「皆さんのお陰でいい舞台になった」(山田さん)の言葉で終演♪『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』

2023年4月23日(日)、前日に幕が開いた『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』ですが、2日間の日程のため、早くもこの日、終演を迎えることになりました。開演時間は15:00。りゅーとぴあ界隈は同時刻に他のイヴェントも重なっていたため、早くからNoism公式が駐車場の混雑予想を発していたほど。車を駐めるのにやきもきした方も多かったのではないでしょうか。

かく言う私ははじめからりゅーとぴあ駐車場を諦めて、近隣の駐車場狙いで動き、りゅーとぴあへ向かう道すがら、The Coffee Tableさんでカフェラテを求めて、美味しく「暖」を得ながら歩いたような案配でした。そうです。この日もくっきり晴れてはいたのですが、風が冷たい一日だったのです。

カフェラテを飲みきる頃には、既に開場時間となっており、あの作品たちにもう一度向き合う準備を自分のなかで徐々に徐々に進めていきました。チケットを切って貰ってホワイエに進むと、まず目に飛び込んできたのが物販コーナーに立つ庄島姉妹の姿であり、そこで振り返ると今度はプログラムの展示コーナーには三好さんと横山さんの姿を認めることになりました。なんと豪華なスタッフであることでしょう!そのまま放置できる筈もなく、お願いして写真を撮らせていただきました。多幸感、多幸感♪どうも有難うございました。

そんなこんなで開演時間を迎えて、この日も前日同様、『Noism1メンバー振付公演2023』から幕があがりました。それからの4作品について、前回のブログには書けなかった事柄を思い付くままに記録しておこうと思います。

糸川祐希さん振付作品『Ananta』。「円環」を意識させる端正な印象の作品。斜めにかぶいて立つ姿がいつまでも残像として残り、傾いた身体の軸を上方に伸ばしてみると、幻視される直線上の一点で交わることになる身体ポジションの把捉も影響あるかと。ラストの暗転直前、互いに視線を交わらせる様子にもグッとくるものが。

坪田光さん振付作品『あなたへ』。最初は繰り出されるビートに乗って、やがて、祈りにも聞こえる不鮮明な人声のなか、自らの身体を差し出す舞踊家ひとり。天とおぼしき上方から、そして正面方向から受け取った何かをその身に入れてなおも差し出す。そうして見出されるだろう自分にとっての真実を手にせんがため。

樋浦瞳さん振付作品『器』。前回も書いた斜めのアクティング・ラインへの拘りを再確認。コッポラ『地獄の黙示録』のヘリのプロペラ音にも似て、デフォルメされた回転系のノイズのなか、時折、周期的に現れる金属開閉時のようなノイズにおののきつつも「今」に向き合うふたり(或いは「2匹」)、休む間もなく。

中尾洸太さん振付作品『自転・公転』。弦とピアノのゆるやかな楽音のなか、ひとりがいまひとりに見捨てられて踊る。次いで、もうひとりの側でもその同じ状況が反復される。そこを経過したのち、二者の関係性は更新され、自らを超え出たその先で、相手を見出して、新たな関係性と邂逅し、刷新されたひとりとひとり。

…そんな事柄を、私は感じました。ご覧になられたあなたはどう感じましたか。コメント欄にてお書きいただけましたら嬉しく思います。いずれにしましても、四者四様の刺激に満ちた作品たちだったと感じました。

そこから、15分間の休憩を挟んで、ほぼ16:00、後半の『Noism2定期公演vol.14』部へと移行していきました。初日ブログのコメント欄にて、fullmoonさんが正しく指摘してくださった、金森さんの振付の「強靭さ」に改めて打たれることになりました。集められたピース、その一つひとつの魅力的なことといったら!でも、その「進行」或いは「展開」は前回のブログをご覧いただくこととして、今回は詳細には立ち入らないでおきます。

但し、どうしても書かねばならぬことがあります。22時間前の(前日の)パフォーマンス(そしてそれ自体は全然悪いものではなかったのですが、)からみて、圧倒的な訴求力を加えて踊られていったということを特筆しておかなければならないでしょう。わずか22時間を隔てて、ほんの一度、舞台上で踊ったことで手にした自信と確信を身中に、「今のこのときを逃してなるものか!」とばかり、それぞれのその可能性を押し広げんと、それぞれに未踏の領域に踏み込んで踊ってみせたのが、この日のNoism2のメンバー9人だったと言わねばなりますまい。ラストの『クロノスカイロス1』を踊り終え、いまだ息の荒い9人(とNoism1メンバー4人)に対して繰り返されたカーテンコール、その度毎に、スタンディングオベーションの人数が増えていったのです。その場面、客席と舞台の間に生じ、やがて〈劇場〉内を覆い尽くすに至ったもの。9人の献身の果てにもたらされた非日常の感動、それに浸ることの幸福感。恐らく、舞踊家も観客も誰ひとりとしてこの日、このとき、それぞれの心が示した振幅の大きさを忘れることはないでしょう。確信をもってそう言い切りたいと思います。涙腺直撃の、素晴らしい2日目の(最終)公演でした。

その後はやはり前日と同様、アフタートークが持たれました。その際のやりとりについてもかいつまんで簡潔にご紹介しましょう。この日は質問シートが多く、それに基づいてのアフタートークでした。

Q01: Noism2は現在、メンバーは女性だけ。難しいことは?
 -浅海さん:
 「組みもの」など、男性がいて初めてできる表現もあるので、そこは淋しい。常に募集している。

Q02: Noism2からNoism1にあがるときの変化はどんなものか?
 -糸川さん:
 (金森)穣さんとのクリエイションが出来ることが一番大きい。
 -坪田さん: 出来ること自体はNoism2のときから変わらない。Noism2だったときも学ぼうと思えば学べると思っていた。
 -山田さん: やはり環境が異なる。本人が意識していなくても変わっていることもある。

Q03: 【山田さんと浅海さんに対して】それぞれの振付作品をみた感想は?
 -浅海さん:
 それぞれの性格がそのまま作品に出ていると思った。
   糸川さん作品は、動きの組み合わせ、音楽の選び方、4人の配置。
   坪田さん作品は、そのまんま勢いよく踊って表現していた。
   樋浦さん作品は、彼が描く絵と似ていると思った。
    ちょっとジブリのような。水の流れというより水の泡のような。
   中尾さん作品は、動き、流れ、構成、良さが詰まっていた。
    振りをつくるのがしっかり見えていて良いなと思った。
 -山田さん: みんな一緒で、自分の問題意識から出発して、社会や世界へと問題意識を広げていけるといいと思う。よく出来ていた。次、何をするのか気になる。

Q04: 「タイトル」の理由は?
 -糸川さん:
 「アナンタ」とはサンスクリット語で「永遠」、そしてインド神話では原初の蛇にして神。まず、音楽から決めて広げていったとき、途中で「永遠」への疑問が湧いた。
 -坪田さん: 「あなたへ」。年配の人は誰しも迷いがあっただろうし、懐メロみたいだったり、若い人には今はつらいかもしれないが、先に光があるかもとか、応援ソングみたいだったり。未来の「自分」にむけた手紙のような作品をと。
 -樋浦さん: 「器」。入れ物に対して、入るものがあり、出ていくけれど、残るものがある。身体は器だなと。過ぎていくことで悲しいこともあるが、中に入れて変化していく器としての身体を思った。
 -中尾さん: 「自転・公転」。人間関係の比喩が一番大きい。外からみれば、変わらず回っているが、中のことはわからない。一生変わらない世界線、軌道を舞台上に載せてみたらどうなるかなぁと思った。

Q05: 女性メンバーは「振付」はしないのか?
 -山田さん:
 予定段階では女性メンバーもいた。是非、今度はやって欲しい。

Q06: 【山田さんと浅海さんに対して】昨日から今日にかけて、メンバーにどう声を掛けたか?
 -浅海さん:
 何も声は掛けてない気がする。
 -山田さん: 今日の本番前、見詰め合っているのを目撃した。
 -浅海さん: 舞台に出るとき、「いってらっしゃい」って言う。
 -山田さん: 直前に声を掛けるのは難しい。でも何か言っておきたいと思って、昨日は「これが最後だと思ってやって欲しい」と言い、今日は今日で「昨日から今日、自動的に踊れる訳ではない。初演のつもりでやって欲しい」と言った。

…と、まあそんな感じでしたでしょうか。で、アフタートークの最後に山田さん、『領域』の公演チラシを手に、明日明後日からダンスカンパニーカレイドスコープを主宰する二見一幸さんと一緒のクリエイションが始まる予定だと話し、続けて、同公演では浅海さんも久し振りに踊ると言ったところで、場内から大きな拍手が起こりました。見られるのですね、浅海さんの踊り。嬉しいです。

で、山田さん、最後の最後、客席に向かってこう言って締め括ってくださいました。「(公演が終わってしまい、)ちょっと淋しいですが、皆さんのお陰でいい舞台になりました。どうも有難うございました」と。しかし、それはこちらの台詞です。「振付家・舞踊家をはじめ、今公演に関わった皆さん、どうも有難うございました。そしてお疲れ様でした」と心より。

大きな感動(と同時に、小さくはない淋しさ)を胸に帰路につきましたが、それ故、ホントに次回の公演が楽しみでなりません。そうですよね、皆さん。ではまた公演会場でお会いしましょう。今日のところはこのへんで。

(shin)

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』初日を観てきました♪

陽は差しているのに肌寒い2023年4月22日(土)の新潟市でしたが、夕刻のりゅーとぴあ〈劇場〉だけは、舞踊家と振付家の情熱が身体の発する熱となって客席に届き、観る者も全員、それに呼応して熱い眼差しを注ぎ返す空間と化し、そこだけ周囲より高温となる「ヒートアイランド現象」が出来してでもいるかのようでした。その「熱源」の正体は、言うまでもなく、「挑戦」の2文字が相応しい公演『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』に他なりません。

開場時間の16:30になり、ホワイエに進むと、この度のNoism2定期公演に取り上げられたNoismレパートリーに関するポスターやプログラムの展示があったほか、設置されたモニターには過去の舞台動画が流されていて、訪れた者の足を止める仕掛けが幾重にも施されていました。それはまさしくNoismの歩みを概観させると同時に、重ねられた年月に相応しい華のあるレイアウトだったと思います。

やがて開演時間の17:00が迫り、客席に降りていきました。まずは『Noism1メンバー振付公演2023』からのスタートです。
客電が落ちた後、黒い緞帳に白い文字で作品タイトルに加えて、演出振付家と出演者の名が暫し投影されると、その緞帳もあがって…、というのが作品毎に4度あり、4人の若き振付家の作品を観ました。

皮切りは、糸川祐希さんの『Ananta』(出演:兼述育見さん、土屋景衣子さん、渡部梨乃さん、太田菜月さん)。「アナンタ」とは、インド神話に登場する地底界の最深部にて世界を支える原初の蛇で、自らの尾をくわえて輪のかたちになっており、「無際限」や「永遠」を象徴する存在(蛇神)なのだそう。プログラムには「『ウロボロスの蛇』のよう」とあります。寒々しい風の音を思わせる坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』のテーマのなか、歩み出た4人。その後、Alva Notoの(否が応でも、『R.O.O.M.』を思い起こさせる)途切れ途切れのノイズの間に細切れのように踊る、身体性を前面に打ち出したソリッドな作品と言えようかと思います。

次いで、坪田光さん自作自演、単独で踊る『あなたへ』。自らの身体ひとつで全てを引き受けて立とうとし、孤独のうちに内心の苦悩に向き合い、迷いながらも、自らにとっての真実を求めて身を捧げんとする一途さに溢れた作品と受け取りました。

3番目は樋浦瞳さんの『器』(出演:樋浦瞳さん、兼述育見さん)。ふたりの息はぴったりなのですが、終始、上手(かみて)奥から下手(しもて)手前への斜めのラインを使って、殆ど客席に正対することなしに踊っていくため、ついぞ、安定を見ることなく、現在が不断に更新されていくかのような印象の作品です。(それが方法的なものなのか、或いは、例えばオブセッションのように作家性に根差したものなのか興味深いところです。)

最後に踊られるのは、中尾洸太さんの『自転・公転』(出演:中尾洸太さん、渡部梨乃さん)。まずはふたつのソロ(渡部さん→中尾さん)から入り、ついでふたりが流麗に、スタイリッシュにデュエットを踊っていきます。他者を、翻って、自分を捉えようとする営みででもあるかのように。

17:45頃から15分間の休憩に入り、その後、『Noism2定期公演vol.14』として再開されました。そこからは金森さんの演出振付で、山田勇気さんによる構成のNoismレパートリー「Bachプログラム」です。(まだ、1年目のメンバーは充分に把握できておりませんので、抜けもございます。そのあたり申し訳ありませんが、ご容赦いただくとともに、記載に間違いがある場合にはお知らせくださいますようお願いします。)

まずは『ZONE』より「academic」で幕があがり、Noism2の9人全員で踊られました。いきなり、バッハの音楽が金森さんの美意識で透徹されて可視化され、観客に差し出されるのですが、それはまた、これを踊ってこそのNoismといった風情もあるので、全員、緊張感もあったでしょうが、幸先のよいスタートを切った感がありました。そこから兼述さんと土屋さんふたりの踊りを経て、『no・mad・ic・project』より。上手(かみて)手前に椅子を1脚運んできて、腰掛けた高田季歩さんが上方からのピンスポットを浴びてひとりで踊ります。続いては『Nameless Hands-人形の家』の人形振りと黒衣の番です。黒衣に操られる人形は太田さんと村上莉瑚さん。人形ゆえにまばたきもできません。(4/15「オープンスタジオ」の際からすると、黒衣はまず3人が河村アズリさん・佐藤萌子さん・春木有紗さんで、そのパート最後に村上さんを下げるために出てくるもうひとりが高田さんかと思われますが、顔も身体も覆い、「見えない約束」の黒衣ゆえにしかとはわかりません。)不穏さは更に増して、『Phychic 3.11』(渡部さん・土屋さん)へいきます。直視するのだに恐ろしく、耳を塞いでなんとかやりそごそうとする以外ありません。(こちらの黒衣も同様に、兼述さんかと思われますが、確かかと言われれば、それも…。)
そこから一旦、暗転を経て、『ZONE』「academic」(太田さん・河村さん・春木さんに加えて、Noism1から中尾さん・坪田さん・樋浦さんも参加します。)、後半も品位ある美しさから始まります。続いて、雰囲気もそのままに『Complex』よりデュエット(村上さん・Noism1糸川さん)です。その後は『愛と精霊の家』より冒頭のシーン(兼述さんのソロ)が続き、ラスト、クライマックスの『クロノスカイロス1』を9人が力いっぱいに疾走し、踊ります。このときの9人の表情は(本当はめちゃくちゃ苦しいのでしょうが、)明るい笑顔になっていて、残りの体力を全て振り絞って踊り切っていく若い9つの身体が、ホントに清々しく、目に眩しく映りました。

何より、3年目から1年目のメンバーまで、ひとりの例外もなく、みんなNoismの一員たらんとして、誠実にNoismの動きを身体に落とし込もうとしてきたことが見詰める両目から入ってきて、胸が熱くなりました。過去から繋がってきたものがきっと未来へも繋がっていく、そんなロマンを感じさせるパフォーマンスだったからです。

終演後に緞帳があがると、まずはNoism2の9人が横一列に並んでいました。拍手。ついで、Noism1からの男性舞踊家と4人がその前に並ぶとまた拍手。そして、その4人がふたりとふたりに分かれてNoism2メンバーの横に移動してからは更に大きな拍手に変わり、それはもういつ果てるともなく続き、カーテンコールが何度も何度も繰り返されました。

それから、久し振りのアフタートークです。久し振りとは言っても、金森さんも井関さんもおられず、山田さんと浅海さん、そして振付を行ったNoism1メンバー4人によるアフタートークですから、かなり新鮮な感じがしました。その折のやりとりから少しご紹介しましょう。

Q01: 特に変化したメンバーは?
 -浅海さん:
 1年目のメンバー。このステージは思った以上に大きかったと感じた筈だが、広さを把握してきて、空間認識が見えてきた。
 -山田さん: 1年目のメンバーは成長が見え易い。2、3年目となると伸び悩んだりしがちだが、自分の踊りを見つけてくれたかなと思う。

Q02: 振付公演の出演者はどうやって選んだのか?
 -糸川さん:
 音楽から得たインスピレーションでの作品作りだったが、そのときの想像のなかにいたメンバーを直感で。自分のやりたいことを理解してくれるメンバーを。
 -坪田さん: 去年は8人という大人数の作品で、周囲から「よかった」と言われたことが不服だった。自分に試練を与えるつもりで自分ひとりで踊ろうと思った。
 -樋浦さん: 兼述(さん)とふたり。たたかっている2匹という感じ。自分がイメージしていないところまでたたかってくれる人を。
 -中尾さん: 金森さんからも同じこと訊かれたのだが、渡部さん。やったことのない人とやってみたかった。ほか、男性はみんな忙しそうだったから、自分を選んだ。

Q03: 【山田さんから糸川さんへ】初めて作ってみてどうだった?
 -糸川さん:
 去年、坪田さんの作品に出て、作品作りに興味を持った。自分ではない人にやって欲しいことを伝えるのは難しかったし、どう返してくれるか、やりとりが難しかった。でも、それを通して、自分がやりたいものが見えた。

Q04: 山田さんは何故『クロノスカイロス1』を選んだのか?
 -山田さん:
 あの映像で踊ることで、違う次元に行けるんじゃないかと思った。先輩と拮抗して存在して、でも時間は過ぎていく、踊りは消えていくことに。

Q05: 日々気をつけていることを教えてください。
 -糸川さん:
 トレーニング。今、筋トレに夢中。男性らしい筋肉つけたい。
 -坪田さん: 日々変わることを目標に毎日やっている。知らない自分に出会いたいと思いながら。
 -樋浦さん: その瞬間はその瞬間にしか来ない。上手くやりたいとかではなく、「今」を味わい尽くすこと。
 -中尾さん: 「じょうさわさん(=金森さん&井関さん)」より上手くなるとしか考えていない。

Q06: 【山田さんから4人へ】現在、41歳の自分の世代では、コンテンポラリーダンスは盛んだった。ベジャールとか「大きな振付家」がいた世代だった。みんなの世代で、みんなにとって影響を受けた特別な振付家・アーティストは誰か?
 -糸川さん:
 ウィリアム・フォーサイス。かっこいい。自分の美意識に反応する作品を作っている。
 -坪田さん: いっぱいいる。でも、遠くの振付家より、金森さんや山田さんとやった経験が深層心理に入ってきている。
 -樋浦さん: 新潟生まれなので、金森さん。大きな影響を受けてコンテを始めた。あと、彫刻家のイサム・ノグチ。
 -中尾さん: イリ・キリアン。4年前に観て、コンテやりたいと思った。他には椎名林檎。彼女の世界観、存在感、舞台。

Q06b: 【山田さんから樋浦さんへ】(影響を受けたのが金森さんという)その割には違う。オリジナリティがあるのかなと思うけど。どういうところから作っているのかな。
  -樋浦さん: 作っていて、「音楽って何なのだろう?」と思った。金森さんのクリエイションを経て思うのは、自分はこの音楽を理解しようと思うよりは、自分のなかのリズムを優先させがちなのかなと思う。違うからこそ魅力的に感じるのかなと。
  -山田さん: うん、そうだね。

…と、こんな感じだったでしょうか。どちらの公演もまだまだ一度観ただけですので、雑な書き方になってしまってます。スミマセン。とは言うものの、それらを観る機会も今日のもう一度限りです。目を皿にして何も零さずに観たいとは思っているのですが、そんなこと到底無理な話で。でも、「挑戦」しかないですよね。今日もう一日、浸って楽しんできたいと思います。

「挑戦 躍動 Noism」

当日券もあるとのことですから、皆さまもお誘い合わせの上、お越しください。きっと、よい日曜日になること請け合いです!(キッパリ)

(shin)

 

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』公開リハーサル及び囲み取材に行ってきました♪

前日の寒さから一転、春の陽光が指して気持ちのよい2023年4月19日(水)、標記のメディア&活動支援会員向けの公開リハーサル(+囲み取材)に行ってきました。会場はりゅーとぴあ〈劇場〉でした。まずは公開リハーサル、時間は13:30から約30分間。

4/14のときと同様、この日も見せて貰ったのは、『Noism2定期公演vol.14』の方からでした。で、現在のNoism2メンバーは全員が女性ということもあるからでしょうか、Noism1からの出演もあります。さてさて、誰が出るのかはお楽しみに♪

劇場へ入っていくと既に舞台にはメンバーたちがいて、それを客席から見詰める地域活動部門芸術監督・山田勇気さんは、主に照明の具合をスタッフとやりとりしながら試しています。公演当日まで「ベスト」を求めて、まだまだ練り上げられていきそうです。Noism2リハーサル監督・浅海侑加さんはビデオ撮影の準備をしています。そうこうしているうちに、Noism1メンバーも何名か入ってきて舞台に目をやり始めました。

見学する私たちが揃った頃合いで、山田さん、「じゃあグループのところから『クロノス(カイロス1)』まで通していきましょう。照明も入れていきます」と指示を出すと、まず、客電が落ちて、次に舞台上も暗転。そこを経てからの明転で、「オール・バッハ・プログラム」この日の公開リハーサルが始まりました。

まずは『ZONE』より academic から。

続いて『complex』よりデュエット、『愛と精霊の家』より冒頭シーンです。

そして色鮮やかな『クロノスカイロス1』より。

スクリーンに映し出されるのは初演時のNoism1メンバーの姿。ですから、それに対しても若き舞踊家たちの「挑戦」が見てとれるような案配です。

その後、スクリーンの画像や照明の微調整が行われます。山田さんからスタッフに「真ん中へん、ジョフ(旧メンバー)のところ。(画像の)秒数を3秒追加。ゆっくり」とか、「追っかけで8秒くらいかけて消す。みんなの灯り」とか、もう秒単位でのテクニカルなブラッシュアップです。踊るメンバーに向けては、「はけ切りまで走り切りたい」や「幸せそうに走りたい」など、細部の重要性を伝えていきます。

そうこうしているうちに、14時になり、そこからは場所をホワイエに移して、山田さんと浅海さんへの囲み取材の時間です。

主なやりとりを簡単にご紹介します。

Q:見どころは?
 -山田さん:「見てもらったのはNoism2の定期公演の部分だったが、前半の方にはNoism1メンバーの振付公演(4作品)があり、今回、一緒にやることでボリュームがあり、若手の振付家と若手の舞踊家によるフレッシュなエネルギー溢れる公演になる」
 -浅海さん:「振付公演に出るメンバーは定期公演を踊るときとはまた違った面が見られるの楽しみがある。違う作品を踊ることで表現や身体性が変わる。違う強さ、違う表情、違う面が見られる」

Q:J.S.バッハの曲を用いたレパートリーとした理由は?
 -山田さん:
「統一感があってもいいのかなと。バッハはNoismらしいし、バッハの音楽のシンプルな強さと、研修生(Noism2)がやるべきシンプルに身体を鍛えていくことが合致する。また、『挑戦』として、あの音楽に向き合って貰いたかった。やってみたら、音楽ごとに違う表現があるし、音楽がシンプルで抽象的であるため、身体性にフォーカスする難しさがあり、トライして欲しいと思った」

Q:振付公演での作品作りについて何か制約はあったのか?
 -山田さん:
「特にない。ただ、公演が全体で90分くらいなので、(4作品なので)ひとり10分程度に」

Q:メンバー振付公演の作品順はそうやって決めたのか?
 -山田さん
「見てみて、終わったときにどういう感覚が残るかを考えて決めた。音楽の『流れ』も考慮した」

…山田さんと浅海さんへのこれも新鮮だった囲み取材はここまでです。
で、その後、Noismスタッフからなされた告知として、両日とも終演後のアフタートークには、山田さんと浅海さんに加えて、Noism1メンバーの振付家4名が登壇予定とのこと。更に新鮮かつ、色々な面で面白いお話が聞ける機会になりそうですね。
とにかく楽しみな公演2日間。チケットは只今、絶賛発売中。よいお席はお早めに!

で、この日は囲み取材のあとの時間を利用して、なんと東京から(!)私たちNoismサポーターズを取材したい(!!)とのお申し入れを受けていたのでした。
その取材ですが、JR東日本の新幹線車内サービス誌「トランヴェール」の編集ディレクター・籔下純子さんとおっしゃる方からのもの。新幹線で前の座席の背面、あの網ポケットに入っている旅の雑誌ですよね、「トランヴェール」。
その6月号が、新潟のダンスシーンを特集掲載する予定だそうで、新潟の様々な踊りやダンスのコンテンツに混じって、私たちサポーターズについても取り上げたいということなのでした。籔下さん、Noism公演をご覧になられた際に、私たちNoismサポーターズについても興味を持たれたとおっしゃっていました。
fullmoonさんを通じて、acoさん、aquaさんと私、4人でNoismの魅力について、目をハートにしながら小一時間、お話しさせて貰いました。どんな記事に纏めてくださるか今から楽しみです。籔下さん、どうも有難うございました。
皆さま、6月号、是非お手にとってご覧いただけたらと思います。(その「トランヴェール」は、表紙のQRコードを読み込むことで、現在、発行と同時に読めるのだそうです。(期間限定です。)また、1ヶ月後、次の号が出るタイミングになりますと、上のリンクから「バックナンバー」として読めるようになります。)

でも、まずは今週末(4/22土、23日)に迫った、様々に新しさや若さが溢れる『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』です。お見逃しなく!

(shin)
(photos by aqua & shin)

Noismオープンスタジオ(リハーサル公開)に行ってきました♪

2023年4月15日、薄曇りの暖かな土曜日♪
古町や白山祭りの賑やかな人出を抜けて、りゅーとぴあに向かうと、そこにも賑わいが!
りゅーとぴあでは、今日(4/15)明日(4/16)「アート・ミックス・ジャパン」が開催され、野外での公演もあり、屋内外ともたくさんの人! りゅーとぴあ内は出店も出ていて華やいでいました♪

そんな本日、行われた「Noismオープンスタジオ」とは!?
公式ホームページよると、
「G7財務大臣・中央銀行総裁会議が新潟で開催されることを記念して、アート・ミックス・ジャパン2023の開催に合わせ、Noismのスタジオを特別に公開します。
4月22日(土)・23日(日)に予定している「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」で上演する作品のリハーサル風景を、予約不要でご覧いただけます。
この機会にぜひNoismのスタジオにもお立ち寄りいただき、間近に迫る公演に向けた創作の様子をご覧ください。
アート・ミックス・ジャパン2023連携 -G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議開催記念-」
とのことでした。

リハーサル公開は14:15~ですが、受付開始の14時にスタジオBに入場。
用意されていた席は間もなく満席となりました♪

■「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」上演予定作品
☆Noism1 メンバー振付公演 2023
・中尾洸太 振付作品
・坪田光 振付作品
・樋浦瞳 振付作品
・糸川祐希 振付作品

★Noism2 定期公演 vol.14
演出振付:金森穣
構成:山田勇気
稽古監督:浅海侑加
・『ZONE―陽炎 稲妻 水の月』より「academic」(2009 年)
・『no・mad・ic・project―7fragments in memory』(2005 年)より
・『Complex~旧作と新作の融合による』(2021 年)より
・能楽堂公演『play 4:38』(2006 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『愛と精霊の家』(2015 年)より
・『クロノスカイロス 1』(2019 年)より

以上の中から、この日は、Noism2 定期公演 vol.14の、
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
を見せていただきました!

○『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
バッハの無伴奏チェロ組曲、と言えばアレです!
かつての山田勇気さん&中野綾子さん、中川賢さん&真下恵さん・・・
人形2体と黒子たちによる名場面が彷彿としてきます♪

今日、じっくり稽古をするところを見たら、難しいんですね~~
驚きました!
その難しい作品をNoism2の1,2年生6名が踊ります。
乞うご期待!

□『Phychic 3.11』(2011 年)より
この時は3年生3名が踊りました。
さすがは3年生!うまさと貫禄が違いますね!

この2作品だけでもすごいのに、たくさんの上演作品で大変と思いますが楽しみです!
指導は山田勇気さんと浅海侑加さん♪ 丁寧な指導に見入ってしまいました。
皆さん、がんばってください!

19日には劇場でメディア向け&活動支援会員向け公開リハ―サルがあります。
そして本番は、22,23日!もう来週ですね!
ぜひどうぞご来場ください!
若々しいエネルギーをご堪能くださいね♪

(fullmoon)

2023年春爛漫の4月吉日、金森さんと井関さんの祝宴 賑々しく開催さる♪

2023年4月2日、これ以上望めぬほど抜けるような青空の日曜日、新潟市護国神社の迎賓館TOKIWA ガーデンヴィラを会場に、金森さんの令和3年春の紫綬褒章受章+井関さんの令和2年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞と、金森さん初の書籍『闘う舞踊団』(夕書房)刊行をみんなでお祝いする祝賀会が、定員を超える81名の参加者を得て、誠に賑々しく開催されましたことをご報告させていただきます。

司会は「月刊ウインド」編集部、安吾の会事務局長、舞踊家・井関佐和子を応援する会 「さわさわ会」役員と多くの肩書きをもつ久志田渉さん。ご本人の言では「すべてアドリブ」とのことでしたが、淀みなく流れるようにこの喜ばしい宴を進行してくれました。

ここではこの日の祝宴の進行とお料理を主に写真によって、ごくごく簡単にご紹介させていただこうと思いますが、まずはこちらからご覧ください。

□額装された賞状 

□祝宴編

*開宴前: スクリーンに投影されたNoism Compnay Niigataの公演映像が参加者をお出迎え。

*金森さん・井関さんご入場

①開会のご挨拶: BSN会長 竹石松次さん(発起人)


②花束贈呈: 新潟市洋舞踊協会代表 若林美江さん(to 金森さん)とCHIBI UNITY会長 国友慎之助さん(to 井関さん)


③金森さんご挨拶


④井関さんご挨拶


⑤乾杯: 前新潟市長・新潟青陵学園理事長 篠田昭さん(発起人)


⑥メッセージ披露: 夕書房 高松夕佳さん (司会・久志田渉さん代読)
お寄せ頂いたメッセージの全文を掲載します。(少し見辛くて恐縮ですが、)是非お読みください。

【註】メッセージ中、「サポーターズによる年表サイト『Noism Database Unofficial』」とありますが、こちらはあおやぎさんによる「Noismの非公式データベース(個人のサイト)」を指すものです。左のリンク欄からもいけますが、こちらからもどうぞ。

⑦スピーチ: 公益財団法人 新潟市芸術文化振興財団理事長 徳永健一さん


⑧スピーチ: 新潟市洋舞踊協会 内堀照子さん

⑨スピーチ: お笑い集団NAMARA代表 江口歩さん

⑩スピーチ: 新潟古町芸妓 舞衣子さん

⑪スピーチ(飛び入り): Noism活動支援会員 藤浦光俊さん(愛知より参加)


⑫スピーチ: Noism Company Niigata地域活動部門芸術監督/Noism0 山田勇気さん→Noism2リハーサル監督/Noism1 浅海 侑加さんと出席Noism1メンバー(庄島さくらさん・庄島すみれさん・中尾洸太さん・糸川祐希さん・杉野可林さん)の紹介(自己紹介)


⑬閉会挨拶+一本締め: シネ・ウインド代表・安吾の会代表・「さわさわ会」代表 齋藤正行さん(発起人)

*閉宴後: ホワイエにて金森さんと井関さんによるサイン会が開かれました。

□お料理編(+αとしまして、Iテーブル画像も♪)

途中、歓談のあいだに、「新潟美人」(新潟の女性や企業による「新潟からキレイを発信する」ためのプロジェクト)さんからの祝電のご披露もありましたことを申し添えます。
で、会場の雰囲気も、時間を追うにつれて心地よく解けてきて、主役のおふたり金森さんと井関さんをはじめとして、そこここでNoismメンバーたちとの写真撮影が盛んに行われるようになってきます。私もその例に漏れず、何枚も一緒に写真を撮っていただけました。有難いことでした。

宴の冒頭、司会の久志田さんが紹介してくれましたように、折からこの日(4月2日)、新潟日報朝刊の読書欄に「豊饒な地方文化拓く試み」の見出しのもと、早稲田大学教授・秋野有紀さんによる『闘う舞踊団』の書評が掲載されました。(恐らく日にちを選んでこの日の掲載としたのだろう)新潟日報も洒落たことをやってくれるなぁと思ったような次第です。

それにしましても、「新潟の誇り」「新潟の宝」であるおふたりの慶事をこうしてみんなでわが事のように、心おきなくお祝いできる機会というのもこれまであるようでいてなかったので、会場にいた誰にとりましても、ホントに得難い感激の一日だったかと思います。

…以上、誠に大雑把なご報告となってしまいましたが、スパークリングワインによる乾杯から始まり、麦酒を経て、白&赤ワインと飲み継ぎまして、そのアルコールによるものだけではない「酩酊」を味わった宴のことですゆえ、何卒ご容赦いただきますようお願いいたします。

(shin)

「纏うNoism」#05:庄島すみれさん

メール取材日:2023/3/22(Wed.)&3/28(Tue.)

各方面、年度末・年度はじめのバタバタ時期かと思いますが、ご好評を頂いておりますこの連載をお届けできることを嬉しく思います。前回の庄島さくらさんからバトンを引き継いでご登場頂くのは双子の庄島シスターズのお姉さん・庄島すみれさんです。おふたりの「纒う」事情が今回で一層明瞭になるものと思います。「忙中閑あり」。いっとき、ゆるりとお楽しみください。

「ファッションは買うことができますが、スタイルはあなたが有するものです。そのスタイルの鍵となるのは、自分が何者なのかを学ぶことであり、それには何年もかかります。そして、そのスタイルを構築するための手引書などありません。そこには自己表現力と、何より態度がすべてとなるのです」(アイリス・アプフェル)

それではさっそく拝見いたしましょう。

纏う1:稽古着のすみれさん

稽古後のストレッチ画像ですかね
…リラックスした雰囲気です

 *落ち着いた色合いでまとめておられますね。この日の稽古着についてご説明願います。

 すみれさん「ユニクロのフリースが暖かいので気に入ってよく着ています!フリースの下には鼓童さんと共演した『鬼』のTシャツを着ています」

 *おおおっ!Noism×鼓童の新潟ツートップのダブルネームTシャツ!私も数枚求めましたよ。いいですよね、アレ。そしてユニクロのフリースですか。侮れませんよね、ユニクロ。でも、それも含めて色柄抑えめの稽古着がお好みなのでしょうか。そのあたり、どうですか。

 すみれさん「稽古着は黒や紺などが多いです。特に気付くと全身紺だったりします。レオタードは色んな色を持ってるので明るい色も着ています!なんとなくその日の気分で選んでいます」

 *そうなんですね。では、この連載のこのところの流れで靴下についてお訊きします。(笑)稽古の際に履く靴下はさくらさん同様、やはり adidas が多かったりするのでしょうか。

 すみれさん「私もadidasが多いです。まとめ買いして2人で分けて使っています!」

 *なるほど、なるほど。まったく理に適っているかと。

纏う2: すみれさん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

華やかで煌びやかな「ふたり」
…同じ衣裳ですね…(汗)

 すみれさん「思い出の衣裳は沢山あって、選ぶのが難しいのですが、スロバキアのバレエ団で踊っていた『ドン・キホーテ』の衣裳は大事にしている思い出の衣裳の一つです!」 

 *おおっとぉ、きました。煌びやかで艶やかな衣裳!しかも、またまたの『ドン・キホーテ』!これで『纏うNoism』連載「3連チャン」ですね。やっぱり刺さる作品であり、衣裳なんですね。踊る側にとっても。
 *写真の『ドン・キホーテ』についていくつか伺いますが、まずは踊られた役名を教えてください。

 すみれさん「キトリの友人役です」

 *バジル(床屋)の恋人で宿屋の娘キトリの友人ですね。ところで、写真に写っているのはすみれさんとさくらさんですよね。どちらがすみれさんですか。そして、ふたりで一緒に同じ衣裳で出ていたのでしょうか。

 すみれさん「キトリの友人役は2人いて、さくらと2人で踊っていました!左下がさくらで右上がすみれです!」

 *息もぴったりの友人ふたりだったことでしょうね。そのときの舞台での思い出も教えてください。

 すみれさん「この『ドン・キホーテ』の舞台は私にとって思い出深い作品です!キトリの友人役を踊りたいと思っていたので踊るのが決まった時は嬉しかったです!ロシア人振付家の振り付けで、凄くテクニカルな事が沢山あって大変だったのですが、この『ドン・キホーテ』を踊った事で成長出来た気がします。初演が終わった時のあの達成感は忘れられません!」

 *「踊りたい」と思っていた気持ちがビンビン伝わってくる、よい表情を捉えた写真ですね。うん。そしておふたりともパッと咲いた2輪の花のようでとても美しいです。うん、うん。

纏う3: すみれさんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 すみれさん「それぞれの衣裳に思い入れがありますが、最近だと『Der Wanderer-さすらい人』の衣裳がとても印象に残っています。女性陣は皆違う色で、衣裳の花柄も、私と妹のさくらは同じ柄でしたが、他のメンバーは違う柄で、作品もそれぞれのソロがあって、個性が出ていたと思います!」

 *そうでしたね。それぞれメンバーの個性の違いが前面に出ていましたし、更に前半と後半とで、全く異なる心情を可視化することになるといった構成で、とても見応えある作品でした。何度も足を運んで観ましたが、観る度に唸ったものです。

 *Noism Web Site へのリンクを貼ります。
 2023年の『Der Wanderer-さすらい人』画像です。ご覧ください。

 *また観たいですね、『Der Wanderer-さすらい人』。すぐにでも♪

纏う4: 普段着のすみれさん

「スタイル」があります、すみれさんの「スタイル」♪

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 すみれさん「まだ肌寒いので暖かい服を着ています!コートと中に着ているジャケットは母からのおさがりです。特に中に着ている赤いジャケットは母が私の歳より若い時からスキーをする時に着ていて、オーストリアのGEIGERというブランドのもので凄く暖かくて気に入っています!」

 *GEIGER(ガイガー社) ですか。ワタクシ、寡聞にして知らず、ですから調べてみました。すると、1906年創業の老舗で、創業以来100年以上に渡り、チロリアンの基本を取り入れながらも 現代のファッションシーンにマッチする服作りを行っているブランド、なのだと。そんなチロリアンジャケット、高品質で古びないデザインの逸品なんですね。
 *そして、そして、またまた「お母様からのおさがり」ということではありませんか。そのコートとジャケットですが、さくらさんとも共有されているのでしょうか。それとも、すみれさんが占有している2品なのでしょうか。

 すみれさん「お母さんからのおさがりの服は、さくらと共有して着ています!他の服も私が買った服をさくらが着たりもしますし、逆にさくらが買った服を私が着たりします」

 *うむ、うむ。そうすると、自分が着たときの様子をさくらさんの姿で目にするような感じも(また、その逆も)あるのかと。まあ、双子になったことがないので、想像してみるだけですけれど。(笑)そして蛇足ですが、普段、着ている物からおふたりを見分けることは困難だということもわかりました。(汗)
 *ではでは、着たいときが重なったりした際は、どうされているのでしょうか。早い者勝ちとか、「着る!」と言った者勝ちとかなのでしょうか。そのあたりを教えてください。

 すみれさん「もし着たいときが重なってしまったら、他の服を着ようかなとなります。お互い絶対この服!というこだわりは無いので、大体譲り合いになります」

 *なるほど。そうなのですね。喧嘩や争いごとにはならないと。何を着ても素敵ですものね、おふたりとも。ホント、おふたりの仲の良さやお母様との関係性などが伝わってきました。どうも有難うございました。

すみれさんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂きました。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもNoismを応援してくださり、ありがとうございます!サポーターズの皆様の応援が励みになっております。また劇場でお会いできるのを楽しみにしています。これからもよろしくお願いします!」

…以上、「纏うNoism」第5回、前回のさくらさんに引き続き、庄島すみれさんの回をお届けしました。すみれさん、改めて有難うございました。

当ブログでご紹介してきたすみれさんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑰(庄島すみれさん)
 「ランチのNoism」#16(庄島すみれさん)

という訳で、今回の「纏うNoism」はここまでです。お楽しみいただけましたら幸いです。次回もまた乞うご期待ということで♪
ではでは。

(shin)

Noism 金森 穣『闘う舞踊団』~出版記念トークイベント~聴いてきました!

テレビをつければWBC一色、ぽかぽか陽気の休日に、MOYO Re:(もより)にて行われた『闘う舞踊団』~出版記念トークイベントを聴いてきました!
聞き手はツバメコーヒーの田中 辰幸さん。
以下、トークの様子をふわっとレポートします。

■出版について
本を書くことで未来の誰かに託している。資料として残すという側面がある。
『闘う舞踊団』は、文化政策にかかわっている人から反応がある。
Noismは成功例だと思っていたところ、読んでみて驚きや共感を覚えたという声がある。
こういう形で発信していかないと気が付いてもらえない。もっと発言していかなければいけない。

■鑑賞すること、批評の不在
Noism初期の頃のアフタートークでは平易な質問もあったが、回を追うごとにはっとする質問が来るようになった。
舞踊に触れていなければ、見方はわからない。感じられるものはあっても、この見方で”合っているのか”わからない。
舞踊についての言説が流通していない。別の方法も考えていかなければいけないし、地道に続けていくこともある。
一度でもいいから観てもらうためには、知名度を上げることも必要。

■10代の頃
中学生くらいの頃は授業に身が入らなかった。屋上でハーモニカを吹いていた。
自分が”違う!”と思ったらイヤになって、授業が入ってこない。
承認欲求はある。0歳児保育の頃は大人に気に入られようと愛想をふりまく幼児だった。

■家庭環境からして舞踊のエリートなのでは?
父は伊豆大島から東京に出て、ウエストサイドストーリーに感化されてダンスを始めた。
いま70代で生活保障もあるわけではない。舞踊家の大変さ、厳しさは目の当たりにしている。
舞踊は身近なものであり、踊っていると周りの大人がほめてくれた。

■世代による分断
現代では舞踊の動画もたくさんあり、学習しやすくはなっている。
世代による体験の分断はあり、強いてやらせるのは暴力的なこと。
いま海外に行っても、通信手段が普及しているので容易につながってしまえる。
ただし方法が違うだけで、孤独は味わっているのかもしれない。
自分の追い込み方、内圧を高めてどう外圧に対処するかという体験が重要。
外圧がないところで、内発的に自らを高めていくことは難しい。

■身体の稀少性
社会が非身体化しているからこそ、身体の稀少性に惹かれる。
知識は見て学べること。その時自分の身体がどうなっているか、身体と向き合うという実践によって理解できることがある。
知識を疎外しているわけではなく、両輪としてやっていく。
身体性をどうとらえるかは、一度WSに出て体験してみるのが一番。
実践を通して身体の可能性に気づき、見る行為により追体験ができる。
人生をかけて自分の身体と向き合うことでリアリティが生まれる。

■読書について
本は18歳頃から読み始めた。図書館には行かないタイプだった。
ヨーロッパでは、哲学とは、親とはといった会話で他者とコミュニケーションする光景があった。
自分は今まで舞踊(運動)はしてきたが、これではヤバイ!恥ずかしいという思いから本を読み始めた。
いきなりニーチェを読み、内容はわからないけれど負けず嫌いなので読み通した。
ニーチェのほか、三島、村上春樹など雑食だった。
今ならまとめ動画で要約も見られるし、知らなくてもchatGPTで回答は得られる。
だが身体とどうかかわるか、全身体的な体験として本を読む。読む行為は空間的かつ時間的。
ベジャールの父は哲学者だった。メルロー=ポンティなども会話に出てきた。
情報と感覚は違う。ヤバイ!と思うこと、危機感を持つことが大事。

■金森さんがちゃんとしすぎている問題から
田中:金森さんは、もう少し隙があると親しみがわきやすいのでは?
金森:この前も柳都会で、近づきがたいと思っていたが、普通でよかったと言われた。
田中:だらしなくしてみては?
金森:スキを見つけて楽しい? 別に作っているわけではなくて、やりたくてやっている。
そんな方法でなくても、山田の道、井関の道、オレはオレでやっていく。
もし、崩して観客が増えるとか、根拠があるならやる。
とはいえバランス感覚が重要。知名度が全てではないが、知名度も必要。
質と社会性の両立、広報を続けていっておいおい成果がでてくればよい。多角的アプローチをしていきたい。

■観客について
少子高齢化が問題と言われるが、高齢者はさまざまな人生経験をしているので、ごまかされない目があり深く届くものがある。
芸術家の自分としては、理解者は一人でもいればいい。実演家と芸術家の両方の視座が必要。
県外からの観客は2~3割程度。昔より増えている。
市内の人が劇場に足が向かないのは、年間を通してやっていることの弊害かもしれない。
首都圏へのアピールは課題。関係が構築できたと思ったら担当者が変わる。
(芸術家としては)ただ数が集まればいいというものではない。
何が評価されているのかは、今期から新体制なので、三年後にまた聞いてほしい。
メンバーがチケットを販売することはタブーではないが、それをやらないと成り立たなくなるのは駄目。
普段の生活の中で、馴染みのお店や触れ合う人へ観に来てくださいという声かけはあると思う。

■饒舌な金森さん
(ポスターの指先まで隙のない姿に対して)舞踊家だから仕方がない(笑)
田中くんが相手だと、ふだん話さないことまで話した気がする。
柳都会では聞き手になっているが、今日はずっと喋っている。
フリートークが成立するかどうかは相手による。

■良くも悪くも金森さんの存在は不動のものでは?
日々さらけ出して、メンバーと一緒に稽古している。
ベジャール、キリアンの指導者性はタイプが違う、自分が師事した頃の彼らは60代70代だった。
自分が踊らなくなってからわかる見え方があるかもしれない。
今後は、Noismの組織としての体制を確立させる。
自分の身体と向き合うことで「真の花」に迫れるのではないか、興味はある。
舞踊はよく非言語と言われるが、むしろ前言語的ではないか。

■「美しさ」とは
大前提として、はかないもの。言語化すると消失してしまう。
ヨーロッパでは「美しい」と頻繁に言葉に出す。
リプロデュース可能なものにするのが「芸」。

軽妙なテンポの田中さんが、スペイン人の女の子、鈴木忠志さんのユンボなどの話題を挟んで会場を沸かせることも度々。質疑応答からさらに話題を展開するモデレーターぶりに、いつになく饒舌な金森さんが応えます。怒涛のトークに聞き入り、気づけばあっという間の2時間が経過していたのでした。(のい)

「柳都会」vol.26 渋谷修太×金森穣(2023/03/18)を聴いてきました♪

ここ数日の暖かさはどこへやら、冷たい雨がそぼ降る2023年3月18日(土)の寒い新潟市。雨もあがった夕刻16:30からの「柳都会」vol.26 渋谷修太×金森穣を聴いてきました。(@りゅーとぴあ〈能楽堂〉)

この日のゲストはアプリとデータをテーマに事業展開するIT企業・フラー株式会社の代表取締役会長 渋谷修太さんとあって、ビジネススーツ姿の来場者もおられるなど、いつもの「柳都会」とは少し雰囲気も異なるように感じました。そしてこれを書く私はと言えば、デジタルにはとんと疎いもので、「ついていけるかなぁ?」という不安が拭えずに会場入りしたような次第でした。しかし、渋谷さんの人間味溢れる人柄と語りの上手さに惹き付けられてあっという間に終了予定時刻になっていた、そんな対談でした。ここでは話された内容からかいつまんでご紹介しようと思います。

冒頭、この日の占いで「口は災いの元」と出たので気を付けるという金森さん。つかみはOK。そこからは主に渋谷さんがご自身とフラー株式会社についての話をされるかたちで進んでいきました。

*起業家の力で、故郷を元気に。
渋谷修太さんは1988年、新潟県生まれ。佐渡に実家も、親の仕事の都合により、→妙高→南魚沼→新潟と転校→長岡高専へ進学(プログラミング・テクノロジーを学ぶ)→筑波大学に編入学(経済・経営を学ぶ)→IT企業・グリー株式会社に勤務(2年強働く)→1911年、愛着のある新潟で、長岡高専時代の仲間と一緒にフラー株式会社を設立した。「友達と一緒にいたい。どうしたら『卒業』しないで済むんだろうか。会社があれば」の思い。創業時、5人→現在、150人が働く会社へ。
高専: 高等専門学校。中学卒業で入学することができ、5年間の一貫教育で優れた専門技術者を養成するための高等教育機関。全国に57校ある。「かつてアメリカのオバマ元大統領は『日本で一番優れた教育機関』と評した」と渋谷さん。

2016年、アメリカの経済誌「Forbes」から、年に一度選出する「アジアを代表する30歳未満の30人」に選出されたことを報せるメールが届いた。同年の選出者には、他に田中将大、錦織圭、内村航平もいて、そこに「起業家」が並ぶことはアメリカでは驚きなく受け止められることであり、日本で「『おおっ!』ってなるのをやめさせたい」(渋谷さん)思いがある。評価されたのはアントレプレナー(起業家)としての「数値」:会社を成長させるスピードや資金調達力(当時、10億円くらい集めていた!)

2021年、EY「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン」10人のうちのひとり(Exceptional Growth(=並外れた成長)部門)に選出される。「地方創生DX(デジタル・トランスフォーメーション:デジタルでの変革)のリーダー」

*フラー株式会社 
「自動車だったらトヨタ、家電だったらソニーといった、日本発で世界一といえるような会社をITの世界でも創りたい。」
デジタルパートナー事業: パートナーに寄り添い、共に創り、本当に必要なものを届け、企業がデジタル化していくのを支える。
一番大事にしているのは人。IT企業には在庫はない。コストの大半は人件費。
社員の平均年齢:32歳。高専出身者:27%。
地方拠点を活かした開発体制:都心から離れた拠点率:100%。(←Uターン就職の受け皿に。)

*社会全体がHAPPYになることを目指す、地方のデジタル化
【例】長岡花火のアプリ開発: 大勢の人が集まることで電波が繋がり難くなるウェブサイトに対して、使えるのがアプリ。
金森さん: どうして? その瞬間、最新の情報にアクセスできるの?
渋谷さん: 事前にアプリをダウンロードしておけば、最新の情報も情報量は少ないので、キャッチできるときにキャッチすることが可能。

「デジタル化」はあくまでも手段。「長岡花火が良くなるんだったら、デジタルでなくても何でもやろうよ」→ゴミ拾いなども行った。→そこを見てくれて評価してくれる会社(任天堂)もあった。

*2本社体制(新潟&柏の葉)、それぞれの地域を活かした活動
統計によれば、東京で働く人の4割が地元に戻りたい思いを持つが、仕事が理由で叶わない。→ささるキャッチコピーを投下。
・交通広告: 改札を出ると、またはエスカレーターに乗ると、「フラー」の広告。
・年末・年始のTV 15秒CM: 年末・年始、普段はTVを見ない若者が、お茶の間で家族と一緒に点いちゃっているTVを見ている時間帯にCM。
「ふるさとに帰ったら挑戦は終わりだと思っていた。この会社と出会うまでは。」
「諦めなくていいんだ。新潟に戻るのも、ITの仕事も。」 

*「地域に優しいデジタル化を通じて、世界一、ヒトを惹きつける会社を創る。」
ソフトウェアの地産地消。持続可能であること。地域の課題を地域で解決することは働くモチベーションになる。地域に雇用を生み出す正しいサイクルを目指す。

金森さん: 経営者の面のほか、デジタルのプロダクトやコンテンツはどうしているの?
渋谷さん: デザイナーとエンジニアに任せている。「自分よりできるヤツいる。みんなで一緒につくればいいんだ」自分は説明やお金集め、人集めに特化。
金森さん: 日本のプログラマーは現在、最先端ではない。「外国へ行きたい」とかならないの?
渋谷さん: シリコンバレーで感じたのは、「こいつらもめちゃめちゃ凄くはないな」ということ。但し、挑戦はするし、プレゼンは上手い。日本にも優秀なエンジニアはいる。
金森さん: テクノロジーの進化に対応する必要はある。
渋谷さん: 英語のメディア等に情報を取りにいくことは必要。更に実際に自分で使ってみることが重要。

3年前、故郷・新潟に移住して感じたリアルな現場: ファミリー経営が多い地方の企業は社長交代期に、60代から30代へとか、「世代がとぶ」環境があり、一気にデジタル化が進む傾向もある。

新潟には、100年続く老舗企業も多く、そうした既存企業の更なる飛躍と新潟初の新規事業の促進をDXで支えていくことを目差す。
全国的にも起業家が少なかった新潟において、新潟ベンチャー協会として若手起業家合宿などの活動を行うことで、現在、若手起業家は増加している。「ローカル発。世界に新潟から。」
金森さん: 同業他社が増えていいの?
渋谷さん: 人に関しては、ある程度、「集積地」を作らなければならない。フラーなのか東京なのかではなく。給与のレンジや競争の適正化が図れる。自分としては、「競争」ではなく「共創」のイメージがある。

*AIで仕事は変わる
金森さん: テクノロジーやAIの進化で人はどんどん要らなくなっていくとみられている。この先もアプリを作るのは人間?
渋谷さん: ゆくゆくはAIが作るようになるだろう。AIで仕事は急速に変わる。AIを使いこなし、味方につける術を身につけていくことが求められる。スティーヴ・ジョブズも「既存の仕事はなくなるが、クリエイティヴなことに使う時間は増える」と言っている。時間が節約され、膨大な時間が生まれる。それを人間にしかできないことに使うこと。

*活躍できる土壌、文化、場所
シリコンバレーの風土・環境: イノベーション施設「wework」には遊ぶ環境も用意されていて、昼からビールも飲める。精神的に何がよしとされているか。ハード面でもクリエイティヴな環境があることが大事。→プラーカに「新潟版」を作って貰った。「NINNO(ニーノ)」:新潟とイノベーションを掛け合わせた造語。
金森さん: 環境に惹かれる人間の感性を育てることも重要。劇場はクリエイティヴィティが発動する場という思いでやっている。ローカルに消費されるだけでなく、世界と繋がっていることが感性にとって大事。
渋谷さん: アメリカのポートランドの例をみるまでもなく、芸術とクリエイティヴな人材の相関性は高い。「Noism、希望だな」と思う。個と集団を扱ったこの間の作品(『Der Wanderer-さすらい人』)、(会社)集団が大きくなってきていて凄くささった。
金森さん: 世界の主要な劇場には多数の日本人がいる。帰って来ようにも(金銭的にも、精神的にも)来られる環境がない。
渋谷さん: 活躍できる土壌、文化、場所が必要なのはアートもITも同じ。仕事をつくれば戻って来られる。

会場からの質問
01a: 社名「フラー(FULLER)」の意味・由来は?
-渋谷さん: サッカーボール状の構造をもつC60フラーレンに由来する。強固な構造をもつと同時に他とも吸着する側面を併せ持つ。また、「ソニー」や「ヤフー」のようなカタカナ2文字+伸ばし記号にもしたかった。
01b: 「起業家」の意味は?
-渋谷さん: 社会に今、存在していない解決策をつくる存在。何かインパクトを起こし続けたい。
01c: 友達と一緒に会社を作った。その組織論は?
-渋谷さん: 最初はよくても、10年続くのは6%に過ぎない。自分はビジネスアイディアよりも友達が大事。みんなでやることが大事。友達と一緒だったので、苦難・困難も乗り越えることができた。

02: 2011年の創業。物凄い勢いで勝ち上がってきた。その秘訣は?
-渋谷さん: シンプルに言うと、助けて貰った。愛された。アプリ製作から「新潟においでよ」と言って貰えた。先輩経営者の方々が協力してくれて今に至っている。自分としては誰よりも新潟を愛している。住みたい人が住めるようになって欲しい。そのために、何かしらできることがあればやりたい。

03a: 人とのコミュニケーションの取り方、人との関わりのなかで身につけていくこと希薄になっていないか?
-渋谷さん: 自分はコンピュータよりも人が好き。デジタルも使うことによって人と一緒にやっていけるものと信じている。アイディアはひとりのときよりも人と出会うことによって生み出される。
03b: 介護分野でのデジタル化進んでいないが、どう考えるか?
-渋谷さん: デジタル化は時間を生み出す。介護もデジタル化が必要となる分野。大事である。

04: 企業やアプリにおけるアイディアや著作権はどうなっているか?
-渋谷さん: IT分野では、アイディアだけでは意味がない。誰もが同じようなことを思いつくが、実行が大事な分野。Facebookのマーク・ザッカーバーグも”Demo is better than words.”と言っている。また、意匠面でもユーザーにとってインターフェイスは似通っていた方が使い易い。インターネットという環境をみんなで作り上げているように思う。
-金森さん: インターネットとはそもそもオープンソースであり、地球規模の民主化。一方、舞踊における固有性、脳や身体などは真似できないものだが、舞台のイメージやビジョンについては訴えられることもある。
人と違うことが大事だったのが20世紀とすれば、過去から学び、影響を受けることを恥じずに次の一歩を踏み出すのが21世紀。

*結びに
渋谷さん: 新潟はシリコンバレー同様、自然が豊かな良い場所。エンジニアのなかには登山やサーフィン等、外に出て行くことを好む者も多く、ITと自然豊かな場所や芸術的に盛り上がっている場所とは相性がよい。
1888年の新潟は全国で一番人口が多い町だった。一度できた町にはポテンシャルがある。若い人が増えて欲しい。戻りたい人が戻れて、住んで楽しい町になって欲しい。
金森さん: (渋谷さんは)「もう有能な政治家にしか見えないね」(笑)

…金森さんにそんなオチまでつけて貰って終了したこの日の「柳都会」でした。
ざっと、そんな感じでしょうか。何かしら伝わっていたら幸いです。途中に(トイレ)休憩も挟まず、聴く者をぐいぐい引き込んでいく、圧倒的に、或いはめちゃめちゃ面白い90分間でしたから。

聴き終えたら終えたで、渋谷さんについてもっともっと知りたい気分になり、物販コーナーにて著書の『友達経営』(徳間書店)を求めたところ、その後いろいろありで、渋谷さんのサインもいただけました。

そんなこんなで、とても刺激的で有意義な時間を楽しみました。以上、報告とさせていただきます。

(shin)

金森穣『闘う舞踊団』刊行記念 金森穣×大澤真幸(社会学者)トークイベントに行ってきました!

『Der Wanderer-さすらい人』世田谷公演の余韻も冷めやらぬ2月28日(火)、東京・青山ブックセンターで開催された金森さん・大澤さんのトークイベントに行ってきました♪

ほぼ満席の会場。黒のステキなジャケットで登壇の金森さん! あのプリーツは!?
そう、宮前義之さん(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)のデザインです!
(ちなみに次の、Noism0・1夏の公演「領域」https://noism.jp/npe/noism0noism1-ryoiki/ でのNoism0衣裳は宮前さんですよ♪)

世田谷公演の裏話があるかなと思いましたが、それは全く無くてちょっと残念。司会者はいないので、最初は大澤さんが進行役のような形で始まりました。
大澤さんの机には付箋がたくさん付いた『闘う舞踊団』が置いてあり、 金森さんも気になる様子でしたが、付箋箇所を開くわけでもなくお話が進みます。

トーク内容はとても書ききれませんので、だいたいの流れに沿って簡単にご紹介します。

大澤:
・金森さんは、劇場に専門家集団がいて世界に向けて芸術文化を発信したいと思っているのに、足を引っ張る人がいて苦労している。
・芸術活動は何のためにあるのか。金森さんには確信があるが、他者はピンと来ていない。
・スポーツは見ればわかるが、芸術はそうではないので受容する素地(文化的民度?)が必要。
・日常を超えた真実があるかどうか、世界が違って見えてくるのが芸術。
・芸術は感動。快いと感じるものだけではなく、不安をおぼえるようなものも含めた心が揺らぐ体験。

金森:
・時代によって世の中が芸術に求めるものが変化している。
・自分はかつては、既存のものを壊して新しいものを立ち上げたいと考えていた。それができないのは自分に力がないからと思っていたが、そうではない。
・自己否定ではなく、意識を少し変える。微細な意識変容で見えてくるものがある。
・少しずつ世界をずらしていく。

大澤: 舞踊芸術の価値は日本では伝わりにくいのではないか?

金森: そんなことはない。日本には海外の一流のものがたくさん来ていて、観客は目が肥えている。そういう見巧者の感性に肉薄できるかどうか。環境が整えば日本でもできる。

大澤・金森: 見たことによって心が豊かになるのが芸術の力であり価値。

大澤: 90年代は多分野の人たちが集まって話をすることが結構あったが、最近は専門分野に分かれてしまっている。金森さんはいろいろな分野の交点になるような触媒になれるのでは? しかも東京ではなく新潟で。

金森: 新潟では対談企画の「柳都会」をやっているが、それとはまた違うことと思う。既存の文化の体制を変えたい。
・問題意識として、自分の同世代は40代、50代になり、老いや老後のことを考え出している。しかし今からでは遅い。20代の頃から考えなければならない。そのためにもこの本を読んでほしい。

大澤: この本を読んで、金森さんが100年スパンで考えていることに驚いた。そして自分は最初の方をやると書いてあることに感動した。
・舞踊は普遍的、本質的なもの。言語の前に音楽やダンスがある。言葉により日本では能が発展し、後に西洋のものを輸入していくようにもなる。
・集団を率いるというのは羨ましい。

金森: 集団は大変。一人だと楽だろうなと思う。

大澤: 静岡県のSPAC芸術総監督・宮城聰さんの苦労はよく知っているが、金森さんは宮城さんより大変だと思う。

金森: そんなことはない。自分ができたことは環境があればみんなができる。行政の人にはいい人もいる。
・カンパニーの維持や金銭問題についてはベジャールやキリアンでさえ苦労していた。

*このあと大澤さんは、吉本隆明と高村光太郎がどのように戦争と関わったか、転向論について話され、日本のどこに問題があったのか。知識人は大衆から遊離、孤立し、その孤独感に耐えられなくて転向する等、お話がどうなるのかと思いましたが、最後にはぐっと引き寄せて、
「金森さんは、一般の感覚と西洋のものの間に何とか連絡をつけて日本の文化として定着させたいとしている」とまとめてくださいました。

大澤: 感染症やウクライナ、核など、世界が迷っているこの時代に、日本はただ世界の後に付いていくだけ。
・感受性に対して揺らぎを与える芸術こそが役に立つ。
・少しずつ物事の見方を変えていく。
・金森さんは劇場文化の困難な道を進んでいる。

金森: そんな大層なことではなく、ちょっとやり方や使いみちを変えれば実現できること。
・劇場はもっと別な使い方をした方がよい。劇場のあり方に自分の人生を賭けている。
・ヨーロッパにいた時も、帰国してからも自分は移民・アウトサイダーだが、日本も新潟もアウトサイダーをうまく活用できるかどうかがカギ。

大澤: アウトサイダーがどのように文化を豊かにするか。
・金森さんは思春期~青年期に日本にいなかったので、日本人として社会人にならなかったのがよかった。
・ムラ社会に取り込まれなくてよかった。

金森: 日本は島国だから。でも外来文化を受け入れるマレビト的な考え方もある。
・自分は運がいい。危機的な時に限って決定的なことが起こる。助けられるとやらなくちゃいけない。

*大澤さんが終始「金森さんがやってきたことは、苦労、不可能、困難、難しい」等々を連発するので、金森さんは「それを言うのをやめてほしい」とことごとく談判! 
その結果、「金森だからできた。ではなく、金森ができたのだから他の人もできる」という共通認識になりました。

金森: 誰でも楽勝!
・時間とお金を使って観るだけの価値があるものを提供するのが劇場。

*時間になって一応トークが終わり、質問コーナーでは、東洋性と西洋性との折り合いについて、つらかった時期の解決法、新体制について等の質問がありましたが、『闘う舞踊団』にも書かれていますのでどうぞお読みください。

Q: 国の文化政策の課題は?という質問に対して、
金森: 確かに他国と比べて国の芸術予算は少ない。
でも(東京は劇場が減ってきて、人口に対して劇場の数は多くはないが)、他の地域は劇場(ハコ)もあるし、補助金も出る。
ハコも予算もあるのだから、少し考え方を変えるだけでやっていけるのではないか。
国の芸術予算は無駄な支出が多いと思う。官僚の皆さんは頭がいいのだから、補助金の出し方も踏襲のみではなくて考え方を変えたらいいと思う。

お話はだいたい以上です。割愛だらけで申し訳ありません。
トーク内容は、本に書いてあることもたくさんありましたので、どうぞお読みくださいね♪

最後に金森さんのひとこと: 一人ひとりが唯一無二。わかり合えないのが大前提。

やはり苦労してますね~
おつかれさまでした♪

トークのあとはサイン会があり、井関さんの臨時サイン会もあったようですが、私は日帰り参加のため残念ですがトークのみで直帰しました。

会場では、東京の友人知人に会えましたし、夕(せき)書房の高松さん、金森さん、井関さん、山田さん、浅海さん、三好さん、糸川さんに挨拶できてよかったです♪

(fullmoon)

「纏うNoism」#04:庄島さくらさん

メール取材日:2023/2/22(Wed.)&3/4(Sat.)

新潟と東京で大きな感動を呼び起こして幕をおろした『Der Wanderer-さすらい人』。まだまだその余韻に浸っているところですが、その後半すぐ、『糸を紡ぐグレートヒェン』で鏡面のこちら側からあちら側へと越境し、その不穏さのままに此岸から彼岸へ越境してしまい、観る者の心を大きく揺さぶった庄島姉妹の妹さん・庄島さくらさん。今回、4回目を数える「纏うNoism」にご登場です。お楽しみください。

「エレガンスとは目立つことではなく記憶に残ることだ」(ジョルジオ・アルマーニ)

それではさっそく拝見いたしましょう。

纏う1: 稽古着のさくらさん

敢えての「傾き」にキュンキュン♪

 *品のある色合いのadidasジャージをすっきり着こなすさくらさん、とても素敵です♪ この日の稽古着をご説明願えますか。

 さくらさん「ジャージは母からのおさがりです。写真では見えていないのですが、ジャージの下にはYumikoのレオタードを着ています。速乾素材で汗をかいても冷えないので、よくトレーニングで着ています。靴下はadidasです。履き心地が気に入っていて、同じものを何足も持っています」

 *「お母様からのおさがり」というadidasのジャージですが、お母様もバレエなどなさっておられたのでしょうか。そしてすみれさんと供用のおさがりなのでしょうか。まずそのあたりからお訊きします。

 さくらさん「母はバレエをやっていないのですが、普段、体を動かす時に使っていたものをおさがりで貰いました。どちらの物とは決まっておらず、すみれとは共用で使っています。でも私が着ている時のほうが多い様な気がします」

 *そうなのですね。そしてYumikoに関してですが、バレエをやる人たちに人気のブランドなのですね。そのあたり、私は疎いのですが、皆さんはご存知かと。で、色やデザインのラインナップも豊富なようですけれど、お好みアイテムはどんな感じのものなのでしょうか。

 さくらさん「Yumikoのレオタードは今まで様々な色や形をオーダーして着ましたが、結局黒やシンプルな形のものを好んで着ています」

 *そして今回も出ました、靴下!で、さくらさんはadidas推し!「勝利の3本線」入りなんですよね、きっと。そうですか、そうですか。でも、メンバー皆さん、お気に入りの靴下があるのですよね、毎日身につけるものだけに。

纏う2: さくらさん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

背中に翼、可愛いですねぇ♪

 さくらさん「この写真は、スロバキアのバレエ団にいた時に、踊った『ドン・キホーテ』という作品のキューピッドの衣裳です。初めてのバレエコンクールで踊ったキューピッドを約20年後にまた踊ることができて思い出深かったです」

 *今回もまた出ました『ドン・キホーテ』!コンクールでっていうのも前回の中尾洸太さんと一緒!でも、珍しいことではないのかしらん、とも。で、そのキューピッド、初めてのコンクールのときのことを少し教えてください。

 さくらさん「初めてのコンクールは小学生の時でした。当時、私は同年代の子たちに比べると身体が小さく、皆がお姉さんに見えて怖かった記憶があります。この時の衣装も思い出深く、祖母が一から作ってくれました」

纏う3: さくらさんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 さくらさん「『鬼』は私がNoismに入って、初めて穣さんから直接振付をもらって練習をした作品なので、思い出深く衣裳も印象的でした」

 *Noism Web Site へのリンクを貼ります。
 2022年のNoism×鼓童『鬼』画像です。ご覧ください。

 *その『鬼』、和のテイストも漂う赤い袖の衣装から黒のレオタード調の衣裳への変化も見応えありました。そのあたり、踊っていていかがでしたか。

 さくらさん「鬼の後半の黒の衣装に変わるところは空気が変わる感じがします。隠していた本性が出てしまった様な、キリッとした緊張感が自分の中に走ります」

 *まさに、まさに。まさしく、まさしく。空気が変わる感じ、物凄いものがありましたよね。今も容易に思い出すことができます。

纏う4: 普段着のさくらさん

もふもふも素敵、上品な冬の装い

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

さくらさん「この日のポイントは防寒です!新潟の冬は雪が降るのはもちろん、風が強い日が多いのでフードのあるコートは必須ですね」

 *防寒、大事です!in 新潟。福岡出身のさくらさんですから、新潟の冬はかなり厳しいものに感じられている筈ですけれど、手袋なしでポーズをとるチャーミングな写真からはそんな様子も窺えず、寒い屋外さえそれなりに楽しんでいる感じがしますね。いい写真です♪

 *ところでスミマセン。双子になったことがない(←当然!(笑))ので、お訊きしたいのですが、すみれさんと共用で着ているものなどもあったりするのでしょうか。

 さくらさん「稽古着は共用で使っている物もあります。一応どちらの物と決まっていることが多いのですが、借りたり貸したり」

 *そうなのですね、アゲイン。「便利」っていうと違うのでしょうけれど、でもそんな側面もあるのかなぁと。まあ、双子になったことがない(←当然!アゲイン。(笑))ので、あくまで想像してみるだけですが。

 *もうひとつ、さくらさんとすみれさんについてお伺いしますが、おふたりのの好みは似ているのでしょうか。または、明らかに異なる部分があったりするのでしょうか。もしそうなら、どんな違いがあるのか教えてください。

 さくらさん「好みは似ていると思います。すみれが気に入ったものは私も良いなと思うのですが、その中でも『これ、すみれっぽい』とか『さくらっぽい』とかありますね」

 *な~るほど。ところで、「さくら」も「すみれ」も、どちらも色を連想させるお名前ですが、様々な場面で色を選択するとき、おふたりそれぞれ自分のお名前を意識したりすることはありますか。

 さくらさん「子どもの頃は持ち物をさくらはピンク、すみれは紫にして名前の代わりに色分けしていました。自分ではなかなかピンクの物をチョイスしないはずなのですが、自然とピンクの物が集まってきます」

 *名前の持つ力って、侮れませんよね、まったく。でもまあ、私の場合、「伸」と書くものの、伸びてないですけれど…。(笑)余談でした。(汗)

 *忙しいさなか、様々な質問一つひとつに、丁寧にお答えいただき、公演で目にする情感豊かな舞踊と相俟って、人柄にも惹かれました。どうも有難うございました。

さくらさんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂きました。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつも応援してくださり、本当にありがとうございます。早いことにNoismに入り2年目。まだまだ未熟な私ですが、皆さまの温かい声援に背中を押していただいています。これからもどうぞよろしくお願いいたします」

…以上、「纏うNoism」第4回、庄島さくらさんの回をお届けしました。『Der Wanderer―さすらい人』世田谷公演直前&直後の取材となり、大変お忙しいところ、どうも有難うございました。

当ブログでご紹介してきたさくらさんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑯(庄島さくらさん)
 「ランチのNoism」#15(庄島さくらさん)

今回の「纏うNoism」もお楽しみいただけましたでしょうか。で、次回登場するのは勿論、あのヒト!またまた乞うご期待ということで♪ではでは。

(shin)