Noism2定期公演、中日のマチソワで飛躍を見せる若き舞踊家♪

2019年3月16日(土)、Noism2定期公演vol.10の2日目にして中日のこの日は「マチソワ」の日。踊る側は大変なのでしょうが、観る側としては、一日浸って、どちらも観て「満喫」しまくることも可能な訳で、かく言う私もそのひとりだったりして、それはもう目一杯楽しませていただきました。

ソワレの後のアフタートークで、Noism2リハーサル監督の山田勇気さんは、この日の2公演、特にソワレを評して、「若いんだし、疲れとかじゃない。エネルギーが良い意味でも悪い意味でもかかっている状態で始まった。それを制御していくことが大事」と語り、金森さんも「そうだね」と応じていましたが、一観客として、この日のマチソワを、初めて、そして2回目、ということで続けて観た率直な感想を言うなら、2公演の間での変化は歴然で、動きが確信を深め、よりシャープなものとなり、迫力を増したパフォーマンスに変わり、随所で息をのみました。

更にアフタートークでの質問に絡めて書けば、平原作品『BOW!!!』を踊ることでメンバーに訪れた変化として、山田さんが「自分は素の彼女らと素の彼を知っているつもりだし、自分も自分を知っていると思っているだろうが、どちらも一面に過ぎない。平原作品を通して、新しいものが出てきたらそれを掴みたい」と全公演期間を通した語り方をしたあと、金森さんは「欠片は見えてきたりしているが、まだまだこれから。ちょっと何かを掴みかけている感じが見えるので、この本番の機会を利用して欲しい」と語っていました。

同時に、若々しく瑞々しい「素材感」もまたNoism2の魅力でもあります。金森さんが「舞踊家に委ねていてある種危険」で、「全体的にレベルの高いものが要求されている」作品と語った『BOW!!!』、クリエイションの間のコミュニケーションを通して「造形されたキャラクター」を踊るメンバー9人は、時に、平原作品寄りの姿を顕して頼もしかったり、時に、各々の若さが顔を覗かせて微笑ましかったりと、二極間の「拮抗」にたゆたう9つの身体として映じました。それは個々の変化の過程をつぶさに目撃することに他ならず、「今、このとき」にしか見られ得ない、究極の再現不可能性を纏った5公演を意味するものです。そんな魅力。

アフタートークの方から始めてしまいました。戻りましょう。

では、山田さん演出の、7人で踊られる「金森穣振付Noismレパートリー」です。山田さんが「えいっ」とか「良いのかなぁ」とか思いながら、今踊るメンバーに合わせて手を入れ、アジャストを施したこともあり、金森さんも「自分のオリジナルなのに、新鮮だった」(*註)と語ったレパートリーを踊る前半25分。カナール・ミラン・ハジメさんの動き出しから踊られ、門山楓さんがラストを締める『solo for 2』も、Noism定番の横一列から始まる『Training Piece』もそれぞれに美しく、これから更にNoism的身体性を身につけていくのだなと、まるで育ちゆく「わが子ら」を観ているかのような感覚が訪れてきます。(失礼)
また、椅子を使わない『solo for 2』+黒いレオタードで踊られる『Piece』は、前日の公演を観たfullmoonさんが書いたように、シックな「別の作品」と言う味わいもあります。レオタードの黒、その隙間から覗く肌の色、たったそれだけなのに、それが限りなくゴージャスに見えてきます。

休憩を挟んだ後半は平原さんの新作『BOW!!!』。休憩の途中から低く聞こえてくる怪しげな音楽。心の準備をしてお待ちください。怪しげなフランス語。嘲笑。青い照明。そして特権的な赤。これから観ることになる全てが疑わしい感じ。「平原ワールド」全開。或いは、「平原劇場」。
Noism2最年長となる門山さん制作で『羊たちの沈黙』を思わせるようなオブジェの下、門山さんを中心に据えた、瞬発力、爆発力が要求される50分間の舞台が進行していきます。何が起きたのか。金森さん×山田さんの前半とはまったく趣が異なります。それぞれが同じ黒を基調としながらも、全く「別の黒」を見ることになるでしょう。

「演出をするうえで、最も難しいのは、実演家の内面をいかに見抜いて引き出すか。それも熟練した実演家ではないので、本人たちも気付いていない未知なる『何か』を、ということになる」(金森さん)

既に本日は公演最終日。再びのマチソワ2公演。どうぞりゅーとぴあ・スタジオBへお越しください。「未知なる『何か』」を目撃するために。
(shin)

【註】「もとより、歴史上のいかなるマスターピースであっても、残された(映像)記録から振り起しをしていく際に、それを担う人のファクターがかかることは必定で、あたかも『伝言ゲーム』ででもあるかのように、(正確には)原形を留めていないものになってしまう」と金森さん。(アフタートークより 文責:shin)

「Noism2定期公演、中日のマチソワで飛躍を見せる若き舞踊家♪」への3件のフィードバック

  1. 皆さま
    前日のfullmoonさんを見倣って、私もホワイエに進むと、
    即、物販コーナーを目指して一目散。
    で、無事にゲットしました
    『BOW!!!』15枚限定オリジナルサウンドトラックCD
    (音楽:東海林靖志さん+景井雅之さん)♪
    「電光」模様のシルクスクリーン入りのパッケージも含めて、
    全て東海林さんと景井さんの手作りとのこと。(*)
    「宝物」感たっぷりで、嬉しくなります。

    そして、いざ聴かんと開封する段になって、更にあります。
    フィルムを留めるテープに「BOW」の文字!

    でも、まだまだそれだけではありません。
    パッケージからCDを取り出そうとすると、
    今度は鼻孔に届く香しい芳香!

    このCD、いったい何回おいしいんだ!と。

    ですから、一つひとつ、せっせと作っている、
    そんな姿を思い浮かべながら聴いてみる
    というのは如何でしょうか。
    拘りに拘り抜いた逸品、
    神がそれぞれ宿る細部に満ちたCD、要チェックです。

    しかし、しかし、しかしですよ、皆さま。
    未確認情報で、一切、保証の限りではありませんが、
    札幌公演では更なるアイテムも追加されるとか、しないとか。
    それは何かといいますと、…秘密です。
    気になる方は是非、札幌公演にお運びになり、
    その真偽をお確かめください。(笑)

    おっと、そんな真偽を確かめるためでなく札幌公演に行かれるという
    のが、まっとうな感覚かとは思いますけれど、念のため…。(笑)
    (shin)

    【(*)箇所の訂正とお詫び】
    当初、このコメントを書いた際に、
    誤って「平原さんの手作り」としてしまっていたのですが、
    その後、「音楽担当の東海林さんと景井さんの手作り」とのご指摘を頂き、
    現在はそのように訂正させて頂いております。
    大変失礼しました。
    関係の方々には、心よりお詫び申し上げます。

  2. shinさま
    中日レポありがとうございます!
    昨日のソワレ、見ごたえがあったようですね♪
    夜は観に行かれず残念。。
    今日はソワレ行きます!
    最終回、楽しみです。
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      昨日のソワレを経て、動きの質が変わったようです。成り行きから思いがけず観に来ることになった本日のマチネでしたが、良かったですよ。

      で、加えて、個人的に良かったこともありました。
      入場して、いつもと少し違った席から観ようと、下手の前から2列目を選んで、荷物をおき、トイレに行ったのですが、戻ってみると、隣に西澤真耶さんのお母様、その横に西澤さんご本人が座っておられるではありませんか!
      まだ続きがあります。少し遅れて、その隣には、片山夏波さんが来られ、その後、そのお三方の一列前、最前列の席には三好綾音さんが腰掛け、後ろを振り向いてみんなで話し始めるではないですか!
      まったくもって、「えええっ?!」ってなもんでした。
      で、こんな機会はまたとないってことで、勇気を振り絞って、西澤さんのお母様にご挨拶したら、その後、開演までと、休憩の間には、皆さんとお話しできるようになりました。
      『R.O.O.M.』で西澤さんの目線をガチンコで受けたときのことやら、
      『R.O.O.M.』のアンダーのこと、
      そして『solo for 2』を踊ってみたいと思いますか、などなど、
      不躾も省みず、色々訊ねてみることが出来て、その意味でも、超ラッキーなマチネでしたね。

      では、心境著しいパフォーマンスを目撃すること請け合いの最終日のソワレでお会いしましょう。
      (shin)

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