『境界』新潟公演2日目 - 想像力/創造力で遠くへ連れて行ってくれるクリエイターが近くにいること

2021年12月18日(土)17時、この日も至極当たり前のことのように、Noism0 / Noism1 『境界』新潟公演2日目の舞台に臨みました。

ホワイエに入ってみると、「ちょっとこれ見て」と教えてくれる友人がいて、目にしたのがこちら。この日の公演、Noism1の中尾洸太さんが怪我で出演されないということを知りました。

中尾さん、昨日、初日の舞台も怪我を押して出ていた模様です。心配していたところ、2階客席の最上段付近にお姿を認めましたので、お声掛けしたところ、笑顔で対して貰いました。幸い重傷ではない様子。一日も早い回復をお祈りします。

代役はNoism1準メンバーの横山ひかりさん。地元・新潟出身の方で、公開リハーサルの際、舞台上手(かみて)側、直近の場所から、真剣に舞台上に目をやる姿が印象に残っています。舞台で踊る姿はこの日初めて観ることになります。

やはり、舞台は「生もの」なのですね。私事で恐縮ですが、これを書いている私もこの日はアレルギーからか、右目のあたりが腫れて調子がよくありません。踊れるか/踊れないか。観られるか/観られないか。演者にとっても、観客にとっても、その日の舞台公演が「成立」するか否かは当然のことの範疇にはない訳です。有難いことと再認識しました。

山田うんさん×Noism1『Endless Opening』、冒頭から途中までは前日よりひとり少ない8人のメンバーが踊りました。振付や出番の変更もあったのでしょうが、まだ2回目でしたので、詳細はわかりませんでした。しかし、この日は前日の硬さがとれて、滑らかな印象。オフバランスの美しさに浸りました。

印象的なアイテム、台車のシーンからラストまでが横山さんを含む9人で踊られました。期せずしてのNoismデビューとなった横山さん、メンバー写真で観ていただけでしたが、小さな(と言って良いかと思われますが、)身体をフルに使って、他の8人に食い込んでいく赤い衣裳に、「頑張れ」との思いも抱きました。

山田うんさんのこちらの作品では、見やすいところで言えば、まず、性別の「境界」を廃棄していく、越境が挙げられようかと思います。女性性や男性性を超え出るかたちで目指された中性的な身体の躍動が見ものかと。激しく踊り通されるのに、爽やかな印象を残すのも宜(むべ)なるかなといったところでしょうか。花々と涼風を観る思いが致します。

20分の休憩を挟み、金森さん演出振付のNoism0『Near Far Here』。或る効果音が耳に届き、緞帳があがっても、暗い舞台。そこに浮かび上がる井関さん。私は『夜叉ヶ池』(篠田正浩監督作品・1979)坂東玉三郎のビジュアルを想起しますが、瞬時にして、休憩前とは別の時空に引っ張り出されたことを知らされるオープニングです。

そこからはもう手練れの3人による達人芸の世界。バロックの「歪な真珠」感も手伝って、当たり前の日常との「境界」を越え出た、非現実感が極まる時空は重厚感を備えたものです。もう圧倒的な想像力と創造力とで遠くへ連れ出される観客。その点で言えば、観客は舞台が発する途方もない引力に惹き込まれながらも、舞台と客席の「境界」を意識させられる部分もある筈です。

しかし、金森さんの演出が最も冴えるのは、パフォーマンスが否応なしにもたざるを得ない時間的な「境界」を曖昧化しつつ、同時に、舞台上と客席の「境界」さえ破棄してしまうラストの斬新さにあるのでしょうが、ここではこれ以上書けません。是非、ご自身でご体感ください。

想像力/創造力で観る者を限りなく遠くへ連れて行ってくれるクリエイターが近くにいること、そしてそのアートが身近な「ここ」から世界に向けて放たれること、その豊かさを実感した『境界』新潟公演2日目でした。

本日、新潟公演は楽日を迎えます。現在、雪が舞う新潟市界隈ですが、観る者の心に永く、爽やかな、或いは馥郁たる「花」を残すNoism0 / Noism1『境界』、お見逃しなく!

【追記】
この度の公演に合わせまして、私どもサポーターズUnofficialは「Information #5」を作成し、入場時、各種チラシと一緒にお手許にお届けしております。ご鑑賞前、ご鑑賞後、ご覧いただくことで、Noismをより身近に感じて頂けたらと思います。是非、お楽しみください。
また、私どもサポーターズは随時ご入会を受け付けております。そちらもご検討頂けましたら幸いです。

サポーターズ・インフォメーション5号・表面

(shin)

「『境界』新潟公演2日目 - 想像力/創造力で遠くへ連れて行ってくれるクリエイターが近くにいること」への4件のフィードバック

  1. Shinさん

    ネタバレなしでも、舞台の素晴らしさを感じることが出来るレポをありがとうございます✨
    体調がすぐれないなか、こうして届けてくれることに感謝しておりますm(__)m✨✨✨
    新潟は、本格的に雪景色となってきましたね。
    明日からの日常には辛い雪すらもNoismの舞台を観た後には、美しい舞台の余韻をもたらしてくれるような気がします。

    aco

  2. aco さま
    コメント、有難うございました。
    並びにお気遣いにも感謝致します。
    「2日目ブログ」はいつもなかなかに書きづらいところもあるのですが、踊れること、観られることの「有難さ」にフォーカスする気持ちでなんとか書けたように思います。
    ネタバレしていませんよね。大丈夫ですよね。
    これからご覧になられる方、是非、ふたつの作品世界をそれぞれご堪能ください。
    acoさんが書いてくれたように、新潟市は、公演楽日を迎えて、本格的な雪到来となりました。
    皆さま、是非、時間に余裕をもったうえで、温かくしてお運びください。「多幸感」に満たされる時間が約束されていますから。
    (shin)

  3. shinさま
    右目、大丈夫ですか?
    具合が悪いのにブログアップありがとうございました。
    中尾さんも心配ですね。
    お二人とも早く良くなられますように。

    そして代役の横山ひかりさんですが、小柄ながら力強い動きで、全く見劣りせず驚きました!
    山田うんさんの『Endless Opening』はとても軽やかな踊りで、観ている方は心地よいのですが、踊る方はなかなかハードですよね。
    しかもハードさを感じさせないので、ますますハードなのでは。
    Noism1の皆さん、がんばってください!

    そしてNoism0は、なんというか、圧倒的です。
    冒頭の井関さん、shinさんは『夜叉ヶ池』を想起されたそうですが、私はマリア像というか、細川ガラシャというか・・・
    舞台装置・美術も素晴らしくて目を見張ります。
    そして最後のシーンは信じられませんよね。

    どちらの作品もshinさんが書かれたように 想像力/創造力で遠くへ連れて行ってくれて幸せ過ぎです。
    今日は新潟公演最終日、約束された「多幸感」に浸りに参ります。
    皆さま、劇場でお会いしましょう♪
    (fullmoon)

  4. fullmoon さま
    コメント、有難うございました。
    新潟公演楽日のブログ記事にも書いたのですが、山田うんさんがわざわざtwitterでサポーターズ・ブログに言及してくださったりして、なんとか頑張って書いてきた甲斐がありました。その内容も本当に嬉しいものですよね、サポーターズとして。
    楽日の本日、お見かけしたらお礼かたがたご挨拶したかったところでしたが、お姿が見られず残念でした。いつの日か実現したいと思います。
    そして私に関しては、今日は昨日に較べて、右目まわりは少し良くなりました。中尾さんの早期の快癒をお祈りします。
    横山さんの奮闘振りは目に刻まれました。これからの彼女、期待大ですね。
    (shin)

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