サクッとNIDF2017 その1(9/29:韓国・大邱市立舞踊団)

2年前に初めて開催されたNIDF2015では、
Noism0『愛と精霊の家』以外足を運ばなかった生来の「不勉強者」なのですが、
ここ数日、今年2回目を迎えるNIDFについての金森さんのインタビュー記事を読むうちに、
「せっかく金森さんが、新潟にいながらにして、
様々な舞踊に触れる機会を用意してくれているのだから」と思うようになり、
本日2017年9月29日(金)、「フェス」初参戦して参りました。(笑)

幕開けのこの夕、ステージに立ったのは、
韓国・大邱の大邱市立舞踊団。
過度の緊張を強いることのない自由な作風の演目は、
まず、シリアスあり、コミカルあり、リリカルあり、即興あり、組み体操風ありと
ボキャブラリー豊富で、ユニークな「動き」の多い『Mosaic』(40分)と、
10分間の休憩を挟んで、円卓ではなく、舞台奥へ縦に伸びる2本の白い床の上、
上半身は赤、下は黒の衣裳を纏った女性ふたりで踊られ、
ラスト、ぴたり決まる「脱力感」が意表を突く『Bolero』(20分)の2作。

同舞踊団の芸術監督ホン・スンヨプ氏と金森さんのアフタートークで、
金森さん(一部、会場から)の質問に答えて語られたホン・スンヨプ氏の発言を
サクッとご紹介したいと思います。

---『Mosaic』について
★通常一作品が60分越えになることが多く、それではキツイため、
一般のお客さんが楽しめるものを作りたいと思い、
過去の作品からの抜粋を再構成して作った作品。
一番古いものとしては2006年作品からのものが含まれている。

---振付に関して
☆はっきりとした「動き」は全て自分(以下、ホン・スンヨプ氏)が振り付けている。
★振付をする前に、2ヶ月間、「動き」のバリエーションを約20ケ程作り続ける。
☆それぞれは約1分~1分30秒ほどの短いもので、作品の中でどう使われるかは自分でも
わからない。
★時には音楽に合った「動き」を作ることもあるが、「動き」を作って音に嵌めていくことが
多い。
☆そして場面にあわせて「動き」を変形させていく。
★常に「振付ノート」を携行していて、何か感じたら書き付けるようにしている。
☆新しい「動き」には常に心を開いた状態でいなければならない。
★最初から「何をしなきゃいけない」とかいうふうには考えずに、
「自分自身が何をしたいのか」をじっくりと観察しようと努めている。

---『Bolero』について
☆ラヴェルの『Bolero』に合わせて作ったものと思われているのだろうが、逆で、
自分が作った15ケ程の「動き」のバリエーションを音楽に嵌めていく形で振り付けた。
★これも最初に「動き」を作り、それから『Bolero』、その後に「テーマ」が来るという、
普通考えられるスタイルとは逆の順番を辿って作られた作品である。
---ならば「他のテーマ」でも良かったのか?
☆自分が霊感を受けた順番に作っていった。(←それ以上の明確な回答はなし。
はぐらかされたのか、はたまた、通じなかったのか。)
---「女性ふたりでいこう」と決めたのはいつか?
★振付を考え始める頃には「女性ふたり」と決めていた。
☆これもやはり「動き」のバリエーションを先に作って、団員全員が練習した。
最初、女性と男性も良いかなと思ったのだが、自分が最も大事に思う「動き」を
男性ダンサーがうまく消化できなかったことも大きく関係している。
★韓国の男性コンテンポラリーダンサーには若干バレエの基盤が弱い部分があり、… 等々。

一貫して「動き」を先に作っていくと語ったホン・スンヨプ氏。
そして、時に茶目っ気を覗かせながら、
そうした「逆コース」の創作過程について興味深げに質問をする金森さん。
そんなやりとりを聞いていると、自然と頭をよぎったのは、
少し前に読んだインタビュー記事のなかで、金森さんが語っていたこと、
…Noismとは異なる別の舞踊を観ることで、Noismの独自性がまた見えてくる…、
それをしかと感じる舞台、並びにアフタートークでした。

「フェス」第2弾、10月8日(日)のシンガポール・T.H.E.ダンスカンパニー公演を
待ち遠しく感じながら、家路につきました。
まだまだ良いお席もあるようですし、皆様も是非♪  (shin)

「サクッとNIDF2017 その1(9/29:韓国・大邱市立舞踊団)」への6件のフィードバック

  1. shinさま
    早速のブログアップありがとうございました!
    サクッとと言いつつ、とても丁寧でさすがですね♪
    はい、私もNoismの独自性を「しか」と感じました。

    私は2年前も観たのですが、アフタートークで、ああ、ホンさんってこういう感じだったなあと何となく思い出しました。
    NIDF2015の大邱舞踊団公演についての旧サポーターズブログ:http://noism.exblog.jp/24390020/
    を読み返したら、すっかり忘れていたことをいろいろと思い出しました。
    2015年の方がより実験的、先鋭的だったような・・・
    記録って大切ですね。

    さて、次の公演は10/8。
    シンガポールT.H.Eダンスカンパニーの芸術監督クイック・スイ・ブンさんは、今注目の人ですし、元Noismの後田恵さんが出演するのもとても楽しみです♪

    今日の公演ではサポーターズの人たちや見知った人たちが、忙しい中たくさん観に来ていてすごいなあと思いました。
    皆さんに会えてうれしかったです。
    そして、休憩中・終演後や帰り道等で、短い時間ながらも、いろいろ感想を言い合って盛り上がり、とても楽しかったです♪
    (fullmoon)

  2. fullmoonさま
    コメント、有難うございました。
    それから「過去ブログ」のNIDF2015記事のご紹介にも感謝です。
    改めてそちらを読ませていただきましたが、
    演目についての詳細な記録がなされていて脱帽です。
    やはり、今回の私の投稿は「サクッと」でしかなかったなと。(汗)
    で、多くの方にその記事をお読みいただきたいと思い、
    リンクを貼っておきました。クリックしてみて欲しいです。
    でもまあ、NIDF2017については、私はめげずに
    「サクッと」シリーズでいきたいと思います。(笑)

    今回の演目中、私が「いいなぁ」と感じたのは、
    『Mosaic』終盤、白いバレエ衣裳の女性が
    黒子然とした男性陣に支えられて、様々に宙を舞うフラグメントと、
    新味溢れる『Bolero』でした。

    もっとも、凡庸な私には、その『Bolero』からも、
    紹介されているような悲運の天才画家に纏わるテーマ、
    或いはストーリーはまったく感じ取れませんでしたし、
    最初、上手からネクタイを緩めたワイシャツ姿の男性が斧を片手に現れ、
    舞台中央手前で、円柱形の腰掛けにも似た木に一撃をくれて、
    ふたつになった「蒲鉾形」を足で舞台下へ蹴落とすという
    乱暴な導入部に驚いていると、
    『Bolero』と題されているのであるから、当然でしかない筈なのに、
    ややあって、ラヴェルのあの幽けき律動が耳に届いてきたときには
    更に驚いてしまうといった具合でした。
    「ああ、そうだよなぁ、『Bolero』なんだから」ってな塩梅で。(笑)
    その冒頭部には、ホン氏の「したい事をする」が
    遺憾なく発揮されていたと思います。

    あと、少しギクシャクとしたアフタートーク自体、
    通訳を介した「伝言ゲーム」(金森さん)的状況であったからというより、
    ひとり金森さんが如何に言葉で表現し、伝えることに長けているかを
    浮き彫りにして余りあるものでしたよね。
    あの「通じなさ加減」は、隔靴掻痒を遥かに通り越していて、
    それはそれで面白かった訳ですけど、
    「語れる」金森さんの方が稀有な存在なのだということを
    改めて痛感したような次第です。
    ですから、いろんな意味で実に興味深いアフタートークだったと思います。 (shin)

  3. shinさま
    お返事ありがとうございました!
    リンクまで貼っていただき恐縮です。。

    『Mosaic』終盤の白いバレエ衣裳の女性のところ、よかったですね♪
    花を表す身ぶりも面白かったです。アフタートークで金森さんも真似していましたね。
    『Bolero』の冒頭には私もビックリしました。
    国家権力に引き裂かれた二人(家族)を表しているのでしょうけれど、舞台下にモノを蹴落とすとは凄いことです。
    それであの音楽って・・・・・・・となりますよね。
    アフタートークで、動きが先で、そのあとに音楽とわかって、何となく納得したようなしないような。。。

    shinさんが書かれた通り、金森さんの「語る力」は稀有ですばらしいです。
    (トークイベントでは11/15の市山七十世さんとの対談と、12/3のNINA衣裳・廣川玉枝さんとの柳都会がありますね♪)

    では、NIDF2017について、shinさんの「サクッと」シリーズ「その2」「その3」を楽しみにしています♪
    (fullmoon)

    1. fullmoonさま
      公演時に配付された大邱市立舞踊団の演目が記載されたペラ1枚
      によりますと、
      「終盤の白いバレエ衣裳の女性」部分(”Chagall”)は
      『I saw the elephant』からの抜粋ということで、
      fullmoonさんの「過去ブログ」での記載から、
      それがNIDF2015の際に上演された作品だったことを知りました。
      2年前にもご覧になっていたのですね。
      加えて、女性陣に触れられるとアドリブで動き出す男性陣
      +「組み体操風」(”Touch+Décalcomanie”)も同じ作品からとか。
      私には、そのふたつが繋がっているイメージは浮かびませんけど…。 (shin)

  4. shinさま
    「終盤の白いバレエ衣裳の女性」部分は”Chagall”というのですね。
    なるほど、シャガールの絵のように宙を舞っていましたね。
    ”Touch+Décalcomanie”と共に『I saw the elephant』からの抜粋だそうで、確かに繋がるイメージではありませんね。

    shinさんのコメントを読んで、私もペラプログラムをよく見てみました。
    ”Chagall”と”Touch+Décalcomanie”は「初演2015年/『I Saw the Elephant』(Part1)」となっています。

    2年前のNIDF2015のプログラムを見返してみたところ、その時のタイトルは「新作『I Saw the Elephant』より第2部」となっています。つまり(Part1)ではなく(Part2)だと思います。

    この『I Saw the Elephant』は確か2部か3部構成になっていて(3部は当時はまだ完成していなかったような)、2015年のNIDFプログラムには、「今回の新潟公演のために第2部を中心に再構成した、新作『I Saw the Elephant』を上演」と書いてあります。
    なので、Part1とPart2では内容が違うだろうし、しかも第2部を「中心に」再構成となれば、何がどうなったのか知る由もありません。

    と、くどくど書くのも、どうも2年前に”Chagall”と”Touch+Décalcomanie”を見た記憶がないからです。
    でも実際はもしかしたら見ていたのかもしれませんが、覚えていません。
    すみません。。
    ”Décalcomanie”の方は何となく、あんな動きはあったような気がしますし、今回最初の”Flower”の花の手ぶりは『I Saw the Elephant』からの抜粋ではありませんが、2年前も見たような気がします。
    そういうような動きがたぶんホンさん独自の独特なポーズで、いろいろな作品に出てきやすいのかなと思います。

    2年前と今回、ご覧になった方に、どうだったのかきいてみたいですね。
    私などは頼りなくて申し訳ありません。。

    それにしても、shinさんのように深く考察する方がいて、ホンさんや大邱舞踊団の皆さんはうれしいと思いますよ♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      NIDF2015について、わざわざ綿密に過去資料にあたったうえで、
      詳細なご返信を頂き、有難うございました。
      『I Saw the Elephant』の事情がよくわかってきました。
      第1部、第2部、第3部・・・。
      なるほど、まさしくこれは「群盲象を評す」的な事態なのだと言うことですね。
      寓話の内容に照らして、動詞を’saw’ではなく、’touched’に置き換えてみると、
      今度は具合良く、”Touch+Décalcomanie”とも繋がってきますし、
      めでたし、めでたし、大団円ってことで。いい加減でしょ。(笑)

      で、以下の2点は違うと思います。

      >私などは頼りなくて申し訳ありません。。
      >shinさんのように深く考察する方がいて、

      どちらもこの場でキチンと否定させて頂きます。  
      とても参考になりました。  (shin)

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