実験舞踊・東京公演も「大山」マチソワを越えて、いよいよ…

2019年2月23日(土)の東京は日差しは春めきながらも、終始、強い風が吹きつけ、体感温度的には決して暖かいとは言えず、コートの離せない一日でした。しかし、そんな一日も「熱い」ところは「熱かった」訳で、それが吉祥寺シアター界隈のことであったことは言うまでもない事柄でしょう。

熱さの理由など言うに及ばぬ筈。この日がNoismにとって、記念すべきその第1作『SHIKAKU』以来15年振りとなるマチソワ公演日であった以外ありません。

これまでも見るからに恐ろしいがまでの消耗振りを目撃してきていますし、この日のマチネとソワレの間には2時間半しかないのですから、心配にもなろうという訳です。果たして…。

私はこの日、ソワレの客席にいたのですが、そこで目にしたもの、それはこちらの心配を全て杞憂に終わらせてしまう、疲れを感じさせない無尽蔵のパワーであり、それを駆使した鬼気迫るパフォーマンスでした。
「疲れている筈なのに…」
おのれの限界のそのまた先へ行かんとして、ありったけの意地と本気をぶつけてくる実演家。その姿を目の当たりにして、震えに襲われなかった者など皆無でしょう。リアルに「化け物」、否、「MONSTER」の降臨。まさにデモーニッシュ!
そして、それに驚きながらも、「もっと!もっと!」とばかり、嬉々として、心に巣食う嗜虐的な側面が頭をもたげるのに任せて、まだまだ満たされたいと視線を送る観客。
その構図こそ、真に「舞台芸術」が産み落とす醍醐味!吉祥寺シアターには、尋常ではない空気が張り詰めていました。

終演後の割れんばかりの拍手も、「ブラボー!」も、スタンディング・オベーションさえも、内なる感動を伝えるには不釣り合いなリアクションにしか感じられず、そのもどかしさに歯噛みする思いだったのは私ばかりではなかったでしょう。『R.O.O.M.』も『鏡の中の鏡』もどちらも「人間業」には感じられないような、この日のソワレの舞台でした。

そんなふうにひとつ大きな山を越えて、Noismがある豊かな週末も遂にあと1日、明日を残すのみとなりました。

一旦始まってしまえば、いずれそういう時がやって来るのは必定。「千秋楽」の明日、また渾身の舞台を観せてくれる舞踊家に魅了される準備はとうに整っています。白熱の吉祥寺シアター、見逃せませんよ。(shin)

「実験舞踊・東京公演も「大山」マチソワを越えて、いよいよ…」への3件のフィードバック

  1. 本文に書かないでしまった事柄をいくつか。

    ソワレの客席には元メンバーの計見葵さんのお姿がありました。

    で、この日のマチソワを両方ともご覧になった知人からはどちらも甲乙つけがたい出来映えだったとのことでしたし、
    『R.O.O.M.』に関しては、私の席からほど近いところで、初めてご覧になられた方など、意表をつく導入に、「えっ!?」それから少しして「凄い!」とか「えええ!?」など声にはならない嘆息まじりの声を続けて漏らしておられました。

    また、ここまで公演を重ねてくるなかで、振り付けの変更も多々ありました。この日のソワレで気付いたのは、最終盤の群舞において浅海さんひとりだけが全体から外れて踊る箇所が追加されているようでした。新潟では見なかったものと思います。
    全体的に鬼気迫る物凄い実演を観た、そんな印象を持ちましたが、なかでも、しなやかな井関さんに対して、池ヶ谷さんが(微塵も疲れなど感じさせない)空気を切り裂くかのような踊りで応じる場面は圧巻でした。

    『R.O.O.M.』が終わったあとにも、『鏡の中の鏡』が終わったあとにも、私のそば、こちらから、或いはあちらから、
    「これはもう一度観たい」、「明日も(当日券の列に)並ぼう」といった声が聞こえていたことを書いて、このコメントの締め括りとします。
    (shin)

  2. shinさん
    様子をお知らせ頂き、ありがとうございます。
    新潟にいても、頭の中は、あの世界が駆け巡り、もう吉祥寺が気になりすぎて(笑)
    でも、こうして初見のかたも含め、多くの観客の心を掴んで離さない様子を知るにつれ、本当に嬉しいです!
    ラスト公演の様子も楽しみに待っています。
    acoより

  3. aco さま
    コメント、有難うございました。
    励みになります。
    で、前後しますが、先程、「大千穐楽」の様子についても書きました。
    お読みいただき、acoさんの捉え方などもご披露ください。

    「大千穐楽」の舞台ですが、
    前日のソワレのデモーニッシュな様相とは異なり、
    高次の纏まりを獲得した感のある見事な舞台でした。
    単に「千穐楽」であるということではなしに、
    マチソワの過酷さを経験した舞踊家全員が
    揃ってステップアップを果たした、
    そんなふうに私の目には映りました。
    初めてNoismをご覧になられた方々も大満足だった筈です。

    で、やはり「再演」を熱烈に希望するものですよね。
    (shin)

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