Noism2『よるのち』楽日、1日2公演を満喫

2017年6月25日(日)、Noism2特別公演『よるのち』楽日。
この日は早くから購入していた18:00の回に加えて、
頑張って20:00の回の当日券も手に入れ、2回観てきました。
否、単に観るだけの側が「頑張って…」などと書いたりするのは、
ホントおこがましいくらいに、大熱演の2公演でした。

前日(中日)18:00の回を観て帰路に着く私の心に、
何か後ろ髪を引かれるような思いが残ってしまっていたのです。
その正体とは、あれだけの舞台を1時間後にもう一度上演するなら、
「本当の『よる』」の時刻に『よるのち』を観てみたい、という血の騒ぎ。
同時に、20:00の回を見ようと入場していく人たちへの嫉妬心に似た気持ち。
それは、私だけでなく、多くの人に共通するものだったようです。
楽日、2公演の客席には、同じ顔ぶれが何人も見受けられたことが
如実にそれを物語っていました。
平原慎太郎さんと若き8人の「吸血鬼」に
嬉々として自らの血を差し出そうとする
まさに「被吸血鬼」の群れと言えそうです。(笑)

さて、話は少し脇へ逸れますが、
数多の「吸血鬼」もの映画が描いてきた、最も恐ろしい場面といえば、
いたいけで疑いを知らぬ美少女を捉えたカットに
背後から「吸血鬼」がフレームインしてくる場面と言い切って
間違いないでしょう。
そのシーンを成立させているのは、情報のギャップです。
「誰が『吸血鬼』なのか」という情報に辿り着けずにいる少女を、
とりあえず情報を手にし得る立場にある観客が見詰めることで、
そこにサスペンスが生まれることに説明は不要でしょう。

今回の『よるのち』の観客についてはどうでしょうか。
選んだ席によって見える場面もあれば、見えない場面もある。
それがかなり重要な鍵を握る場面であったとしてもです。
それこそまさに情報のギャップ。
私たち観客も、安穏として観ていられなかった筈です。
つまり、作品世界の時空が、私たちの現実世界を巻き込み、
浸食して拡がっていたのだと言えます。
私たちは作品の後半、鳥羽絢美さんが操る「妖力」の類いに
しっかり捉えられてしまっていたのではないでしょうか。
そのため、何度も進んで自らの血を差し出そうと
あの洋館に通い詰めた(或いは、通い詰めたくなった)のです。

初夏の怪奇譚。
全5公演中の4回、
彼女たちが示した、研修生カンパニーという以上の
見事なパフォーマンスを心ゆくまで堪能しました。
(細かいことですが、楽日20:00からの公演を観て、
早い回と遅い回とでは、カーテンの使い方が
違っていることも確認できましたし。)

しかし、あの「吸血鬼」たちであれば、
「またすぐにでも血を差し出したい」と、
なかなか血のたぎりが鎮まらないのは私だけではない筈です。(笑)
再演は難しいかも、ですけど。 (shin)

「Noism2『よるのち』楽日、1日2公演を満喫」への4件のフィードバック

  1. Shinさま
    平原さんの意欲作『よるのち』。
    これまでにない切り口で驚きました!
    そして期待に応えて余りある、Noism2メンバーの凄さにびっくりです!!
    魅力的な会場。音響、照明の効果。異世界を覗いた心地です。

    ★公演ご感想ブログ

    いちかっこジョバンニさんのブログ:
    http://clothoiddiary.blog.fc2.com/blog-entry-871.html

    いぽぽぽぱんぱさんのブログ:
    http://ameblo.jp/ipopopopanpa/

    ツイッター等でもいろいろなご感想がありますね♪
    Noism2メンバー大健闘に拍手です!

    さて、Noism公演鑑賞回数ではこれまで1位(おそらく)を誇る私でしたが、今回は吸血少女たちに魅了された方々にその座を奪われてしまいました。。
    あまりに血を吸われすぎると身体に毒かと思いますが、とは言え、私も1日1回、計3回観たのですよ。
    19時、18時、20時。
    公演の始めと終わりを告げる柱時計の音、窓の厚いカーテン、あるいは夜の闇、蠢く吸血少女たち。
    堪能しました(私は血をもらったみたいです)。
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント有り難うございました。
      自分でも、自ら進んで「吸血」して貰うという、
      特殊な「献血」にも似た振る舞いをせずにはいられない
      と感じてしまった自分自身に驚いているところです。

      でも、当初から全5回公演のチケットを揃えておられたうえで、
      入手できなかった方に2枚譲られたfullmoonさんの懐に広さに
      感銘を受けると同時に、
      「被吸血鬼」を増やそうとする気持ちからの振る舞いと見て、
      個人的には「9人目の吸血鬼」の称号を差し上げたい思いです。(笑)

      それにしても、Noism2の若手舞踊家8人、化けましたねぇ。
      もともと、化けるのが主題の演目にあって、
      眼福に、感服に、感心に、感動に、感謝まで加えたくなるくらいで、
      実際、何と言い表すのが適当なのか、
      ひとつの言葉にはまとまりがつかないほどです。
      個々の魅力がそれぞれ大いに発揮されていたうえでの、
      全体の統一感も見事で、ホント痺れました。
      しかも、それを目撃するのに要したのが、
      1公演1,000円(会員割引だと900円)という破格の安さ!
      「贅沢なこと、このうえなし」でしたよね、まったく。

      浮き世離れした週末を過ごさせて貰ったことに対して、
      舞踊家と関係者とに心より感謝したい気持ちです。 (shin)

  2. > Noism2の若手舞踊家8人、化けましたねぇ。
    あらあら、それはどうでしょう?
    shinさんが今回作品で見た若い肉体の挑発にくらくら来たことは良くわかりますが、「化ける」と言うのは、たとえば2011年7月(この年はサイトウキネンのため変則シーズン)からNoism2に参加した梶田留以さんや関祥子さんが2014年3月に上演されたFour FoursやPainted Desertを経て(ここで大きな成長があった)、同年7月のRAFTやそれ以降へ至る過程を語るなど、時間経過を経る中で目に見えて成長したことを評価する場合に使われるべき言葉であって、今回初めて踊りを見た人が半数を占める場合に使うのは適切でないと思います。今回作品で「化けた」のかどうかを判断する根拠はないはずですが。
    もっと素直に、Noism2、今回メンバーの半数は初めて見る人たちだったけれど、みんな素晴らしい!みたいに言えばいいと思いますね。
    まあそれはともかく、私も、今回作品では振付家と舞踊家たちによる素晴らしい挑発を見せてもらったと思っています。オール女性メンバーでないとこの作品の再演は難しいように思いますし、個人的にセリフがなければ成立しない作品は苦手だったりするんですが、こうした芸術的挑発行為と言いますか、見ているお客の心をつかんで揺さぶるような作品が今後も上演され続けることを願ってやみません。

    1. あおやぎ さま
      コメント有難うございます。
      「化ける」、
      これまでのNoism2テイストとは異なるキャラクターを造形していた意味もあって使ってもみたのですが、
      確かに、本義に照らして、この先に取っておいた方がよい表現でしたね。
      一ヶ月のクリエイションの間に、
      自らが今手にしているものを全て使って、遮二無二打ち込み、
      ここまでの緊迫感を醸し出した8人。
      ここから精進を重ねることで、
      更に大きくなる「萌芽」が目を撃ったと言うべきですね。
      ですから、「化ける」はこの先の大変貌までとっておきましょう。
      今は、8人の若い舞踊家が示した可能性に期待が募ります、と改めます。
      どうも有難うございました。  (shin)

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