヤさん、橋本礼美さん、坪田光さん、そして中村友美さんと、ドド~ンと一挙に8名を掲載いたします。どうぞお楽しみに。

(shin)

「Noismかく語る・2020春③ - Noism1メンバー後編」への1件のフィードバック

  1. 皆さま
    「Noismかく語る③」をお届けしました。

    長短様々ながら、一人ひとりが発する言葉には、
    世界中、この困難な時期にあって、
    金森さんとともに、その世界に向けて、
    新たな『春の祭典』を創造しようという意気込みが
    溢れているように思いました。

    言葉の端々に窺える「献身」具合からも、
    以前の柳都会(2016/4/23)で、ゲストの平田オリザさんが語っていた
    「100年後、200年後の被災者」や
    「地球の裏側の難民を慰める可能性のある『公共財』」が
    産み落とされることは間違いありませんね。
    その「爆誕」の日を楽しみにしつつ、
    語られた言葉を噛み締めております。

    皆さまはどのようにお読みになりましたでしょうか。
    (shin)

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