目を圧する『R.O.O.M.』/目を惹きつける『鏡~』に心を鷲掴みにされた新潟公演楽日

2019年2月17日(日)、新潟市中央区は少し強い風は吹くものの晴れ間も顔を覗かせ、
「新潟の冬」からは遠いイメージの一日。
ホワイエ開場の時刻14時半のスタジオBにはキャンセル待ちの方も数名いらっしゃり、
楽日の公演に向けられる熱い期待が既にホワイエには充満していました。
初めての方も、何度目かの方も、一様に気持ちの昂ぶりを抑えることができずにいる、
そんな様子だったと言えます。

スタジオへ入った後も、中の空気は張り詰めていて、浮かれた様子は皆無。
そこに身を置くだけで呼吸が浅くなるような、そんな雰囲気が漂っていたのは、
明らかに他の日とは違う感じがしました。
この日が新潟で観る最後の機会でしたから、
誰もがみな、舞台の「一回性」、その厳かさを全身で受け止めて、
緊張の内に幕が上がるのを待っていたとしても何の不思議もありはしませんが。

開演。『R.O.O.M.』。
明転すると目に飛び込んでくる「装置」にまずはため息が思わず零れてしまうのですが、
これが意外と重要。
息をするのも忘れてしまいそうな、50分間の斬新な実験が展開されていく訳ですから。

楽日の12場面は、
舞踊家一人残らず、「もうこのあと余力など残っていなくとも構わない」とばかりに、
ありったけの力を振り絞り、全身全霊を傾けて踊られていきました。
その異次元と言っても過言ではないクオリティは、観る者の目を圧する迫力に満ち、
観ている側も同調して、心拍数はあがり、気持ちが滾っていかざるを得ません。
熱を帯びていく舞台、けしかけられ、固唾を飲んで見詰める客席。
ラストでマックスの昂揚に達して暗転。
すると今度はそこまで不動で来ていた客席の番です。口火を切る男声の「ブラボー!」、
続く女声の「ブラボー!」その絶妙。
そこから先はもう堰を切ったかのような「ブラボー!」の洪水。その怒涛。
同時に、あちらこちらで反射的に人影が動いたかと思うと、見たこともないくらいの人数の
スタンディング・オベーション。
そして勿論、鳴り止まぬ拍手がカーテンコールに立つ舞踊家一人ひとりに捧げられました。

休憩でクールダウンを図ると、後半は『鏡の中の鏡』。
打って変わった音楽と照明、蹲る金森さんの姿に、
私たちは一瞬にして、相貌を別にした、まったくの異空間に連れ去られてしまいます。

金森さんのソロそして鏡。鏡そして井関さんのソロ。その果てのパ・ド・ドゥ。
能弁な身体ふたつに目は惹きつけられ、その繊細さには心底驚くよりありません。
観ているだけで涙が込み上げてくるのです。
もっと観ていたいと思ったのもいつも通りでした。
余韻を引き摺り、じわじわ込み上げてくる思いを噛み締めることになる作品の性質から、
我に返るには「間」が必要とされます。それなしには、容易に身体は動きません。
自由を取り戻した身体から徐々にスタンディング・オベーションが客席を拡がっていく点、『R.O.O.M.』とは全く別種の経験・別種の感動と言う他ありません。
「ブラボー!」も声を取り戻してからという感じでした。
しかし辿り着いた先が大喝采であることは言うまでもありません。
舞台上で拍手を受ける井関さんと金森さんのカーテンコールが続きます。
そのさなか、金森さんがその右手を後方の壁に向けて、スタッフへの拍手を促し、
更に拍手の音量が増したかと思えば、
今度は金森さん、両手を客席に差し向けた後、自ら客席に拍手をしてくれるではないですか。
そこに井関さんも加わり、お互いに拍手を送り合う舞台と客席という幸福過ぎる光景に至り、
楽日ならではの贅沢なひと時に浸りました。

長かった筈の新潟13公演が、地元の観客だけでなく、遠方からお越しの方々の心も鷲掴みにして、遂にその幕を下ろしました。(「箱」は直ちに一旦解体されて、搬出されることになります。)

引き続き、この舞台は中3日で、東京・吉祥寺シアターに登場します。その4日間・5公演、東京でご覧になられる方々、お待たせしました。期待値を上げるだけ上げてお待ちください。きっとその期待値すら凌駕する驚きの舞台を目にされることと確信しています。

まだこの舞台の旅は続きますが、新潟公演で見納めの方も大勢いらっしゃいます。
そこで、今日のところは一旦こう締め括りましょう。
「感動の舞台を有難うございました。私たちは幸福でした」と。
(shin)

「目を圧する『R.O.O.M.』/目を惹きつける『鏡~』に心を鷲掴みにされた新潟公演楽日」への4件のフィードバック

  1. 本当に素晴らしい作品であり、舞台でした。
    舞踊家一人ひとりのレベルアップもひと舞台ごとに感じられ、更なるクオリティで出会うことになるわけで。
    観に行く度に初見のような瑞々しい感動が押し寄せてきました。
    ひとりも多くの方がこの舞台、作品に出会い、触れてほしいです。

  2. shinさま
    新潟最終日の様子、ありがとうございました!
    凄い公演でしたね。
    観客の反応も凄かったです。
    東京公演はますますハードな日程で心配ですが、がんばってほしいです。

    acoさま
    本当にその通りですね。
    舞踊家もそうですが、私も何度も観て、ようやく最終日はいろいろな部分が見えるようになりました。(目が)レベルアップしましたよ♪

    新潟公演が無事終了し、ホッとしていますが、
    明日は、もう東京とのこと。
    あの作品を、4日間、5公演。
    まさにモンスターですね!
    (fullmoon)

  3. aco さま
    fullmoon さま
    真実です。まさに真実です。

    常に「より美しいもの」を求めてやまない姿勢には
    毎度のことながら打たれます。
    弛むことなく深化と進化を推し進めていくので、
    「何度も目撃せねば」との思いを掻き立てるカンパニーなんて、
    もの凄いことですよね。
    Noismを観ることで、自分の目も鍛えられてきました。
    (まだまだですけれど。)

    で、私は何度でも観たいです。
    初めての人にも紹介しますけれど、
    基本、何度でも観たいです。
    今回、観たくても観られなかった方も多くて、
    申し訳ない思いもあるにはあるのですけれど、それでも…。

    この4週間、とっぷりと浸った「Noismのある生活」の幸福を
    決して手放したくはないのです。

    ですから、今、私たちがとるべき行動はひとつきり。
    「声」をあげていくこと以外ないでしょう。
    「More “R.O.O.M.”s!
    More “R.O.O.M.”s!
    We Want More “R.O.O.M.”s!!」、
    「もっと観たいんだ!」と。

    Noismを待望する「声」を束にして、
    もっとNoismが観られる状況を手にしたいものです。
    こんなに凄いカンパニーはそうそうあるものではありませんから。
    (shin)

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