真冬の新潟市、雪に負けぬ花々の彩り - 『境界』新潟公演楽日

早くも来てしまったNoism0 / Noism1『境界』新潟公演 3 Daysの楽日、2021年12月19日(日)は、朝からの風雪。当初、天気予報では金曜、土曜あたりが降雪のピークと伝えられていたので、てっきり峠は過ぎたのかなと思っていたのですが、さにあらず。この日までずれ込んでいるというのが実際のところだった模様。(涙)
忍耐を試すかのような降り方をする雪に、しかし、50cmとか80cmとかの積雪もと言われていたのに較べれば「御の字」と気持ちを公演に切り替えて過ごしたのは私だけではなかったでしょう。圧雪状態を呈する路面をスリップしないように車を走らせるのは、ほぼ今季初でしたから、緊張感はありましたけれども。(汗)

でも、個人的には、そんな心を支えてくれたものがありました。それは『境界』新潟公演初日のサポーターズ・ブログに関するツイートを山田うんさんがコメント付きでリツイートしてくださったことでした。こちらがそのツイートです。目にした瞬間、まず、「えっ!」となって、その後、じわじわ喜びが込み上げてきました。嬉しい!ホントに!うんさん、本当に有難うございました。これからも頑張っていきます。

という訳で、新潟公演楽日についてです。この日も、もう大感動の舞台でした。

15時、その山田うんさん演出振付のNoism1『Endless Opening』から。この日も前日同様、中尾洸太さんは怪我で出演せず、横山ひかりさんが代役を務めました。「怪我の功名」ということもあります。中尾さんには東京公演までに良くなって、悔しさをぶつけて踊って頂きたいですし、全力で溌剌と踊っていた横山さんにはこれを機により自信を深めて頂きたいと思いました。越境に期待致します。
また、坪田光さんの身のこなしの繊細さ、樋浦瞳(あきら)さんの踊りが発する伸びやかな朗らかさにも触れておきたいと思います。

走って、跳ねて、回転して、ゆらゆらして、緩においても、急にあっても、その全身から踊ることの情熱を、喜びを、苦悩を、覚悟を迸らせて、微笑んで咲き誇る花々と化した3公演10人の全員に大きな拍手を贈りたいと思います。休む間もなく、音楽と一体化して踊るかなり苦しい作品かとは思いますが、いつまでも観ていたかった…。音楽が聞こえなくなってしまっても。少し馴染みを覚え始めたうんさんの舞踊語彙に酔い続けていたかった、いつまでも…。そんな思い。

終演後、一列に並んだ、この日の9人に大きな拍手が贈られたことは言うまでもありません。最前列のスタンディングオベーションに頬を緩めたメンバーもいました。そこまで含めて、凍てつくこの日の新潟市に華やぎをもたらしてくれた、とても爽やかな舞台だったと思います。

そしてこれまで通り、20分のインターミッションを挟むと、がらり質を異にする時間、金森さん演出振付のNoism0『Near Far Here』です。冒頭から終演まで、透徹した美意識に貫かれたこの作品は、その美しさにおいて、心胆を寒からしめるものがあるとでも言わずにはいられないものがある、そう書きたいと思います。実はこの表現、初日のブログに一旦使ってはみたのですが、やはり「相手を心から恐れさせる」意はどうかと思い、削ってしまった表現なのです。(書き改める迄の、ほんの短い間に目にされた方もおられるかと思います。)「畏怖」の念というよりは「恐ろしさ」、そう、3日続けて、容赦なく捻じ伏せられた感覚はやはり純粋に「恐ろしさ」こそが似つかわしいと、敢えて新潟楽日に書くことを選んだ表現。そこには私自身の語彙の限界(「境界」)が画されていることを思い知らされつつも、しかし、今、体感としては心胆を寒からしめられたと言うほかなしと。美しさと恐ろしさとは隣り合わせで認識され得る感覚なのですね。

そしてラスト、見詰める両目から入って、一瞬にして全身を浸してしまう、夢幻の体感はまさに悦楽。その想像力と創造力たるや、この日も、到底、人間業とは思えないほどでした。いや、大袈裟ではなく。参りました、金森さん。

サポーターズ・インフォメーション5号・裏面

様々な越境に満ちたNoism0 / Noism1『境界』。新潟公演は、その幕を下ろしましたが、今度はばっちりクリスマス期の東京に舞台を移し、そこでも多くの観客を魅了することでしょう。『Endless Opening』と『Near Far Here』、あなたの人生に嵌入する「事件」が起こります。その「多幸感」、是非、ご体感ください!

(shin)

「真冬の新潟市、雪に負けぬ花々の彩り - 『境界』新潟公演楽日」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    新潟公演楽日のブログありがとうございました!
    Noism1、Noism0、素晴らしかったですね!!
    観客の皆さん一人ひとりに様々な思いが去来したことと思います。

    私は3日目にしてようやく落ち着いて見ることができてきました(昨日までは茫然自失)。
    Noism1の皆さんは微笑んでいるのです♪
    もちろん初日から微笑んでいましたが、特に今日は踊る歓びが強く感じられ、更に幸せな気持ちになりました♪

    そして山田うんさんのツイート、うれしいですね!
    shinさんの苦労の賜物ですね!

    そしてそして、感受性豊かなshinさんの「心胆を寒からしめた」Noism0『Near Far Here』。
    「美しさと恐ろしさは隣り合わせ」その通り!
    「参りました、金森さん。」同感です。
    (私としましては「参りました、shinさん。」もあります。)

    目が覚めるようなラストは驚きですが、鎮魂の思いを静かに受けとめ、共に祈りを捧げたいと思いました。

    様々な意匠がこめられている二つの「境界」。
    素晴らしい舞台に感謝しています。
    東京公演、高知公演、どうぞご覧ください。
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント、有難うございました。
      3日間、本当に圧倒され続けでしたよね、正直なところ。
      どちらの作品も心の中で永く愛でることができるのが嬉しいという。

      evergreenな祝祭感溢れる山田うんさん×Noism1の『Endless Opening』。タイトルが暗示する通り、それは生と死の「境界」、その狭間で、一旦踊り出したなら、音楽が止んでも踊り続けんとする(ある種、『赤い靴』にも似た)覚悟を以て踊りにフォーカスすることで、常に「はじまり」の瑞々しさを謳歌し得ることを可視化し、(それはそのまま、観客一人ひとりの営みと等価であることに他ならず、)私たちを爽やかに鼓舞するものでした。

      一方、金森さん演出振付のNoism0『Near Far Here』。舞踊そのものの「境界」への挑戦のようにも思える本作は、同時に『Liebestod-愛の死』(Noism1)や『夏の名残のバラ』(Noism0)の系譜を汲むもので、踊りは勿論、舞台装置を含めて具現化された美意識が、観る者を一瞬にして、圧倒的な時空の虜にし、或いは、その心を連れ去ってしまうような「総合芸術」の趣を有するものでした。彼岸と此岸の「境界」を行き来することで、どちらともつかない「間(あわい)」が見事に体感されるに至りましたし、恐ろしいまでの慈しみに溢れていたように思いました。

      こんな豪華なふたつの贈り物、是非、多くの人と共有したいものですよね。東京、そして高知の方々、否、観られる条件を有するあらゆる場所のあらゆる方々、この公演、必見ですから。
      (shin)

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