Noism1『砕波』、「かわみなと」新潟を描く(@「開港5都市景観まちづくり会議2017新潟大会」全体会議Ⅰ)

2017年9月1日(金)、夏に別れを告げたかのような涼しいここ数日から一転、
鱗雲が浮かぶ、秋めく高い空ながら、気持ちよい暑さが戻ってきた新潟市中央区は、
萬代橋のほとり、新潟日報メディアシップ2Fの日報ホール。

来年度(再来年)に開港150周年を迎える新潟市で、
「開港5都市景観まちづくり会議2017新潟大会」が開かれ、
その全体会議Iにおいて、他の4都市からの来訪を歓迎する意味合いから、
新潟市が誇る「文化資産」Noismによる新作『砕波(さいは)』がこの日披露されました。

開会時間14時の約1時間前に着いてみると、
既に見知った顔が開場を待っているのが目に飛び込んできました。
その後、一緒に並んでいる間も、開場して席に着いてからも、
みんなの顔は内心の期待値を反映してみるみる上気していきます。

予定時刻ちょうどに開会が宣言されると、
新潟大会実行委員長の挨拶、
篠田昭・新潟市長の挨拶を経て、
十数分後、Noismの特別パフォーマンスが始まりました。

先ず、5分弱、スライドを使って、Noismがどのような舞踊団であるのか駆け足で紹介され、
それが投影されていた電動スクリーンが上方に片付けられると、
照明が消え、両脇から人が入ってくる気配。

ホール前方のスペースに、飾り気のない簡素な照明が入ると、
黒いジャケットと黒いパンツに身を包んだ9人が凛々しい立ち姿で一列に並んでいます。
女性5名、男性4名、井関さんを除いたNoism1メンバーと準メンバーです。

聞こえてくる波の音に合わせて、左右に緩やかに体を揺らせる同調性と
それを乱すかのようにひとりから発しては拡がるまた別の動き。
しかし、やがてそれもまた全体に吞み込まれていきます。
それはまるで、凪いだ海と静かに寄せる波。
更に時折、タイトル通りに砕ける波の激しさも見せます。
過去「裏日本」と呼ばれもした暗い海(日本海)を表象する滑り出しです。

音は変わり、樽砧、やがて太鼓の律動へ。
更に雅なる箏と横笛へと引き継がれていきます。
それらは新潟を取り込みつつ、全て純日本風な響きと調べ。
対する9人、ジャケットを脱ぎ去ると、タンクトップ或いはTシャツもまたまた黒。
そのダンスは一貫して、概ねとてもソリッドです。
しかし、常に硬質な日本海の波のようであるだけでなく、
途中、港町で暮らす人を描いているようでもあり、
着物を着た女性の粋、「しゃなりしゃなり」を思わせるユーモラスさなども顔を覗かせるなど、
その変幻自在振りに目は釘付けになるより他ありません。

とりわけ、「よさこい」風に、「はっ!」とか「よっ!」という掛け声を発しながら
激しく踊られた「和」テイスト濃厚の群舞はNoismでも珍しい光景だったと思います。

開港5都市中、唯一日本海に面した港湾都市「新潟」がNoism流に可視化されていきます。
Noismを目にするのは初めてだった(かもしれない)他の4都市から来られた方々同様に、
Noismを見慣れている筈の私たちにとっても、
それは「新潟」を踊る、目新しいNoismを目撃する貴重な時間だったと言えます。

9人がその体を床に横たえ静止すると、今度は、下手側から白い衣裳の井関さんの登場です。
井関さんのソロパートはそれまでとは対称的に、光が射すように、とても優美な印象で、
精霊を思わせるその手足のしなやかな長さが見つめる者の目をことごとく射貫いていきました。

それは冬を越えた春の到来であるのか、
はたまた、それを再生と見るか、開かれる新たな一頁と見るか。
井関さんから生命力が伝播したかのように、横たわっていた9人は順次立ち上がり、
井関さんの方は下手に退場します。
冒頭と同じ波の音が聞こえるなか、9人がやはり冒頭と同じ横一列を作ると、
照明が落ち、約15分の作品が終わりました。

客席からは、大きな拍手と「ブラボー!」の掛け声、
更に井関さんにブーケが手渡されるなど、
観る者全てに大きな印象を残してNoismの特別パフォーマンスは締め括られました。
直前に篠田・新潟市長がその挨拶で触れた「新潟の文化発信力」、
それを先頭に立って引っ張るNoismの面目躍如たるところを示せたものと思います。

そして、上にも書きましたが、いつも様々な「遠い世界」を見せてくれるNoismが、
この日は、私たちにとって身近過ぎて、意識にものぼらない「新潟」を題材に、
新作を見せてくれた訳ですから、それはとても貴重で誇らしい時間だったと言えるでしょう。
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この日のお目当てだったNoism『砕波』の後の全体会議Ⅰでは、
まず、参加5都市からの活動報告が行われ、
休憩を挟んで、卜部厚志氏(新潟大学)と野内隆裕氏(路地連新潟)を講師に迎えた
基調講演「砂丘のある港町・新潟~ブラタモリ新潟を深く掘る」があり、
予定された17時まで、日本最大級の砂丘の街・「かわみなと」新潟について、
存分に愉しい学びの時間を過ごすことが出来ました。
しかし、そちらは私の手に余る内容ですし、
このブログの趣旨からも外れますしで、
「それはまた、別のお話」ということにさせていただきたいと存じます。m(__)m
(shin)

「Noism1『砕波』、「かわみなと」新潟を描く(@「開港5都市景観まちづくり会議2017新潟大会」全体会議Ⅰ)」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    とても素敵なパフォーマンスでしたね!
    新潟を意識した、打楽器主体の音楽にのせて繰り広げられる舞踊。
    すごくカッコよかったですね!!
    緩急自在、ゆっくりした動きから次第に激しい動きへ。
    わおっ!と思うメンバーの激しい踊りの後に、羽衣のような衣裳を纏った井関さんが登場し、優美な舞を披露。
    あの手の動きには、合掌とは違う有り様でありながら、観音様のような有り難さが滲み現れていました。
    目を奪う激しい波の動きと、ゆるやかな波の舞。
    開港5都市の集いにふさわしい、すばらしいパフォーマンスに大満足♪
    (fullmoon)

  2. fullmoon さま
    コメント、有難うございました。
    「今回が最初で最後」ではないかもしれませんが、
    少なくとも「しばらく観られない」、
    そう思って目を皿のようにして観ていても、
    一度観たきりの舞踊を覚えているのはなかなかに難しいことですよね。
    そしてそれに言葉を宛がおうとする際、
    また新たな困難に直面するという案配で。(涙)

    前半、9人のパートがクールかつ男性的だったとするなら、
    後半、井関さんのソロパートはソフトで女性的。
    「羽衣」、「観音様」、そうです、そうです。
    衣裳や精霊ではなく、「羽衣」であり、「観音様」。
    井関さんの舞踊は「舞」とでも言ったらよいようなテイストでしたし、
    両の掌を合わせるのではなく、上下にずらして縦に並べる仕草などには、
    ある種、仏や菩薩、そんなものをも想起させられます。

    いずれにしましても、「新潟」を念頭に置いた金森さんのクリエイション
    という点に、誇らしい気持ちを掻き立てられましたよね。
    他の4都市から参加の方々もきっと大いに堪能されたんじゃないでしょうか。
    また、何かの折に観てみたい「新潟」の舞でしたね。  (shin)

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