『よるのち』初日、新生面で魅せるNoism2

2017年6月23日(金)、Noism2特別公演、
平原慎太郎さん演出振付の新作『よるのち』初日を観てきました。

場所はりゅーとぴあのお隣にある建物、新潟県政記念館の議場。
コの字型に設えられた往時の議会席、その長机と椅子。
そしてその内周にキレイに据えられたパイプ椅子席と
正面には更に最前列としてクッション席が1列。
それらが描くコの字に囲まれた内側の床面が舞台です。
客席は多様な自由席ですから、
どの席を選ぶか迷いますが、
座る場所によって見えるものが異なってきます。

ほの暗い議場、
下手奥の壁に架けられた大きな柱時計が7時を刻むと、
情緒たっぷりに、かそけき鐘の音が数度聞こえてきます。
上手奥の「書記」席、今公演で退団される秋山沙和さんが
落ち着いた口調で真剣かつユーモラスに「公演中の注意」をしたかと思うと、
そのまま語り続けながら立ち上がり、黒いマットへと移動して、
公演内容へと繋がっていきます。
今回の『よるのち』は随所に言葉が語られる多弁な作品で、
「吸血鬼」を扱った野心作です。

作品中に触れられるように、世界各地で「吸血鬼」伝説は見出せるとしても、
「吸血鬼」と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは、
やはり古城を舞台にした、「あの」ゴシックロマンスでしょう。
県政記念館の堅牢そのものの議場はぴったり。
更に、「吸血鬼」作品にあって、
血を吸われる美少女の存在も不可欠とするなら、
うら若きNoism2の8名はまさにぴったり。
両者を得て、新潟で、平原慎太郎さんが一ヶ月をかけて制作した
妖しい世界が立ち上がります。

鍛錬を重ねる身体であると同時の、弾力に富む若い肉体。
纏わり付く髪の毛、首筋、汗ばむうなじから、
胸元、背中、たくし上げられ露出する脇腹や突き出される臀部を経て、
足の付け根、太腿、白く浮かびあがる艶めかしい足先まで。
こぼれて突出する肉体の「隙間」、そのフェティシズム。
そして真っ直ぐ前のみを見詰める目を含めて、
若い血と永遠の生を巡って、たちこめる頽廃的な官能性。
文字通り、地を這う鳥羽絢美さんをはじめ、今回、8人の若い舞踊家が示したのは、
健康的に躍動する身体とは真逆に位置する、伏して悶え、喘ぎ、捩れる身体。
「吸血鬼」と、それにおののき、やがて蹂躙される美少女を観ることの愉悦。
禁断の倒錯性、或いは嗜虐性に浸る時間、それはまさに快楽。
そして、吸う側と吸われる側の反転する関係性、
加虐と被虐とが絡み合い、縺れるさまも見所のひとつで、
50分の公演が終わるその瞬間まで、次の展開の予想がつきません。
私たちは何を観ているのか、
そして今、ここが、いつでどこなのか、
それらが判然としなくなる感覚に痺れます。

かように書いてくると、「男性目線」優位の見方・書き方と思われるかもしれませんが、
そのあたりは、実際、どうなのでしょうか。
見入るうちに、性別を超えて、己の中に「吸血鬼」を見出すのが、
この妖しいゴシックロマンスの醍醐味ではないでしょうか。
女性の目にも同じように映じていたはず、と信じます。

若い(女性ばかりの)舞踊家集団であることを最大限取り込んだ
平原慎太郎さん書き下ろしの『よるのち』は、
ですから、Noism2の新生面を開く作品とも言えるでしょう。
今のNoism2が、今というこの時にしか生み出せない作品かもしれません。
演出振付の平原慎太郎さんが「吸血鬼」なのか、
Noism2が平原慎太郎さんの血をその8つの若い肉体で吸い尽くすのか。
飲むか飲まれるか、
その判定をしながら観るというのも一興でしょう。

終演後、会場でお会いした「Noism愛」では人後に落ちない方々から、
口々に、「shinさん、こういうの好きでしょう」と見透かされてしまうと、
やや書きにくい気持ちもあったのですが、
Noismサポーターズ(Unofficial)事務局「黒一点」(!)の私が、
この怪しく妖しい世界を観たまま、感じたままに書かせて頂きました。
不穏当な部分もあるかもですが、ご容赦願いたいと思います。(笑)

そんなスリリングな意欲作『よるのち』、
明日(土曜)、明後日(日曜)はそれぞれ2回公演。
各回、若干の当日券も出るとのことですし、
日曜日の2公演はまだ席に余裕があるとのこと。
私はあと2回観ます。
初日夜ののち、
今度はどの席に座ろうかと今からワクワク。

今までのNoism2とはひと味違った「若さ」が
観る者の目を魅了する今回の『よるのち』、
あなたの目にはどのように映りますでしょうか。
是非ともご覧ください。

追記
この作品が気になる方や平原慎太郎さんのファンの方に向けた嬉しいお知らせです。
会場にて、平原さんによる台本「舞踊戯曲『よるのち』決定稿」が
各回限定10冊、2,000円で販売中です。如何でしょうか。ご検討ください。
(shin)

「『よるのち』初日、新生面で魅せるNoism2」への2件のフィードバック

  1. Noismの客層は1も2もよそのダンス公演とは大違いで、ふつうの市民の方々が実に多くて大変喜ばしいです。
    ただ、ダンス部員とおぼしき女子高生は集団で見に来るのに、男子高校生はほとんど見かけませんね。男性を含む若い世代の人たちこそこうした作品を見て、振付家とダンサーたちによる芸術的挑発を正面から受け止めて心を震わせたらいいと思うんですが。
    新潟のオトコノコは当日券売り場に並べ!ですよ。

    1. あおやぎさま
      コメント有難うございます。
      「男子高校生」、「挑発」、そうですよね。
      恐らく、まだまだ、ダンス=「女子の芸事」という感覚が根強くあるのでしょう。
      今回、観に来たら、悶死、或いはキュン死してしまうかもという作品なだけに、素通りは勿体ないですよね。
      では、私からも、「新潟の男子は当日券を買いに並ぼう♪」と。
      (shin)

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