あたかも鬼窟に迷い込んだかのようだった『鬼』視覚障がい者/活動支援会員対象公開リハーサル

真夏を思わせる日差しの強さに、気温がぐんぐん上昇した2022年6月25日(土)の新潟市。エアコンを効かせた車で、13時に予定されたNoism×鼓童『鬼』活動支援会員対象の公開リハーサルに向けてりゅーとぴあ・劇場を目指しました。

入場前に挨拶を交わしたいつもの面々の額は一様に汗ばんでいましたが、それでなくても、誰もがNoism×鼓童『鬼』への期待感から身体は火照って仕様がない感じだったと思います。

私は活動支援会員枠で参加しましたが、この日は初めて視覚障がい者の方たちもお招きして開催される形式の公開リハーサルでした。盲導犬をお連れの方もおられ、間近に見たお行儀の良い犬に感心したりもしました。

劇場内では視覚障がい者の方たちに最前列が割り当てられた他は、自由にどの席に座ってもよいとのことで、私は鼓童の奏者たちも視野に収められるやや後方の席を選んで腰を下ろしました。

そのときが来ると、照明も含め、ほぼ本番と同じ(だろう)『鬼』を最初から最後まで通して観ることになると知りました。両袖からゆっくり舞台上に姿を現す舞踊家たちの摺り足、衣擦れ、そうした音に耳を澄ませているところに、打音の一撃。極めてダイナミックレンジの広い演目の始まりです。

2日前のメディア向け公開リハーサルで「苦労」していた「ピタリ」タイミングの模索は既に過去のこと。舞台上には信じられないほどの一体感が出現しています。
そして太鼓の連打といい、激しい動きといい、演者の身体温度は間違いなく上昇の一途を辿っているのでしょうが、客席から観ていると、あたかも鬼窟に迷い込みでもしたかのような印象の故に、作品の表面温度は極めて低いものに感じられてしまいます。何ということでしょう。

黒と赤に、もう一色…。怪しい仄暗さのなか、鬼にまつわる新たな民話が紡がれていくのを目撃する醍醐味には、かつての『ASU -不可視への献身』を彷彿とさせるものがあるように感じました。そしてそして舞踊家の身体で可視化されていく鬼という異形。その表現には息を呑むほかありません。

そんな圧倒的な演目を最初から最後まで通して見詰めること、約40分。
本番さながらに緞帳が下りると、場内から拍手が沸き起こりました。いつもでもいつまでも。そちらも本番さながらに。
そして先刻まで踊っていた金森さんがタオルで汗を拭きながら出てくると、極めて低く感じられた作品の表面温度が錯覚に過ぎなかったことがはっきりしただけでなく、りゅーとぴあの外は激しく蒸し暑いことも思い出されました。そんな鬼窟からの生還。

「今、みなさんに『鬼』をお見せする前に、『結婚』も通しました。(演者に向かって)みんなご苦労さん」と金森さん。続けて、客席に向かって、「初日に向けて、もっともっと精度をあげていきます。楽しみにしていてください」と話すと、またまた大きな拍手が送られていました。

まだ観ぬ『お菊の結婚』と併せて、超弩級のダブルビルと言っても過言ではないでしょう。日々高まる期待に身悶えすること、それだけが公演を待つ私たちにとって唯一許された身振りである筈です。その落ち着かなさに耐えることを楽しみとしてもう数日過ごしましょう。

(shin)

「あたかも鬼窟に迷い込んだかのようだった『鬼』視覚障がい者/活動支援会員対象公開リハーサル」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    詳細どうもありがとうございました!
    大拍手!!
    本番が超楽しみです♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      この日の公開リハでは『鬼』全編を見せて貰いましたが、もっともっと精度をあげていくとしたら、本番ではまた別物のように思える筈で、ホントに鬼楽しみでなりません。
      公開リハ終了後、制作の上杉さんと少しお話しをしたところ、
      作曲の原田敬子さんも客席から観ていたとのことでしたし、
      また、鼓童の皆さんにとっては既にツアーは始まっているとのことでした。
      そんな塩梅ですから、もう直前に迫った上演までの「身悶え期間」を慈しんで過ごしたいとも思いました。
      (shin)

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