「SaLaD音楽祭2022」メインコンサートで魅せたNoism♪

*西日本各地で猛威を振るい、北上を続ける台風14号。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

Twitterで金森(穣)さんの従兄弟の金森大輔さんが防災の観点からのツイートを多数続けて発信してくれている状況下でもあり、「行けるのだろうか?」「大丈夫なのか?」「見送るべきではないのか?」と不安な気持ちは否めませんでしたが、タイミング的に新潟・東京間の往復ならギリギリ何とかなりそうと、2022年9月19日(月)、東京は池袋の東京芸術劇場での「SaLaD音楽祭」メインコンサートを観に行ってきました。

時折、思い出したように激しく雨が路面を叩きつけていましたが、池袋駅から地下通路で繋がる東京芸術劇場は、傘の出番もなく、大助かりでした。

15時、コンサートホール。都響の楽団員が揃い、矢部達哉さんによるチューニングに続き、指揮の大野和士さんが姿を見せると、次いで上手側からNoism Company Niigata の7人が歩み出て来ました。順に樋浦瞳さん、糸川祐希さん、三好綾音さん、中尾洸太さん(センター)、井本星那さん、坪田光さん、杉野可林さんで、公開リハ初日とは樋浦さんと糸川さんのポジションが入れ替わっていました。ペルトの音楽による『Fratres I』横一列ヴァージョンです。都響による演奏はCD音源と較べても、弦の音が遥かに繊細に響き、その楽音を背中から受けて踊る面々の様子はいずれも最高度の集中を示して余りあるものでした。

ペルトの『Fratres ~ 弦楽と打楽器のための』に金森さんが振り付けた作品は、これまで、順に『Fratres III』まで観てきていますが、ここでその始原とも呼ぶべき『Fratres I』を、それも金森さんが踊らず、極めてシンプルな(一切のごまかしが利かぬ)横一列で観ることには、観る側にも初見時の緊張を思い出させられるものがあったと言いましょう。冒頭から暫く、上からの照明は踊る7人の顔を判然とさせず、黒い衣裳を纏った匿名性のなか、7人がNoism Company Niigataの「同士」であることのバトンを託されて踊る峻厳極まりない様子には瞬きすることさえ憚られました。

踊り終えて、下手側に引っ込んだ後、盛大な拍手のなか、大野さんに促されて再び姿を見せた7人。緊張から解き放たれ、安堵した表情を見たことで、こちらも頬が緩みました。それほどの厳しい空気感を作り出した11分間の舞踊だったと言えます。

その後、都響による華やかなウェーバー:歌劇『オベロン』序曲を挟んで、15時30分になると、再び、Noismのダンスを伴う、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第2楽章です。金森さんが振り付けた舞踊作品としてのタイトルは『Sostenuto』。同曲の発想記号からの命名です。

舞台の準備段階から、通常のピアノ協奏曲のときと異なり、指揮者の大野さんに正対してピアニストの江口玲さんが演奏するかたちでピアノが配置されたのが先ず印象的でした。先の『Fratres I』同様、オーケストラの手前でNoismが踊るのですが、その姿を捉えながら演奏する必要があってのことでしょう。

死、喪失、悲しみ、絶望…、そうしたものの果てに「音が保持され」、光や希望が見出され、人と人の時間が、或いは彼岸と此岸とが繋がれるに至る叙情的な作品『Sostenuto』、その世界初演。白い衣裳、白みがかった照明。井関佐和子さん、山田勇気さん、井本さん、三好さん、中尾さん、庄島さくらさん、庄島すみれさん、坪田さん、樋浦さんの9人によって踊られました。人ひとりが不在となることに胸が締め付けられつつ進み、最後に光や希望が見出され、思いが繋がるとき、涙腺は崩壊せざるを得ません。これまで幾度となく聴き、「ロシア的」と解してきたラフマニノフによる旋律が、この舞踊を想起することなしには聴けなくなってしまった感すら否めない胸に迫る濃密な叙情性。こちらも時間にすると11分ほどの小品ながら、忘れ難い印象を残す作品です。この先、いずれかの公演時にこの度と同じ完全な形での(再)上演が望まれます。

Noismの舞踊は僅か「11分×2」という短さながら、台風への不安を抑えて行った甲斐のあるこの度の「SaLaD音楽祭2022」でした。幸い、帰りの新幹線も無事運行しており、安全に帰宅できましたし。

この度の公演会場でも、Noismサポーターズの数名とお会いできましたし、開演前、そして途中休憩と終演後にも、浅海侑加さん(と彼女のお母様)にばったり出くわし、その都度、ちょっとずつお話しすることができ、何よりご結婚の祝いを直接お伝えできました。で、浅海さんからは「これを終えると、メンバーは明日(9/20)から一週間お休み」とお聞きしました。18thシーズンから19thシーズンへの移行期は色々とイヴェントが目白押しでメンバーはとても忙しかったことに改めて気づかされました。充分な期間とは言えないかもしれませんが、一週間ゆっくりして、再び新シーズンに臨んで欲しいと思いました。

(shin)

「「SaLaD音楽祭2022」メインコンサートで魅せたNoism♪」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    ブログアップどうもありがとうございました!
    サラダ音楽祭のNoism、よかったですね♪
    感動しました。

    開演時というのは何となく心が浮き立つもので、指揮者の大野さんが登場すると観客の拍手も華やかでしたが、幕開けが『FratresⅠ』なので、大野さんはそうそうにこやかな顔もせず指揮台に立たれましたね。
    続いて登壇したNoismメンバーたちは、まさに修行僧!
    私は見慣れていますが、それでも「え!?」と思う雰囲気に、客席の様子も変わり、拍手をするべきか戸惑ううちに、全員が位置につき、弦楽器の繊細な演奏が始まりました。
    あとはshinさんの書かれている通りです。
    忘我の境地にしか見えない皆さんの、祈りと自覚と集中をひしひしと感じ緊張しました。
    演者も緊張したかと思いきや、皆さん意外に気持ちよく踊られていたようで驚きました。

    足音のするフラトレスも好きですが、今回は足音が無く、スッキリして洗練された感じでした♪
    お米はやっぱり降ってほしいですね~

    次の『オベロン』序曲もとてもいい演奏でした!
    曲順いいですね♪

    そしてラフマニノフ『Sostenuto』。
    井関さんの幽体離脱が素晴らしい!
    公開リハの時から「うわっ、あの世に行ってる」と思いましたが、本番もまさしく彼岸と此岸を行き交い、思いや希望を繋げる人となっていました。
    メンバーも皆、作為の無い俳優のようで、これからますます楽しみです♪

    本当に、感動をありがとう! です。
    そして大野さん指揮、都響の皆さんの、繊細で精緻で誠実な演奏に感嘆!
    癒されるような優しさがありますね。
    観客の反応も良く、大満足で帰路に就きました♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント有難うございました。
      「誰もが音楽の楽しさを体感・表現できる音楽祭」をコンセプトとするSaLaD音楽祭にあって、
      都響×Noismの時間の濃密さには尋常でないものがありましたね。
      音楽が越境し、舞踊を伴うことで示されるのは即ち、音楽の懐の広さであり、その可能性。
      観客のみならず、演者(奏者・舞踊家)も一期一会を楽しむ好コンテンツかと。
      また次の邂逅を目撃するのが楽しみです。
      (shin)

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