柳都会vol.23 山田うん×金森穣【対談】レポート

2021年3月7日の「柳都会」後半は、会場や金森さんからの質問にこたえ、さらに山田さんのトークが続きました。

質問/東村山のワークショップ(以下WS)の内容はどのようなもの?
45分、2クラスで即興などの内容。重度障害で踊れる人は少ない。もし、じっとうずくまっていても”踊っている”という認識でいる。音楽は、歌謡曲、クラシック、ロック、いろいろなジャンルのものを流す。偏るとストレスになってしまう。
毎回必ずやることは「WAになっておどろう」で、となりの人と手をつなぐ。「線路は続くよどこまでも」で、前の人の肩に手を置いて列になる。最後に床にねころんでクールダウン。身体を動かすと興奮状態になるため、そののままだと施設に迷惑がかかってしまう。背がまるまったままの人もいるので2-3分かけて寝転び、5分寝転んで、また2-3分かけて起きる。
質問/施設でのWSは、始めた頃は大変だったのでは?
ふだんは歩けないようなおじいちゃんが、スーダラ節が流れたら立ちあがって踊りだした。私達は喜んだけれど、施設の職員さんからは、心臓に負担がかかるのに!と怒られた。
ただ、施設によっては、ここで死んでしまってもいいからやってください(真剣な表情を再現する山田さん)、と言われることも。担当する人によって、どこまで許容しているかは違う。

金森/プロジェクトごとにオーディションをしている?
初期はプロジェクト毎にオーディションをしていた。集団を維持していくのは大変。今のメンバーは4期〜8期の経験者がいる。それぞれバイトをして、プロジェクト毎に集まる。アベンジャーズみたいな感じ、いろいろな人がいた方がいい。
東村山は毎週行っている、WSが多いのでメンバーには「行ってみる?」と問いかける。温度差はあるが押し付けはしない。
決まった稽古場がないことについては、東京のカンパニーはみんなそうだが、毎回違う公民館で練習している。稽古場を間違えて遅れることがよくある。私も間違える。アクティングエリアの確保は難しい。
東京のカンパニーの中での特色はなに?
最近、豊橋とかでレジデンスをやりはじめている。他のカンパニーは自らは合宿していない。差はわかりませんね。
ダンスとのかかわりについては?
OLをやっていた時もある。踊りは、盆踊り、器械体操、モダンバレエをやっていた。80年代の外国の公演をいろいろ見て面白くなった。全国の盆踊りや神楽を調べている。
新潟でも誰かやっていなかったっけ?
堀川久子さんですね、お会いしました。
昔、アスベスト館で笠井叡さんや舞踏を見た。日本の土着的なものに惹かれていた。宙返りはできてもプリエはできない。そこをつなぐヒントになるかと、自分のスタイルを立ち上げるために舞踏を3年(20歳〜30前位)した。スタッフワークをやっていた時期もあり、照明もできる。
会社は20歳くらいでやめた。バブル崩壊期の証券会社にいたので、入社してから謝ってばかりだった。(大変申し訳ございませんでした……と真剣に謝ってみせる山田さん。笑いが起こる会場)
やはり、お金と芸術について考える。OLをやめてアートに携わった。90年代に横浜の小劇場で制作をしていた。セッションハウス、それからパークタワーで若手を応援し育てようと、振付をはじめた。
Noismもパークタワーから活動開始してるんだよね。
2000年に、もう最後かなと思って横浜ダンスコレクションに出演したら、受賞した。そこから渡仏した。踊る側でなく、振付をしたかった。お金とか制作とか、斜めから俯瞰して見ていたい。
カンパニーを持って、プロジェクトベースで人を集めているけれど、作品ごとに個性があるし、すごい才能を集めたくはならない?
カンパニーを固定することをイメージできない。舞踊は時間がかかる。3年に一度オーディションはする。最低3年、身体、精神、神経をつかいながら、一緒に作っていく。立ち上がっていくものが伝達されるので、例えばここで宙返りができる人がほしい、という気持ちはない。
「コスモス」はダンサーが結構作っている。作ったピースを細かく監修している。
「コスモス」の群舞はアクティングエリアが広いけど、どこで作った?
群舞や万国旗が出てくるところは、水天宮ピットで作った。広いスペースがある。
公民館で机を動かしたりしてると怒られる。家にも稽古場があり、ベッドを入れてピースを作った。作品のコンセプトとして作り方を決めていた。
「春の祭典」ではテクニックの伝達について触れたが、メソッドはあるの?
バレエとバーレッスン、裸足が基本。身体をスパイラルに捻るというバレエの要素は要る。あとは、阿波踊り、筋トレ、即興、ヨガ、時期によって違う。
いろいろしているけれど、拠り所は? 何かを上達させるとか?
ヨガ、バレエ、週1で阿波踊りをやりたい。床を踏む時に、指のどこを意識するかとか。
場所と時間が与えられたら、毎日クラスをやりたい。
専属の声がかかればやる?
やります。
専属になると、今のような活動がやりづらくなることはない?
やりづらくなるかな……?
WSの時、ダンサーと向き合うのではなく、参加者と向き合って、ダンサーと横で肩を並べている時に幸せを感じる。時間をシェアしている感覚。
振付を作るのと、覚えるのとは違う。私が振付を覚えていると時間ぎれになってしまう。

質問/カンパニーに入る条件はどんなもの?
新作メンバー募集の時は、即興、面接などで決める。
カンパニーのメンバーになると、自然にWSに駆り出される。いやならいいけど、興味があれば行ってみない?と一人ひとりに声掛けをする。
作品のコンセプトは自分が作る。動きをつくる時は「コスモス」なら、ベッドを置いて、2人のダンサーに、どうぞ!……と、結構自由にやる。やってみてスパイスを加える感じ。神経を使うところもあり、ホスピタルでなくホスピスと限定したりする。
質問/WSをする小学校や障害者施設は見学できる? アート、教育、医療、地域、親、文化政策、財源、自治体など関連すると思うが?
学校による。見られることがストレスになる場合もある。教育関係や親はokしている。7年くらいWSをしていた神奈川は見学ok、宮城もok。障害者施設もコロナ前はokだったが、コロナ後は全部だめになった。
見学といってもオープンにはしているわけではなく、直接連絡をくれたり、どの人かわかるつながりがあれば問題ない。
質問/山田さんにとってダンスとは?
芸術だけではない。傷つけることもあるし、一言では言えない。
欲張りなので、ダンスが活動につながるというか、いろいろな切符を持っている要素だと思う、ITやレストランでの活動につながったりもする。ダンスは誰でもできると思ってしまう。

金森/誰でもできるなら、なぜオーディションをするの?
それは、誰とでも結婚できるかといえばそうではないような事。ダンサーは私自身のスピリットを注げる人。ダンスは万人のものだし、クラブ、盆踊り、舞台と様々ある。仲間内で踊る、制約のある中でアートとしてのダンス、路上で踊るとか、小学生の中にいても踊ればこちらを見てくれる。踊りを立ち上げていけば、魔法使いのようになる。
アカデミックにダンスをやってきていないので、可能性、裾野が広がっているように感じる。
さっき「春の祭典」のくだりで”教育”という言葉が出たけれど?
空間に対して身体をどう使うか。要素が足りない、弱い、似ているけどそうじゃないことがある。誰のものでもあるダンスから、そこまでは自発的に出てこない。
その部分についてはどう処理するの?
処理しない。判断を保留しておくと、10年くらい経って解けたりする。じっとしていたいと思う部分との葛藤と矛盾がエネルギーになる。

質問/山田さんと金森さんは初対面? Noismについてどう思う?
面識はあったけれど、こうして話すのは初めて。
Noismは圧倒的。最初から最後まで隙がない印象。ばーん!というイメージで、気持ちがいい。自分の作品は、愛嬌、そばかす、ほころびみたいな、真逆のテイストがある。Noismの作品には厳しさを感じるので、どう作るんだろうと思っている。
新潟市にこんなカンパニーがあるなんて、専属舞踊団があること、そんなことが日本で起こる時代がくるなんて夢のよう。舞踊団がある新潟市が続いてほしい。
舞踊や芸術について、いま横にレンギョウがあるけれど、これはなくてもいいもの。でも、あったほうがいいし、好きになれる。Noismがあるから新潟がいいという人がたくさんいると思う。

金森/うんさんが専属をやれるならやりたいと言っていたことは意外だった。でも本気で時間と場所が欲しいと言っているし、そうなったら相互にノウハウを学び共有して、Noismと情報交換をしながら発展していくという妄想が広がってくる

山田さんのお話は多岐に渡り、とても時間が足りないようでした。ポジティビティに満ちた、密度の濃いなひとときでした。
発言にペンが追いつかなかった部分もあり、ニュアンスが異なる点もあるかと思います。ともあれ、そばかすが紛れ込んだような解像度ながら、現場の雰囲気を感じていただければ幸いです。(のい)

「柳都会vol.23 山田うん×金森穣【対談】レポート」への4件のフィードバック

  1. のい さま
    先日のレクチャー・レポに続き、
    今回の対談レポ、詳細を伝える内容に感謝です。
    そばかすまで映してしまう4K、8Kのような高解像度のレポを前に、行けなかった無念さもどこへやら、
    会場に広がった楽しい雰囲気まで伝わってきて、
    まるでその場に居合わせたかのように読みました。
    どうも有難うございました。
    そしてご苦労様でした。
    (shin)

    1. shinさま
      ありがとうございます。
      毎回ゲストによって雰囲気が違うものの、得るものが多いですね。メモを見ながらいろいろ反芻していました。
      森さんの時もそうでしたが、カンパニーを相対化して見れるイベントというのは面白いですね。

  2. のいさま shinさま
    ありがとうございました!
    「コスモス」公演を観ただけでは、山田うんさんの考え方やお人柄はわかりません。
    柳都会でのお話は、とても面白く楽しく、興味深かったです。
    詳細を再現してくれた のいさんに感謝!
    (fullmoon)

    1. fullmoonさま
      本当に、山田さんの考え方とか方向性がうかがい知れてよかったです。
      「コスモス」を見た時は、21世紀だというのに万国旗が無邪気に出てくるんだなあと感じたのですが、お話を聞いてたらなんかいいかもしれない……と思うに至りました。

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