Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ROMEO & JULIETS』公開リハーサル、分厚さに圧倒される

(*今回の記事は、富山公演の会場であるオーバード・ホールが発信するDMにも
転載される予定です。)

2018年6月16日、風は肌寒くもありながら、動くと汗ばむという
寒暖が「混在」する土曜日の午後3時、りゅーとぴあ・スタジオB。
Noism1×SPACによる注目の新作、
『ROMEO & JULIETS』の公開リハーサルを観てきました。
この日朝の金森さんのツイートによれば、
参加申込者は43人。
いつものようにスタジオBの三方の壁面に沿って置かれた椅子に腰かけて、
第一幕の通し稽古を見せて貰った訳です。

りゅーとぴあ・劇場の舞台と同サイズで作られているスタジオBを、
冒頭、プロコフィエフのバレエ音楽に、役者の肉声での口上を重ね合わせることで、
あたかも謡(うたい)に似た一体感をもって耳へと達する響きのなか、
最背面から最前面まで、能のような摺り足で迫り出してくる舞踊家と役者。
「これから2時間ご覧あれ」と物語世界に誘われるのですが、
音楽と肉声、舞踊家と役者、西洋と東洋、
更に、これまでの作品で目にしてきた三角柱の塔や車椅子、ベッドといった
「金森穣的世界」の記憶を呼び覚まさずにはおかない装置に至るまで、
幾重にも重なり合う「混在」振りが示す「分厚さ」に目も眩む思いがしました。

伝え聞くところによれば、舞台は病院、それも精神病棟とか。
メンバーで最近鑑賞したという映画『カッコーの巣の上で』(ミロス・フォアマン)(1975)や、
ミシェル・フーコー『狂気の歴史』などをも彷彿とさせながら、
狂気と正気も「混在」していくのでしょう。

そして何より、タイトルが仕掛ける今回の配役も謎のままです。
池ヶ谷さん、浅海さん、井本さん、西岡さんと鳥羽さんの女性舞踊家5人が
「ジュリエットたち」であるだろうことは察しがつきましたが、
しかし、なにゆえ5人なのか。
更に、最も大きな謎は井関さん。果たして彼女は何者なのか。
5人を束ねる6人目なのか。

知らない者もないほど有名なシェイクスピアの戯曲に、多くの謎が「混在」し、
古典的な物語と、現代的な問題意識が「混在」する。
そうした多様に夥しい「混在」振りが私たちを途方もない幻惑へと導く作品のようです。
ならば、浴びるように観、浸るように観て、驚くこと。
しかし、緻密に構成された動きに至っては、
「謎」の対極にあるものとして観る者の目に飛び込んでくるでしょう。
その点に関しては揺るぎないものがあります。

金森さん曰く、役者の台詞はすべて河合祥一郎訳に拠っているとのことで、
多少、前後の入れ替えがある点を除けば、
他の『ロミオとジュリエット』の舞台となんら変わるものがないとのこと。
「それをNoismがやれば、こうなる」と金森さん。
役者の発する言葉と舞踊家の動きがスパークする、
この新作は、紛れもなく、現代における総合舞台芸術のひとつの在り様を
示すものとなることでしょう。必見です。お見逃しなく。

そして富山の皆さま。
昨年8月、射水市・高周波文化ホールでの洋舞公演において、
『Painted Desert』を踊った、和田朝子舞踊研究所出身の中川賢さんに送られた
熱狂的な熱い拍手と歓声の記憶も新しいところですが、
残念ながら、その中川さんもNoismの退団が発表されております。
ですから、中川さんの故郷・富山の地で、
Noismの一員としての中川さんを目にするのは、今回が最後の機会となります。
即ち、「凱旋公演」の趣のある、Noism在籍8年間の集大成の舞台。
中川さんは入魂の舞踊で、有終の美を飾ってくださるものと確信しております。
7月14日(土)のオーバード・ホール、是非ともご来場ください。
(shin)

【追記】
金子國義の絵が妖しい雰囲気を放つ、
河合祥一郎訳の角川文庫版・新訳『ロミオとジュリエット』。

冒頭の口上はこんな具合です。
「花の都のヴェローナに 肩を並べる名門二つ、
古き恨みが今またはじけ、 町を巻き込み血染めの喧嘩。
敵同士の親を持つ、 不幸な星の恋人たち、
哀れ悲惨な死を遂げて、 親の争いを葬ります。
これよりご覧に入れますは、 死相の浮かんだ恋の道行き、
そしてまた、子供らの死をもって
ようやく収まる両家の恨み。
二時間ほどのご清聴頂けますれば、
役者一同、力の限りに務めます。…」

声に出して読んでみると、独特の跳ね感ある河合訳のリズムと
金森さんのクリエーションは決して不可分ではないでしょう。
或いは、ここにももうひとつ「混在」を見るべきでしょうか。
そのあたりも、是非、劇場でお確かめください。

(池ヶ谷さん+中川さん)×Yuto Sato=「アーティストの日常」、それを垣間見る特別な宵♪

2018年6月2日(土)、昼は暑いくらいだというのに、
陽が落ちてしまうと、風は冷たく、もう「寒い」と言わねばならないような路地。
前日、池ヶ谷さんがSNSで寒さに備えるよう呼び掛けてくれていたお陰で、
震えずに済んだというもの。
行ってきたのは、新潟市学校町通にある、Yuto Sato(佐藤悠人)氏のアトリエでの
「Yuto Sato 2018 T-shirts 展示即売会」。

佐藤悠人氏とは、一言で言えば、
前の投稿でFullmoonさんも書いてらっしゃいますように、
「新潟の服飾デザイナー・ペインタ―」ということになるのでしょうか。
彼の即興のペン画に魅了された人も多くいらっしゃる筈ですが、
最近は、亀田縞や五泉ニットに新たな息吹を吹き込む製作をしておられ、
新潟伊勢丹が「メイドイン新潟」の品々をラインナップする好評企画
「越品(えっぴん)」にほぼ毎回呼ばれるなど、
ある意味、その「顔」となりつつある、今注目の気鋭の若手クリエイターです。
更に、Noismメンバーとの親交が深いことでも知られる男性アーティストでもあります。
そんな訳もあって、サポーターズのなかにも佐藤悠人ファンは数多くいらっしゃいます。
かく言う私もその一人で、この日はどちらも悠人さん作のスヌードを首に巻き、
ショルダーバッグを肩にかけて、いそいそ出かけて行ったような次第です。

この日のイベントは次の通り。
18:30(~22:00) 展示会オープニングパーティー
20:00 Noismダンサーによるパフォーマンス公演

せっかちな私は15分くらい前に会場に到着してしまい、一番乗りでした。(汗)
やがて、受付が始まったテントで、会費1,500円をお支払いすると、
悠人さんから渡されたのは、
池ヶ谷さん愛用の「ガチャピン&ムック」柄トランプで、「クラブの9」。
ドリンク引換券ということでした。
そのまま持ち帰りたい気持ちもありましたが、それを抑えて、
私はジントニックを作って頂きました。(笑)

20:00が近づくにつれ、続々とお客様が集まってきます。
Noismの公演会場でよく会う方、お見掛けする方。
はたまた、恐らく、佐藤悠人さんの繋がりの方。
そして、Noism、悠人さん双方と交流のある方。
やがて、Noismメンバーや新作「ロミジュリ」に出演される
SPACの役者さんたちの姿も見られました。

お手洗いの蛇口に至るまで、あらゆる部分が白く塗られた悠人さんのアトリエの
1階部分で行われるパフォーマンスを
ビルトインの駐車場に座って観るとのことでした。
アトリエ自体、お世辞にも広いとは言えないのでしょうが、(←失礼(笑))
駐車場に面したL字2面の建具を外すことで、
かなりのオープンスペースが確保されました。
昔の日本の家屋はよくできていますね。

正確な開始時間も、公演の長さも記憶しておりません。
恐らく、20時を少し回っていたのかと思いますが、
悠人さんがご挨拶され、公演開始を告げられると、
緞帳代わりに、鋲でとめられ、視界を遮っていた白布が外され、
目に入ってきたのは、左にミシン、右に無造作に山と積まれた白い布。
どこかで見覚えのある衣裳に身を包んだ中川さんが
2階からコーヒーカップを手に下りてくると、おもむろにミシンがけを始めます。
すると、右側、白い布のなかから池ヶ谷さんが登場。黒い新作Tシャツ姿です。

踊り出した池ヶ谷さんはさかんに中川さんを誘いますが、
中川さんはそれを微塵も意に介することなく、ミシンを踏み続けます。
客席側からは見えない柱に貼られた音楽プレーヤーに寄り、音楽をかける中川さん。
どうやらクリエーションに音楽は不可欠のようです。
その音楽に池ヶ谷さんも反応して、ソロのダンスを踊り出しますが、
それは主に苛立ちを表現したものでした。
ひとつの音楽のもと、ふたつ別々のクリエーションが進行する趣向です。

池ヶ谷さんがTシャツを脱ぎ捨て、
白いロングスカート姿になって気を惹こうとしても、
中川さんのクリエーションとの接点はうまれません。
中川さんがミシンを離れた隙に、椅子の向きを逆向きにして、
池ヶ谷さん方向を見ないではいられないようにし、
また違う音楽をかけてみても、
中川さんは、今度は池ヶ谷さんをモチーフに「絵」を描こうとするだけで、
別々のクリエーションのなかに留まったままのふたりです。

それが趣を変えたのは、中川さんの「産みの苦しみ」がきっかけでした。
ひとりになろうと椅子を動かしたものの、頭を抱える中川さん。
池ヶ谷さんが「椰子の実」(島崎藤村・作詞、大中寅二・作曲)を流します。
すると、その楽の音は孤独と向き合うクリエーターの心に染み入り、慰撫し、
ふたつバラバラだったクリエーションをひとつに纏め上げます。
そこまで踊らずにいた中川さんが池ヶ谷さんの横に立ってから、
この宵、初めてシンクロして踊られるデュエットはそれは素敵なものでした。

「椰子の実」 (Wikipediaより転載)
名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を離れて 汝(なれ)はそも波に幾月
旧(もと)の木は生(お)いや茂れる 枝はなお影をやなせる
我もまた渚を枕 孤身(ひとりみ)の 浮寝の旅ぞ
実をとりて胸にあつれば 新たなり流離の憂
海の日の沈むを見れば 激(たぎ)り落つ異郷の涙
思いやる八重の汐々 いずれの日にか故国(くに)に帰らん

ラスト、池ヶ谷さんが唐突に言葉を発し、中川さんがそれに応えます。
-「コーヒー?」
-「うん。」
件のコーヒーカップを手に、2階に消える池ヶ谷さん。終演。

階下の中川さんから「かな!」と呼ばれて、池ヶ谷さんが下りてきます。
大きな拍手がおふたりに送られるなか、「ブラボー!」の声も聞かれました。
大粒の汗を浮かべ、笑顔でお辞儀を繰り返す池ヶ谷さんと中川さん。
そして池ヶ谷さんに促されて登場した佐藤悠人さんは
帽子、眼鏡、スカーフ、服、パンツ、演じた中川さんと瓜二つの姿だったのです♪
また大きな拍手が沸き起こったことは言うまでもありませんね。

公演後もパーティーは続きました。
公演を観た後、誰の気持ちも昂揚していたのが見て取れるようでした。
古くからの閑静な住宅街の一画。
そこを舞台に服飾系の関心と舞踊系の関心とが混じり合い、
化学反応を起こしたアートの熱が寒気を上回る様子は、
「学校町通」の地名にも相応しく、
往時の「カルチエ・ラタン」もかくやありけむと思うほどで、
明らかに、あの時刻における新潟市内の一大ホットスポットと化して、
魅力溢れる時空が広がっていました。

素敵な公演と素敵な時間。
笑顔に彩られた親密な空気感を堪能して、
公演前に購入していた新作Tシャツを抱え、会場を後にしました。
「またこんな機会があるといいな」、
名残惜しく、立ち去り難い気持ちも抱えながら。
(shin)


【註】右の画像はパフォーマンスのなかで、中川賢「画伯」が描いた池ヶ谷さんの肖像画。