東京文化会館小ホールに登場したNoism

Noism1特別公演:『Mirroring Memories-それは尊き光のごとく』 〈上野の森バレエホリデイ2018〉(2018/04/28~30)

山野博大(バレエ評論家)

初出:サポーターズ会報第34号(2018年7月)

 東京で本格的なバレエ公演が行われるところとしては、上野公園にある東京文化会館の大ホールが広く知られている。その正面入り口の左手の緩やかなスロープを登ったところにあるコンサート用の小ホールが舞踊のために使われることは最近ではほとんどない。しかしここは天井の高い石造りの荘重な雰囲気を漂わせた空間であり、かつてはときどき舞踊にも使われていたのだ。その小ホールに、会館主催の《上野の森バレエホリデイ2018》の特別公演として新潟市の公共ホールりゅーとぴあの専属舞踊団 Noism1 が登場した。そして金森穣の新作『Mirroring Memories -それは尊き光のごとく』を上演した。ドアーサイズの鏡10枚を横に並べた舞台がひろがっていた。鏡は半透明でその後ろにあるものに光が当たると、前と後ろが同時に見える仕掛だ。鏡をいろいろに並べ替えて舞台を作った。

 金森のソロから始まった。シェイクスピアの芝居などで開幕に役者が登場し口上を述べる場面を思い出した。しかしこれは、エコール=アトリエ・ルードラ・ベジャール・ローザンヌで、彼が振付を習った当時の初心を振り返るシーンだった。金森は、師の舞踊劇創作の手法を彼の方法で踏襲し、作品を創り続けてきた。ここでは、2008年の『人形の家』より「彼と彼女」、09年の『黒衣の僧』より「病んだ医者と貞操な娼婦」、10年の『ホフマン物語』より「アントニアの病」、11年の『Psychic 3.11』より「Contrapunctus」、12年の『Nameless Voice』より「シーン9-家族」、14年の『カルメン』より「ミカエラの孤独」、15年の『ASU』より「生贄」、16年の『ラ・バヤデール-幻の国』より「ミランの幻影」、13年の『ZAZA』より「群れ」、17年の『マッチ売りの話』より「拭えぬ原罪」のハイライトを次々に披露した。

 黒衣(くろご)とか、後見(こうけん)と呼ばれる舞台で演技者を助ける役割の者が、日本の能、歌舞伎、日本舞踊などの世界には存在する。彼らは着物の肌脱ぎの手伝い、早替わりの糸の引き抜き、小道具その他の受け渡し、不要となったものの取り片付け、役者の座る椅子の調整などを行っているが、もともとは演技者が舞台を続けられなくなった時に、即座に代わることを主な役割とする人たちだった。客席にいる将軍などの要人に対して、舞台の中断があってはならないという配慮から用意されたと言われている。

 その黒衣が金森の作品にはしばしば登場して重要な役割を担ってきた。後見は着物姿だが、黒衣は黒装束に黒頭巾。日本の古典芸能の世界では、どちらも観客には見えていないことを約束事として舞台は進行する。ところが金森の使う黒衣は、黒の装束は同じでも、その役割はずっと重い。ドラマの進行そのものが黒衣のコントロール下にあるような感じを受ける場面もあるほどだ。主役同士の互いの意志だけで世の中の諸事が進むわけではなく、何かより大きな力によって思いがけない結末に転じて行くのが現実だ。そのようなところで、彼らの存在が際立つ。『Mirroring Memories』を見て、私はその感をいっそう深くした。

 最後は金森と井関佐和子のデュエットだった。女性ひとりを舞台中央に残して彼らは鏡の背後に…。鏡のそれぞれには、それまで彼の作品を踊っていたダンサーたちがすでに並んでいた。その眺めは、役者の絵看板を並べた芝居小屋の風景であり、人気俳優のブロマイドを並べたような感じでもあった。彼は、日本の舞台芸能独特の黒衣を有効に活用する手法も加味して、師匠のベジャールに倣い舞踊劇を作り続けてきた。ここで上演された『Mirroring Memories』では、ハイライトを並べたことにより、彼の手法がより明確になった。 

 私は、彼が選んだ作品のすべてを見ていなかったし、そのハイライト部分がオリジナルのどのあたりだったかを明確に特定できないこともあった。また舞踊作家自身が自身の過去の作品を再演すると、どうしても今の自分を抑えきれず、オリジナルから離れるものだ。そんなこともあって、次々に手際よく展開された上野文化会館小ホールでのダンスの奔流を、私は彼の最新作という印象で見せてもらった。

サポーターズ会報第34号より

「私がダンスを始めた頃」⑪  西澤真耶

私が舞踊の世界に入るきっかけとなったのは4歳の時の出来事です。ある日突然、友達から「一緒にバレエやらない?」と誘われて、「うん、やる!」と二つ返事で答えたのがはじまりです。

バレエなんて見たこともなければ聞いたこともなく、何も知らないまま、近所の文化センターで開かれている講座の1つ『子供バレエ教室』に友達と応募しました。しかし応募人数が多かった為に抽選になってしまい、そこで私だけが入ることに。

バレエについての情報が何もないまま教室の扉を開けたのですが、身体が硬くて、音痴で、振り覚えの悪い私にはとても辛く、すぐにでも辞めたいと思っていました。ですが、負けず嫌いの私は自分に出来ないことがあるのが気に入らなくて、誰にも見られないところで自主練をしていたのです。(家族にも見られないように隠れていました。)

練習の甲斐があり徐々にできるものが増えてくると、バレエの先生はすぐに気づいて褒めて下さるので、それが嬉しくて、バレエは辞めずに続けてこられました。

小学校4年生の時、バレエの先生が出演している舞台を観に行きました。『くるみ割り人形』でした。客席に座って舞台を観たのはこの時が初めてで、キラキラした衣裳や舞台の華やかさにも感動したのですが、私の目を釘付けにしたのはダンサーの美しい身体でした。この時の感動から私のバレエへの想いは変わり、後に11年経って今の仕事に繋がりました。

“美しい身体”これは今でも私の目標です。 これからもずっと自身の身体を用いて追求していきたいと思います。

(にしざわまや・1997年東京都生まれ)

*2021年7月退団

メディア向け公開リハ(DAY 3)は『Mirroring Memories』から

「15周年記念公演」の初日を8日後に控えた2019年7月11日(木)、薄曇りでやや風の強い午後、りゅーとぴあ・劇場を会場とするメディア向け公開リハーサル(DAY 3)および金森さんの囲み取材に出掛けてきました。

ここ数日、活動継続を巡るメディア露出が続くなかとあって、マスコミ関係者もいつになく大勢参加していました。

私はと言えば、運よく、一連の公開リハ3日間「皆勤」でしたので、「今日は何を見せてもらえるのだろう?」と少し余裕も感じていたのですが、スタッフの「『Mirroring Memories-それは尊き光のごとく』の一部をご覧いただきます」の声に、「3日間とも趣向が違うんだ」と思いながら、劇場への扉を通ると、すぐに舞台上でアップを続ける舞踊家たちの姿が目に飛び込んできて、いきなり、気分は上がりまくりでした。

この日は、導入部とエンディングを除き、「黒衣」に纏わる「黒い印象」を持つオムニバス部分を全て通して見せていただきました。本番の照明こそありませんでしたが、あの伝統的なイングランド民謡が流れ出すと、もうそこは「妖術」でも幅を利かす世界かと見まがうほど。でもそれ一色ではなしに、心を締め付け、涙腺を狙い撃ちするかのような場面も挿入されるしで、まさに目も眩むばかりの怒涛の展開。『ホフマン物語』『カルメン』『ASU』『ラ・バヤデール』…。抗うことなく、呑み込まれてしまうのが得策です。贅沢に感情を揺さぶられ続けることでしょう。

「OK, guys! Much better! Much better in every scene….(どの場面も随分よくなった)」金森さんの言葉が聞こえて、公開リハは終了。ついで、ホワイエでの囲み取材がもたれました。

いつも以上に、この日のマスコミ各社には色々尋ねてみようという思いがあったようでした。見たばかりの『Mirroring …』が比較的言語化しやすい作品に映ったことで、敢えてこの時期にぶつけてきたのかとの問いに、金森さん、「一年も前から会場(劇場)を押さえて準備してきているので、今のこの状況はわかる筈もなかった。文化的に価値のあるものをやるのであって、説得のためにやるのではない」とキッパリ。

『Mirroring…』の構成順に「上野の森バレエホリデイ」のときと異同がある点に関しては、ラストのワーグナー『夢』の前に井関さんのソロ(『痛み』)を追加したことで、そのままの順序とはいかず、一箇所シャッフルすることになったものとのこと。金森さんは今回の『Mirroring…』を「改訂版再演」とも「劇場版は初演」とも言っていましたから、上野でご覧になられている方も必見かと。

以下に、金森さんが質問に答えるかたちで語ったことを少し紹介してみます。

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『Mirroring …』、黒衣と鏡が印象的な作品。黒衣は場面毎に多義的であるが、総じて抗いようのない力、宇宙における「ダークマター」的な存在の象徴。一方の鏡、そのメタファー(隠喩)。各パートが乱反射し合って、記憶を構成する。その時間軸の体験を通して、「ああ、Noismだね」と理解されるものがあるとしたら嬉しい。

「15周年記念」という思いが強いのは、『Fratres I』の方。群舞であって、国籍も異なる皆でともに祈るように踊る。今の新潟で、今の現実は振り払おうとしてもできることではない。いつも以上に気合が入っているところもあるし、今まで通りに信じていること、踊りにしかできない表現を真摯に届けようという思いもある。

20世紀が「舞踊の世紀」(モーリス・ベジャール)なら、21世紀は「身体の世紀」。人間がもつ身体とは何かが問われる。頭で作られた国籍や性差などにどう向き合っていくか。

市民有志による「要望書」提出の動きには本当に感謝しかない。あらゆる対策を練らねばならない。この状況、ただひとり舞踊事業の問題にとどまるものではなく、自治体(新潟市)がりゅーとぴあ及び劇場文化政策をどう捉えているかが問われている。等々…。

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幕があがるまで、あと8日。今は幸福な「おあずけ」状態を一瞬一瞬ドキドキしながら過ごすことと致します。皆さま、劇場でお会いしましょう。

(shin)
(撮影:aqua)

市長に要望書。「新潟市の誇り」Noism、市長が変わっても、体制が変わっても…

7月10日(水)16時、Noismの活動継続を求める市民有志10名が新潟市役所に集い、中原新潟市長に要望書を提出しました。

要望書は2通あり、一般の立場として竹内葵さん(大学2年)が、Noismのワークショップを受けたこともある高校ダンス部OBの立場として早福圭太さん(大学1年:現在、大学でモダンダンス部に所属)が、それぞれ要望書を読みあげ、中原市長に手渡しました。

そして、新潟日報夕刊「おとなプラス」にNoism『カルメン』モスクワ公演の記事を書かれたライター本間大樹さんが中原市長に思いを伝え、記事掲載の夕刊を手渡し、そのあと参加有志全員がNoismへの思いを一言ずつ話しました。

最後に市長からもお話をいただきました。Noismを応援している市民の声を直接聴くのは初めてとのことでした。

要望書提出というと、険悪な雰囲気を想像されがちかもしれませんが、そういうことは全くなく、市長も終始好意的に接してくださいました。

市長からは、Noism検証会議での有識者の意見や、今日の私たちの要望を聴き、いろいろな観点から検討して、8月末までに判断するとのことでした。私たちの要望が少しでも活動継続への要素になれるとうれしいです。

15分の面談時間が終わり、市長が退室したあと、齋藤正行さん(さわさわ会会長、シネ・ウインド代表)、早福圭太さん、越野泉(NoismサポーターズUnofficial)の囲み取材があり、マスコミの方たちからいろいろな質問がありました。たくさんのマスコミの方たちに来ていただき感謝しております。

そのあと、新潟市芸術文化振興財団を訪れ、同様の要望書を提出しました。

後日、新潟市議会にも要望書を提出する予定です。

Noismの発展的活動継続を願っています。

(fullmoon)

「私がダンスを始めた頃」⑩  チャーリー・リャン

ダンスを始めるまで、私は日常生活で運動らしいことはしていませんでした。当時、私は勉強するだけの日々を送っていたのです。高校卒業後に何がやりたいか、何をすることになるかなど見当もつかないままに。また、放課後に何かしようにも、余計なお金などありませんでしたし、私にとっての唯一の娯楽はテレビを見ることでした。でも、それがダンスを始める理由のひとつになったのです。

ある日のこと、私はダンスを扱う番組を見ました。踊っている男性ダンサーたちがとても魅力的なさまを見たのです。私は彼らから目を離すことが出来ませんでした。その時以来、私はYouTubeやほかのソーシャルメディアで本当に多くのダンス・ビデオを観るようになり、私が観たダンスがコンテンポラリーダンスと呼ばれるものであることを知りました。

私はビデオを通じてダンスを学ぼうとしましたが、それまで学んだこともありませんでしたし、誰もコーチをしてくれる人もいませんでした。その瞬間です、私は自分が何をしているのかわかってはいませんでしたが、私はそれを本当に楽しんでいましたし、初めて何かに夢中になることを経験し、ダンスについてもっと知りたいと思うようになったのでした。

そんな訳で、高校を卒業すると、私は香港演藝学院(HKAPA)に出願しました。しかし、ダンスのクラスを取ったこともなければ、ダンスの経験もまったくなかったのですから、勿論、結果は不合格。 その後、私は別の科目を学ぶことを選んだのですが、ダンスは諦めませんでした。勉強はもちろん、ダンスのクラスを受けるためのお金を稼ごうと、週末にはアルバイトもしました。その年、私は勉強と仕事とダンスでもうくたくただったのですが、何かを得ようと戦っている感覚は嫌いではありませんでした。すべては待つ者のところにやって来るものです。翌年、私は晴れてHKAPAのコンテンポラリーダンス専攻課程に入学することができたのです。

(日本語訳:shin)

以下はチャーリーさんが書いた元原稿(英語)です。併せてご覧ください。

Charlie Leung

Before I started dancing, I never did any exercises in my daily life. At that time, there are just studying in my life. I didn’t even know what I want to do and what I will do after high school. Also, because there was no more extra money for me to join any after-school activities, the only one entertainment I can do was watching TV. It’s also one of the reason to start dancing.

One day, I watched a TV program about dance. And I saw that the male dancers was so charming when they were dancing and I could not take my eyes out of them. From that time, I started to watch so many dance videos on YouTube or any other social media and I found out that the kind of dance I watched is called contemporary dance. I tried to learn dancing from the video but I didn’t learn dancing before and no one was coaching me. At that moment, although I didn’t know what I was doing, I was really enjoying it and it was my first time that I was really into something and want to know more about dance.

That’s why, after graduated from high school, I applied the dance school of Hong Kong academy for performance arts(HKAPA). But I didn’t take any dance class before and didn’t have any experience in dance. Of course, I failed it.

After that, I chose to study another subject, but I didn’t give up dancing. Except studying, I went to do some part time job in weekends to earn some money to take dance class. In that year, although I was so tired between study, work and dance, I liked the feeling that fighting for something. Everything comes to one who waits. In next year, I got in HKAPA, majoring in contemporary dance.

(1993年香港生まれ)

*2021年7月退団

七夕の公開リハーサルDAY 2、新潟市はこの日も夏模様

公開リハーサル2日目は2019年7月7日(日)、自動車の外気温表示によれば、外は30℃越えの「真夏日」。幸運にも、前日に続き、2日目の公開リハも見せていただきました。

のっけから誠に恐縮ですが、この日のレポートに先立ち、別のお話から書き出すことをお許しください。

時間は少し遡ります。七夕の公開リハに備えて、朝から時間を過ごしていたところ、突然のニュースが目に入ってきました。訃報。ジョアン・ジルベルトが亡くなったことを報じるYahoo!の見出しに動きが止まります。享年88。まだ若いじゃないか。毎年、今頃からの灼けつく夏本番には、彼のボサノバを聴いて、涼風を感じていたというのに…。切ない。心に大きな穴が開いたよう。りゅーとぴあまで走らせる車中は『ゲッツ/ジルベルト』を聴きながら。いつも同様、色褪せることのない音楽ではありますが、見上げるコントラストの強いなつぞらは寂しげに映るより他ありませんでした。そんな人も多かった筈。幸い、Noismがあってくれたお陰で、私の心の隙間はなんとか埋められたのですが…。心よりご冥福をお祈りいたします。

前置きが長くなりました。さて、本題に戻ります。公開リハDAY 2です。

なんと、この日は『Mirroring Memories-それは尊き光のごとく』後半と『Fratres I』を見せてもらえるとのこと。なんという大盤振る舞いでしょう。前日からの「そうだったらいいなぁ」が現実のものとなり、12時、スタジオBに入る頃には、件の憂愁もすっかり影を潜めていたことを書き添えておきます。

前日の最後の場面からのスタートです。

『Mirroring …』後半はオムニバス形式の断章が見事に撚り合わせられ、ラストに向かってぐんぐん進行していきます。傍らで視線を送っていた知人のなかには感極まって涙する姿も見られたくらい、観る者の感情を揺さぶってくる力には尋常じゃないものが漲っていました。また、通常なら舞台袖として隠れている部分も「あらわし」になっていますから、引っ込んだ後の(早)着替えの様子もすべて見えていて、その速さもさることながら、一つひとつ断章であって、本来繋がってはいないものを次々踊っていく「役への入り方」にも並々ならぬものがあるのだろうことをこの日は感じさせられました。

休憩を挟んだ後は『Fratres I』。群舞におけるシンクロ具合は、前日の比ではありません。更に2週間弱の錬磨の果てにどんなものを見せてくれるのか、既に圧倒される準備はできています。

未だ「完成形」ではない公開リハを見たに過ぎませんが、今回の2作品が、金森さんの恩師モーリス・ベジャールからご自身へ、更に金森さん振り付けの諸作を通して、若き舞踊家たちの未来へと繋がる、通時の「縦糸」を表出する『Mirroring …』と、「同士」を意味しながら、敢えて金森さんと井関さんを若い舞踊家たちのただなか、等価の位置に置き、共時の「横糸」を示す『Fratres I』との組み合わせであり、その「結節点」に、金森さんと井関さんを観るという体験は、まったく趣きを異にする2作に、コンテンポラリーダンスの過去、現在、未来すべてを包摂しようとする志向性を楽しむ公演と言って差し支えないでしょう。余計なことを書きました。要は、本番が待ち遠し過ぎるということです。

そして、公演前にもう一度、マスコミ向けの劇場リハーサル(DAY 3:7月11日・木曜日)も見せていただけることになっておりますので、また、レポートしたいと思います。

(shin)

文月、なつぞらの新潟市・公開リハーサル DAY 1

Noism新作公演の公開リハーサル初日、2019年7月6日(土)の新潟市はここ数日の「曇り空+蒸し暑さ」から一変、青と白のコントラストが美しいなつぞら。

昂ぶる気持ちを抑えつつ、11時50分の入場を待った活動支援会員たちの「幸福」はおわかりいただけるものと思われます。

会場のスタジオBへ導かれると、それぞれアップに余念のない舞踊家たちの姿。衣裳の質感や細部までガン見できる至近距離!

正午を少しまわった頃、公開リハDAY 1は始まりました。この日は『Mirroring Memories -それは尊き光のごとく』の前半部と新作『Fratres I』を見せていただきました。照明こそありませんでしたが、どちらも本番の衣裳を纏ってのリハーサルに、観ている側の気分も上がりました。

先ず、『Mirroring …』前半ですが、チラシ裏にある順序とは異同がありました。新たなパートも加わるのでしょうし、昨春の「上野の森バレエホリデイ」から進化・深化した舞台になること請け合いです。また、「上野」時からのメンバー変更に伴う入れ替えも「なるほど」って感じでした。

そして、5分の休憩を挟んで、新作『Fratres I』を待ちます。金森さんから「トイレへ行ったり」など促されましたけれど、誰も席を立つことなく、「板付き」のポジションで、入念に動きの確認をする15人の舞踊家を見つめ続けていました。

金森さんを含めた総勢15人による、知らされている通りの群舞作品です。もしかしたら、少し引いて観た方が凄みが伝わってくると思われ、(←個人的な印象です。)至近距離の椅子に腰掛けながら、上体を後ろに反らせて、視界に入る人数を増やすようにして見つめました。

また、個人的な話で恐縮ですが、行きも帰りも、車のなかでペルトの『フラトレス』を流しながら往復したのですが、行きの「どう創るのだろう?」が、「そう来るのね!」に替わって帰宅することになりました。同じ音楽なのですが、聞こえ方がより深くなったようにも感じました。

で、ここから先は、まだ目撃したのが10名足らずの「新たな創作」であることに鑑み、衣裳をはじめ、ほぼ一切、書くことを慎みたいと思います。どうぞ悪しからず。

なつぞらの下のりゅーとぴあ界隈、スマホで撮った数枚の写真のうち、公開リハDAY 1で目にしたものに最も似つかわしい雰囲気をもつ写真はこちらでしょうか。新作公演、深い情緒に打たれること間違いありません。

まだ見ぬ新『Mirroring …』の後半と『Fratres I』の錬磨に期待が弥増すばかりの文月、土曜日の午後でした。皆々様、乞うご期待でございますよ。

(shin)

メルマガ担当者の「私が Noism にハマったわけ」

 メルマガ担当者のあおやぎです。私は新潟ではなく、北関東在住。バレエ・ダンス業界の縁辺域と接する立場に身を置いています。

 昨年10月に新潟市長が交替したこともあって、Noism の契約更新が滞っています。新しく就任された中原市長は、今年の8月末までに来年9月以降の活動について決断すると市議会で明言なさった由、新潟日報モアで拝見しました。

 また「強い支持がある一方、市民の理解度は不足していると認識している」と発言なさったとも。私として、この認識はまったく正しいと思います。

 国内公立ホールの文化事業の対象として、クラシック音楽に対する舞踊ジャンルの割合は実に微々たるものです。個人的には音楽を1とすると舞踊は0.05、つまり二十分の一に届くか届かない位ではないかと感じます。

 子供にバレエを習わせる人は多いですし、ジャズダンス教室に通う大人も多いようですが、興業としてのダンスを見に行く人は、残念ながら限られた数しかいないようです。特にコンテンポラリーダンスになると、私見ですが、首都圏でも客席にいるのは出演者の身内と業界関係者が約半数、どこでも見かける同じお客が二、三割、残りが数少ない一般客と言った有様です。市場規模が極めて小さいです。

 そんな状況なのに、りゅーとぴあは開館当初から他館との差別化を図るために自主事業でダンスに注力したとか、職員が金森穣を舞踊部門の芸術監督にしようと当時の市長に進言したとか、金森穣が就任受諾の条件としてダンスカンパニーの創設を提案したら、予算の範囲内でやるならいいよとOKが出た (!!!) などと言うのは奇蹟的なことに思えてなりません。

 しかも金森穣は天賦の才を存分に発揮して、日本を代表するどころか世界的にもトップクラスの成果を生み出すダンスカンパニーを新潟に作って維持し続けました。国内のダンスマーケットが首都圏に集中・偏在しているにもかかわらず、最高に輝かしい星が突如として新潟に生まれ、その輝きを保ち続けているのです。奇蹟です。

 私が初めて新潟へ Noism を見に来たのは中越地震直後の「black ice」公演でしたが、客席を見ると首都圏の状況とはまったく異なり、一般市民、もちろん芸術分野にアンテナを張っておいでの敏感な方々なわけですが、そうした観客がほとんどなので驚きました。市内の高校生までいるじゃないですか。こんな状況、首都圏じゃまったく考えられません。

 これは大変だ、と思いました。こんな凄い状況を作り出しているNoism を応援しないでダンスファンだと名乗れるか、みたいな。それで新潟へ通うようになり、ますます惹かれて行ったわけです。

 新潟の皆様、Noism を大いに誇ってください。皆様は世界トップクラスのダンスカンパニーとダンサーをお持ちなんです。もしそれを失うようなことがあれば、文化的にもイメージ的にも、計り知れない損失になりますよ。私はよそ者ながら、そうならないようにと祈るばかりです。

 (あおやぎ)

Noism盛りだくさんで胸躍る7月♪

下旬に『Mirroring Memories -それは尊き光のごとく』&新作『Fratres Ⅰ』公演を控えた7月は、早々(6日・7日・11日)に活動支援会員向けの公開リハーサルから始まる胸躍る一ヶ月ですが、それ以外にもNoism的に盛りだくさんで、楽しみ過ぎるコンテンツが目白押しです。

ここではそれらをご紹介します。

  • 『オドルフク』上映 & トークも!
  • サポーターズ・さわさわ会 合同 会員交流会 開催
  • サポーターズ メールマガジン配信開始!

■『オドルフク』上映&トークショー(@新潟市民映画館シネ・ウインド)

早春の3月24日(日)、新潟県政記念館にて、Noism1メンバー多数出演で開催された気鋭のデザイナーUTOPIA(佐藤悠人氏)による一味違う「ファッションショー」の様子が、梨本諦鳴(なしもとたお)監督(『アノソラノアオ』『A/KE/SA/KI』)の手により、もうひとつの『オドルフク』として登場します。

池ヶ谷奏さん、浅海侑加さん、ジョフォア・ポプラヴスキーさん、井本星那さん、カイ・トミオカさんがモデル&ダンスパフォーマーとして出演!チャン・シャンユーさんもモデルとして登場!(当日の模様については当ブログでも4月12日に写真入りで記事アップしています♪)

上映期間は7月20日(土)から7月21日(月)の3日間。料金:¥1,000円。

頑張れば、Noism公演とのはしごも可能かと。上映(34分)&トーク、合わせて1時間の予定だそうです。

上映時間およびトークショーについては以下のとおりです。

  • ① 7月20日(土) 19:30~20:30 UTOPIA ×五十嵐政人(アーツプロジェクトスクール新潟校ディレクター)
  • ② 7月21日(日) 17:30~18:30 UTOPIA × 長谷川雅史((株)新潟三越伊勢丹NIIGATA越品プロジェクトセールスディレクター)
  • ③ 7月22日(月) 19:30~20:30 UTOPIA × 池ヶ谷奏( Noism1:出演者)

*詳細に関しましては、こちらをご覧ください。 『オドルフク』詳細:https://www.cinewind.com/news/22801/

■NoismサポーターズUnofficial・さわさわ会 合同 会員交流会

日時: 7月20日(土)19:30~  (*出演者の参加はありません。)

 会場: オリエントイタリアン・Iry(イリィ)

     新潟市中央区西堀前通一番町694

 会費: ¥4,500(フリードリンク)要予約

 お申し込み: 当サイトの「お問い合わせ」欄からお申し込みください。もしくは、事務局090-8615-9942へ、お電話かショートメールでどうぞ。

会員に限らず どなたでもご参加いただけます。公演中日の熱い思いを肴に是非交流いたしましょう。

この日は同時刻に上記『オドルフク』上映もありますが、こちらもどうぞ宜しくお願いいたします。   

…そして、手前味噌ではありますが、…

■サポーターズ・メールマガジン、遂に発信!!

これまで告知して参りました「メルマガ」ですが、おおよそ準備も整い、いよいよこの7月初旬に配信開始の運びとなりました。

サポーターズとしましては、「インフォメーション」(=旧「会報」)、ブログ、twitterに次ぐ、4番目のメディアとして、広範で、きめ細やかな情報提供をして参りたいと思っております。

当ブログとも連携し、Noism情報満載で、楽しい記事を配信予定♪登録無料です。どうぞお申し込みください!

お申し込み:subscribe@noism-supporters-unofficial.info

当サイトの「メールマガジン登録」欄からもご登録できます♪

「インフォメーショ」、ブログ、twitterどれとも違う新テイストに、ご期待ください♪ そしてみんなで一緒にNoismを盛り上げて参りましょう。

抽選で読者の方への(ささやかな)プレゼントなどできたらよいな、と考えております。大勢の方のご登録をお待ちしております。

( fullmoon / shin )

井関さんトークセッション『跳ぶ前に聞け!』 (@京都芸術センター)レポ

6月26日(水)京都芸術センターで開催された『跳ぶ前に聞け!』。 http://www.kac.or.jp/events/26013/

井関佐和子さんが、舞踊経験者対象のダンスワークショップで講師を務め、WS終了後のトークセッションでは、司会者と参加者からの質問に応えるかたちで、お話が進められました。

京都芸術センターは、旧・明倫小学校(1869~1993年)を改修し、2000年に開館。懐かしさを感じさせる美しい歴史的建造物です(運営:公益財団法人京都市芸術文化協会)。

前日はNDTダンサーによるWSとトークが開催されており、どのような内容かはわかりませんが、司会者によると、前日とは雰囲気が違うとのことでした。ダンスWSは見学不可だったので、トークセッションについて箇条書きでご紹介します。

  • Noismバレエ、Noismメソッドについてのお話。
  • 「すり足」を1時間やって足が動かなくなり、その先に見えたもの。
  • 基礎、基本、鍛錬が重要。
  • やると決めたらちゃんとやる。
  • エネルギーを放射し続けるということ。
  • 10代の時に言われていたことが今わかる。
  • 年齢を重ねていくのは素晴らしいこと。
  • 今が楽しい。30代の頃より若返ったと思う。
  • 「新しいもの」なんて無い。「新しい視点」で挑戦し続けることが必要。
  • 外部振付家とカンパニーの関係。
  • NDT時代のお話。
  • NDTはキリアンがいた頃は若手を育てるという考え方があったが、今はシステムが変わり、そういう感じではない。
  • 予算のお話。
  • 予算が無いなら無いなりに作る(金森さん)。
  • ある程度の制限はかえって必要。

そのほか、Noism2のお話、メンバーが公演ポスター・チラシを配ることでお店の人に親しまれているお話、京都芸術センターで舞踊団を作ってはどうかというお話、来シーズンの公演のお話、等々々、楽しく和やかなトークで時間はあっという間に過ぎ、京都の夜は更けていきました♪

【追記】 本日からシアター・オリンピックスのチケット予約が始まります(シアター・オリンピックス・チケットオフィス:TEL 0763-68-2216)。そちらも見逃せませんね。

(fullmoon)