「黒部シアター2023 春」前沢ガーデン野外ステージでの「稀有な体験」が語らしめたインスタライヴ♪

2023年5月23日(火)の夜20時から、昨年夏以来の金森さんと井関さんによるインスタライヴが配信されました。語られたのは前週末の2日間のみの野外公演のこと。僅か2日間のみその姿を現し、私たちの日常を活性化して去っていったまさに「稀人」のような『セレネ、あるいはマレビトの歌』とそれが踊られた舞台「前沢ガーデン野外ステージ」について、その「稀有な体験」が語らしめたアフタートーク的内容だったと言えます。全編(作品とほぼ同じ尺の約55分)はおふたりのインスタアカウントに残されたアーカイヴからご覧いただくとして、ここではかいつまんでご紹介させていただきます。

☆前沢ガーデン野外ステージでの公演、そのいきさつ: 昨夏、「御大」鈴木忠志氏から「金森、やってみるか」とお声掛け(=「挑戦状」)があり、0.5秒後にスケジュールも何も見ないままに「はい」と即答。「師匠」からの「新作」の依頼は2019年の『still / speed / silence』以来、2度目。中途半端なものは見せられない。気合が入る。それは井関さんも同じで、「何なら俺よりも(気合が入る)」と金森さん。対する井関さんは金森さんのことを「外からの『異物』があったときに燃える。本能的に闘いにいく人」と。

★「御大」の感想: はからずもその2回、褒めてくれた。今回、初日の後、ひとつ指摘をいただいた。「御大」からの指摘は常に具体的で、得心させられる。今回も「ああ、まさに」と感じ、対処した。「感覚ではなくて、具体的。聞いているだけで『画』が見える」(井関さん)

☆その「御大」の指摘: 空間の演出の仕方、バランスのとり方。その作品に限ったことではなく、もっと舞台芸術・総合芸術・空間芸術・実演芸術の本質に根差したもの。未来のクリエイションに繋がる指摘。野外ゆえの壮大なものを見つつ、舞踊家の身体、精神まで見てのもの。

★素晴らしい施設での「合宿」: 常に一緒。「スポーツでは必ず合宿やるんだ」と鈴木さん。「同じ釜の飯を食う」こと、集団性において意味大きい。

☆ゲネプロの日(金曜日)の雨: その夜の通し稽古、凄かった。冷えた空気のなか、火照った体から水蒸気が発散された。「まるで『北斗の拳』」(井関さん)「生まれてくる熱量が可視化された」(金森さん)

★アルヴォ・ペルトの音楽: 全編、ペルト。昨秋、会場(東洋的な森林に囲まれた西洋的な建築物、その融合した世界観)を見てイメージしたとき、合いそうだと思ったと金森さん。ペルトの歌曲は珍しいが、最後にそれを見つけたときに「ああ、これだ」と思った。

☆空間の使い方の工夫: 黒い舞台とその奥の緑の芝の丘、その境界をどう解釈して、どうつかむか。それが今回の作品の核だった。此岸と彼岸。その境を超えてやって来るマレビト。空間的なことって、現場に行かなければダメ。そこでアジャストしたつもりが、「御大」から「でもさあ、1個だけ…」と指摘があった。その指摘のキーワードは「7,3,1」と明かした井関さん。それに関して金森さん、「自分の作ったものに対して批評的な視座をもつためには冷静さが必要なのだが、最後のシーンについては感情移入してたんだと思う」

★野外ステージの魅力: 「せっかく良いもの出来たのにさあ」と金森さん。新潟にも野外劇場を!上堰潟(うわせきがた)公園とかに。前沢ガーデン野外ステージで観るNoism、毎年、ひとつの文化みたいに、恒例にしたい。
 金森さん「演出家として、空間をつかむことの本当の課題・難しさは(屋内)劇場では味わえない」
 井関さん「劇場の中で踊っていると気になることが、野外では『いいや!』と思え、そこに拘ること以上のものがあると直感的にわかる」
 金森さん「人工物(ハコ)の中でやっていると、踊りも演出も自分がどうしたいかに拘泥してしまう。野外に出たら受容するしかない」
 井関さん「屋外では本気で自分に集中していた。(屋内)劇場では自分を肯定しつつ、自己満足の部分が結構あると気付いた」
 金森さん「社会がどんどん人工化していくなか、野外でパフォーマンスすると、パフォーミングアーツの神髄や核にもう一度立ち帰れる」
 井関さん「やっと、もしかしたら何か知ったかも、という感覚がある」
 金森さん「(この『セレネ、あるいはマレビトの歌』を)世界中の野外劇場で上演したい」
 井関さん「野外は一様じゃないから、どうなっていくか経験してみたい」
 金森さん・井関さん「いろんな作品でいろんなところに行くんじゃなくて、同じ作品でいろんなところに行ってみたい」
 金森さん「また是非、来年!」

☆明日からは…: 「劇場というブラックボックスの中で良い空間を作ります」と金森さん。「この経験を踏まえた上で」と井関さん。『領域』、ふたりだけで20分強(25分くらい)踊る初めての作品。

…と、そんな感じだったでしょうか。

あと、この日のおやつは貴餅(きへい)さんの白玉ぜんざい。そして、途中、宅配便で高知から西瓜が届いたりするハプニングもありましたね。

それにしましても、また観たいですね、『セレネ、あるいはマレビトの歌』♪それもまた屋外で。ならば仕方ない、「新潟野外劇場プロジェクト」に漕ぎ出してみますか。(笑)

(shin)

「「黒部シアター2023 春」前沢ガーデン野外ステージでの「稀有な体験」が語らしめたインスタライヴ♪」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    ありがとうございました!
    楽しいお話盛りだくさんのインスタライヴでしたね♪

    公演の最初の方、井関さんが丘の上から真っすぐではなく、斜め方向で下りてくるのがとても素敵だなあと思っていたのですが、そのせいで佐和子さんの苦労が水の泡になったそうで、そんな裏話も面白かったです♪

    それにしてもあの多種多様な音楽の全編がペルト作曲とは驚きです!
    「糸紡ぎ娘の歌」の井関さん山田さんの踊りには打たれました。
    歌曲には訳詞も付いていて嬉しい!
    『さすらい人』繋がりも感じました。

    そのあとのメンズのギラギラとレディーズのど迫力も瞠目!
    『NINA』な場面もありましたね。
    「北斗の拳」の水蒸気、見たかった!

    謎の「7,3,1」ですが、ラストシーンにおける舞踊家の配置に関するものかと想像しています。
    最後にメンバーが彼岸の丘に捌けていく時、最後から2番目の中尾洸太さんと庄島さくらさんは、初日は右方向に行きましたが、2日目は左方向に変わっていました。
    そういうことかなと。

    山田さんの光背の輝きも初日より控えめになっていました。
    変化・変更が興味深いです。

    あと、皆さんでハンバーグを作ったお話で、照明作りで遅くなった金森さんを待って、出来たてを食べてほしいと思ったメンバーの気持ちなど、嬉しいお話もありましたね。
    皆さまぜひどうぞアーカイヴをご視聴くださいね♪

    皆さんは自然の中で合宿をして、どんどん野生化していったそうですが、私も1日目より2日目、環境に馴染んだせいか体調も良く、居心地のいい前沢ガーデンにずっといたいなあと思いました。

    そして、「新潟野外劇場プロジェクト」!
    上堰潟が候補にあがっていましたね。
    あそこは広々しているのでできるかもしれませんね。
    佐潟もいいかもしれません。
    それと、新津美術館の裏手に円形の野外ステージがあるそうで、土田貴好さんたちが昨夏公演しましたが、私は行かれなかったのでどんな場所なのかわかりません。見に行ってみたいです。

    セレネ・マレビト、再演が待たれます♪

    もちろん「領域」も超楽しみ!
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント有難うございました。
      ブログでは拾い切れなかった事柄もカヴァーして頂いたり、感謝です。

      ペルトの音楽!まるでこの作品のためのものかと思うくらいの「しっくり感」がありましたよね。

      井関さんによる謎めいたキーワード「7,3,1」に関しては、両日をご覧になったfullmoonさんのとらえ方がとても参考になります。真相や如何に、っていったところですね。まあ、色々と想像してみて、その挙げ句、謎は謎のままに、謎を呼ぶ感じがあってもよいかと。

      あと、取り上げていただいた作りたて熱々のハンバーグを金森さんに、っていう件には本当にホロリとさせられました。「合宿」中の一場面を切り取ったよい逸話でしたよね。でも、それに続いて明かされた、別の日、みそ炒めに合わせる白米がなくなってしまって、「炊き込みごはん洗いましょうか?」に至る衝撃の「白米事件」(!)には大笑いしましたけれど。(笑)このあたり、開始13分あたりでしょうか。まだ視聴されていない方は、じーんときたり、大笑いしてくださいね。

      本当に様々な楽しみ方ができるインスタライヴでした。まだの方は是非一度!ご覧になられた方はもう一度!ですね。
      (shin)

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