「とまどうしあわせ」(サポーター 公演感想)

☆『シネマトダンス-3つの小品』(『森優貴/金森穣 Double Bill』より)

「Noism Company Niigata」と名称が改まって最初の公演は『森優貴/金森穣 Double Bill』。金森さん演出振付の『シネマトダンス-3つの小品』は約40分、3作品で構成されている。

『クロノスカイロス1』。ピンクの衣装をまとった10人のダンサーが、カラフルな照明に彩られた舞台で縦横無尽に躍動する。奥のスクリーンには、ダンサーの姿やデジタル表示の時間が映り、消え、また映る。生身と映像は一体のようで別人のようで、頭がかすかに混乱する。時間は誰にも同じように流れるというけれど、1分、1秒、コンマ1秒、若いダンサーたちが刻む時間の輝きは格別だ。

『クロノスカイロス1』
Photo:Kishin Shinoyama

『夏の名残のバラ』は懐かしいポスターが貼られた楽屋の映像からはじまる。赤い衣裳の井関さんが準備を整え、階段を上がり、そして、現実の舞台に姿をあらわす。山田さんが持つカメラは井関さんを追い、客席からは見えない角度でスクリーンに投影し、視線を惑わせる。次第に、山田さんは撮影者から相手役に変わり、「お前をひとり残しはしない」という詩の言葉のように寄り添い、踊る。2人が紡ぐ時間は深く愁いをおびて心に響く。やがて、映像は(一部または全てが)リアルタイムのものではない(であろう)ことが示され、ひとときまじりあいせめぎあった過去と現在は、ともに静かに消えていった。

『夏の名残のバラ』
Photo:Kishin Shinoyama

『FratresⅡ』。個の集合が美しかった『Ⅰ』から、金森さん1人が抜け出たように踊る。鋭く優雅な動きに惹きこまれながら、孤独をはらんだ圧倒的な厳しさに突き放され、心が定まらない。背後に浮かびあがるとらえどころのない影は、観客のたじろぎも映し出していたのだろうか。

『Fratres II』
Photo:Kishin Shinoyama

何か月も劇場から遠ざけられ、個室で小さな画面と向き合うことしかできない今。生の身体と映像の双方に心を魅入られ揺さぶられた『シネマトダンス』の空間と時間がいかに幸福に満ちていたか、いとおしくさびしく思い出している。

(うどん)

「「とまどうしあわせ」(サポーター 公演感想)」への4件のフィードバック

  1. うどん さま
    素敵なご感想、どうも有難うございました。
    読み進めるだけで、再びあのときの客席に召喚されるようで、
    目にも耳にも、そして肌にも、あの舞台に向き合った生々しい感覚が蘇ってきました。
    大きな舞台に、満員の観客。
    そうした「当たり前だった光景」が戻ってくることを心から願うものです。

    皆さま
    本来、このご感想は、次の公演時に紙媒体「サポーターズインフォメーション」第3号を発行し、そこに掲載する予定だったものです。
    しかし、プレビュー公演は本公演ではありませんし、
    ご覧になれる人数も限られるだろうという見込みもあり、
    今回は、紙媒体の発行を見送り、
    ウェブにてご紹介するかたちをとらせて頂きました。
    ご了承ください。

    この後、「森優貴/金森穣Double Bill」に関しましては、
    もう2本の感想を掲載する予定です。
    そちらもどうぞお楽しみに、ということで。
    (shin)

  2. shinさま、fullmoonさま、ありがとうございます。
    素敵な写真と一緒に掲載していただいて嬉しいです。
    一日も早く生の舞台を見られるよう、祈るばかりです。

  3. うどんさま
    コメントうれしいです♪
    ありがとうございます!
    ナマ・プレビュー公演、ぜひご覧くださいね。
    (fullmoon)

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