「世界に繋がる新潟のシンボルでありたい」(金森さん@BSN「揺らぐ劇場 Noism継続問題の深層」)

この度の台風19号の被害に遭われた方々に対し、改めまして心よりお見舞い申し上げます。

(新潟日報10/19朝刊・テレビ欄より)

さて、先週の放送予定が延期となったBSNテレビのゆうなびスペシャル「揺らぐ劇場 Noism継続問題の深層」が、この日(10/19・土)放送されました。ご覧になられましたか。新潟県外の方にも放送内容をお知らせしたいと思い、かいつまんでレポートいたします。

「30分番組」は、9月の活動更新記者会見の模様から始まりました。『Fratres I』と『Mirroring Memories』からの場面が続き、5月の『カルメン』モスクワ公演の様子が流され、芸術性の高さが伝えられる一方、「地方の現実」として、税金を投入する以上、地域への貢献が求められる事情が示されました。相克、或いは止揚。Noismの存在をめぐって、「新潟は何を問われたのか」との番組テーマが掲げられます。

「りゅーとぴあ」: 市民活動は勿論、3部門(音楽・演劇・舞踊)を核に創造型事業を展開。市からの事業費補助は、Noismを含む舞踊部門に約5,000万円、音楽部門・演劇部門他に約1億4,400万円。(いずれも年間平均)

金森さん「東京の公演を買ってくることがメインの劇場文化は『中央集権』を助長するだけ。劇場は本来、文化による『地方分権』を成立させ得る拠点」 → 篠田昭前市長は「新潟から世界に発信していく」ビジョンに惹かれて惚れ込んだと話し、2004年、公共劇場がプロのダンスカンパニーを抱えるという国内初めての取り組みが始まった経緯を説明。しかし、前例のない挑戦を待ち受けていた厳しい現実。例えば、「時間と場所」。「Noismに独占されては困る」など、契約更新のたびに難題に直面してきた。「劇場はプロが作品をつくる場所」とする金森さん。生じる摩擦。舞踊団と行政とが互いに妥協点を見出しながら積み重ねてきた15年。

*ワレリー・シャドリンさん(チェーホフ国際演劇祭ゼネラルディレクター:5月に『カルメン』を招聘) 「日本の若い世代の演出家の中で金森さんほど才能がある人を私は知りません」 → 終了後、早速、次回(2021年)の出演を依頼。しかし、継続問題の渦中にあるため、返答できず。

*篠山紀信さん(写真家:Noismの15年間を撮り続ける) 「(『Fratres I』を評して)金森さん独特のストイシズム。そのことの感動だね」「金森さんがここ(新潟市)に来て、本当に良かったと思う。これ以上の待遇はなかっただろう。新潟の宝物だと思う、本当に」

*篠田昭前市長 「全国に『りゅーとぴあ』を知らしめているものは何かと言えば、そのほとんどがNoismの活動によるもの」 しかし、…

  • 昨年11月の市長交代期を挟み、基金の減少など厳しい財政状況を背景に、中原八一新市長が様々な事業の見直しを表明。=「Noism活動継続問題」
  • 6月の新潟市議会:Noismの活動継続を疑問視する声があがる。「存在すら知らない市民もいる」
  • 7月、市民有志が市長に活動継続の要望書を提出。
  • 同7月、文化政策の専門家を構成員とする「劇場専属舞踊団検証会議」が初めて開かれる。市の税金で支えていくことの意味が議論される。
  • 8月末、契約更新に向けた市の意向が金森さんに伝えられる。(地域貢献活動を含む6つの課題を提示し、改善への取り組みを条件とする。)

Noismの海外公演: これまで15年間で11か国、22都市、58公演。「欧米に敵うんだ。欧米の人が『すげぇ!』って言うものを創れる。しかも、中央からじゃなく、地方から。それが我々のやっていること」(金森さん)

「地域貢献」か「世界と繋がる芸術の創造」か。地方は芸術にどう関わっていくべきなのか。相克、否、止揚。

ひとつの答えを導き出した場所:富山県南砺市利賀村。1976年、主宰する劇団ごと東京から移転してきた演出家・鈴木忠志さんは、過疎の村を「演劇の聖地」に育て上げた。現在、村や県のみならず、国、政治・経済界を巻き込む支援を得ている。世界と繋がる芸術に地域が価値を見出し、共に歩む。活動の集大成とも言える国際演劇祭「シアター・オリンピックス」は、人口500人に届かない村に国内外から2万人を集める。

*鈴木忠志さんは「支援への還元」に関して、「本当の芸術活動、優れた芸術家は人類の財産になることを目指す。地域の利益のためにやっていたら利益誘導にしかならない」とし、金森さんについても「芸術的には今の日本で大変優れた仕事をしている。応援しなければいけない」と話し、地域全体で取り組むことの重要性を強調。

平田オリザさん(劇作家・演出家)「Noismの活動の価値は圧倒的なものがある。それをどう生かすかは新潟市の側の問題」

金森さんは「世界に繋がる新潟のシンボルでありたい。自分たちのこの街が世界と繋がっている。特に若い子たちはどんな仕事を志すにしろ、世界に対して広い視野を持って貰いたい。経済的に大変であっても、人や心の部分、文化の部分では国際的であって欲しい。自分はそのために呼ばれたと思っているからね」とあくまでもこの街(新潟市)に思いを馳せ、未来を見据えて語りました。

番組ラストのナレーションは「日本でただひとつの劇場専属舞踊団を抱くこの街は、何を目指し、どこへ向かうのか」 金森さんが唱えるブレることのない「劇場100年構想」を想起してみるなら、その答えは明白でしょう。私たち一人ひとりの豊かな人生、それを措いて他に何があるというのでしょう。

皆さんはどうご覧になりましたか。そして、拙いレポートではありますが、ご覧になれなかった方に内容の一端でもお届けできていたら幸いです。

(shin)

「「世界に繋がる新潟のシンボルでありたい」(金森さん@BSN「揺らぐ劇場 Noism継続問題の深層」)」への6件のフィードバック

  1. shinさま
    どうもありがとうございました!
    平田オリザさんは、そのあと もっと過激なことを言っていましたね。
    でも、そうならなくてよかったです。
    ひとまず活動継続となり、本当にうれしいです。
    BSNはモスクワや利賀村で ただ取材するのではなく、問題意識を持って番組を制作していました。
    新潟地域だけでの放映ではもったいないです。
    DVD販売してほしいですね♪
    (fullmoon)

  2. fullmoon さま
    コメント、有難うございました。
    平田オリザさんは以前の「柳都会」(vol.15)でも
    文化政策としての「劇場」の役割を力説されていましたし、
    今回も表情こそ柔和なものの、歯に衣を着せず、舌鋒鋭いものがありましたよね。

    また、地域貢献という課題はあるにせよ、
    中原市長が、Noismが獲得した世界的評価、それに向けた努力は
    評価しなければならないと話されているのを聞いて
    ホッとしました。

    そしてその流れで、番組は、
    「世界で評価されるものが『おらが町』にあり、
    それをどうやったら市民の『誇り』にできるか、
    行政と一緒に考えることを問われている」
    と語る金森さんを映したことも併せて記しておきます。
    (shin)

  3. リポートありがとうございます。

    > もっと過激なこと
    > 歯に衣を着せず、舌鋒鋭い
    などと思わせぶりなことを言わず、中身をここに書いたらいいと思うんですが。
    何に、もしくはどなたに忖度しているんですか?

    1. あおやぎ さま
      コメント、有難うございました。

      特に忖度したりということはないのですが、
      記事は穏当な線でまとめてみたのでした。
      で、fullmoonさんのツッコミがあった時点で、
      これは書くことになるなと思いました。(笑)

      では以下に放送されたインタビューでの言葉をご紹介します。
      平田さんは上にご紹介した
      「Noismの活動の価値は圧倒的なものがある。
      それをどう生かすかは新潟市の側の問題」の後に、
      如何にも平田さんらしく
      「もしそれを生かせないのだとしたら、
      行政が無能だということを曝け出しているということ」と
      話されたのでした。
      まあ、見方によれば、もっともな物言いに過ぎず、
      持って回ったようなご紹介になった点、スミマセン。
      そんなところでした。(汗)
      (shin)

  4. なあんだ、至極当然なことを仰ったに過ぎないですね。ご紹介ありがとうございます。
    個人的には、公立施設を束ねる団体の体質に関する話でも出たのかと思いました。

  5. 番組が「ひとつの答えを導き出した」モデルとして紹介した
    富山県南砺市利賀村。
    その地で鈴木忠志さんが創設者の一人として芸術監督を務める
    「シアター・オリンピックス」。
    先月、私も金森さん・井関さん×原田敬子さんの
    『still/speed/silence』を観るために初めて利賀を訪れました。

    悠久の自然、その圧倒的な威容に抱かれながら、
    展開される人の文化的・創造的な営み。
    この祭典そのものの感動に震えました。

    過疎の村において、ここまで成し遂げ得た鈴木忠志さんの
    「人類の財産になることを目指す」芸術という観点は、
    平田オリザさんが以前の「柳都会」で、
    時空を隔てた人々を慰撫する「公共財」としてのレパートリー創出を使命に掲げたことと通じ合うものであり、
    それはとりもなおさず、金森さんが常々唱える「劇場100年構想」と共鳴するものであることは言うに及ばないでしょう。
    共通する「志」の高さ。

    しかしながら、そうした祭典「本道」の感動に加えて、
    驚きを禁じ得なかったのは、
    100頁超に及ぶ大部で立派な公式プログラムが
    会場のあちこちで、惜しげもなく配布されていたことでした。
    鈴木さんが主宰する劇団SCOTの団員たちによって、
    開演を待つ間に、
    観終えた公演の余韻に浸る間に…。

    そして、手にしたその立派過ぎるプログラムを開いてみて
    更に仰天したのは、巻末に名を連ねる協賛企業・団体、
    その数の多さにでした。
    それだからこそ無償で配布することが可能だった訳ですが。

    番組中、「地域全体でやっていく」点に関して、
    鈴木さんは金森さんの更なる努力の必要性にも触れましたが、
    私は利賀で「パンフレット」に驚いて以来、
    もっと根本的な要素があるように思っています。
    それは欧州に流れる「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」
    の精神です。
    金森さんが「劇場」の範を求める欧州に息づくその伝統です。

    「ノブレス・オブリージュ」とは「高貴さは義務を伴う」とする
    精神のこと。
    つまり、「持てる者」は社会的な範となるよう振る舞う責任を負うことを意味するものです。

    鈴木さんが「人類の財産」と表現し、
    平田さんも文化的に有益な「公共財」と表す、
    「芸術」の大きな意義。
    ならば「持てる者」はすべからく人類と未来を俯瞰し、
    「芸術」創造の一翼を担う役割が期待されると考えるものです。
    求められるのはまたしても「志」の高さです。

    「シビック・プライド」と相俟っての「ノブレス・オブリージュ」。
    その点に働きかける努力が必要なのでしょう。
    多くの協賛者(社)が名乗りを上げてくれることを念じて止みません。
    (shin)

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