静岡公演 最終日、行ってきました & さわさわ会静岡懇親会 & 月刊にいがた情報

7月23,24日、バヤデール静岡公演に行ってきました!会場のグランシップ・SPAC静岡芸術劇場がある東静岡駅は、静岡駅の一つ東寄りの駅。構内にはバヤデールの看板がありました♪

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駅を出るとすぐグランシップがあります。shinさんも写真アップしていましたね。静岡芸術劇場はこの建物の一番奥にあります。

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静岡公演2日目、満員御礼となった千秋楽の舞台。宮前さん、田根さんの姿もお見かけしました。さすがは最終日です。

開演の前に、大沢真幸さんのプレトークがありました。バヤデールの見どころということで、内容解説をしてくださいました。

そして開演。今日も本当にすばらしい!!もう観ていてドーパミンが出まくりです。今回は5列目(前日は3階席)で観ました。静岡芸術劇場の座席は前の席の人の頭が全く邪魔にならないようになっていて、これは感激です! どこの劇場に行っても前の人のせいでよく見えなかったりすることがありますよね(私の後ろの人、すみません)。ところが静岡芸術劇場はそういうことはありません。すばらしい会場です!

ということで、広々とした視界でたっぷりと堪能させていただきました。しあわせ♪

ミラン、バートル、ポーヤン、俳優さんたちはもとより、どの役のメンバーも一人一人がすばらしく、生き生きと輝いていました。このメンバーが揃っていたからこそ実現したバヤデールであり、まさに感動の舞台!!

幕が下り、拍手と歓声の嵐、そしてスタンディングオベーション。新潟公演にも勝るどよめきがうれしい♪

終演後のアーティストトークはまず最初に金森監督が登場し、司会の大岡淳さんと、平田オリザ脚本についての経緯、言語を用いるということについて、発語における身体の専門性(SPAC)、Noismの社会化(大衆化ではない)、舞踊も言語と同じように何かを伝えることができる、というようなお話をしていると、俳優の貴島さん、奥野さん、たきいさんが登場。

舞踊家と同じ舞台に立ってのご感想を一人ずつ話されました。貴島さんは、舞踊家のエネルギーと対峙するためには言語だけでは無理で、舞台に立つ身体がどういうものでなければならないか、身体自体の存在感が必要と話されました。

奥野さんは、舞踊家たちが自分自身の可能性を追求し続ける厳しい姿を見て、自分の原点に立ち帰る思いがしたそうです。エネルギーを最大にしなければならない、プリミティブで原始的なエネルギー、鈴木忠志氏に叩きこまれた、これ以上やると空中分解してしまうギリギリまでやるという教え、そして何かを演じるのに無駄な演技でそれらしくするのではなく、呼吸を深くして言葉だけをしっかり発話することを指導されたこと、等を話されました。

たきいさんは、稽古を始める前は、舞踊家たちは発話しないということで、どうなるか不安だったそうですが、最初に一緒に合わせてすぐ、舞踊家たちは言葉ではない言語をもっているとわかり、セリフがなくても大丈夫と安心したそうです。自分のセリフについては自分で言って傷つくセリフが多かったそうです。

金森さんによると、平田オリザさん的な「ええ、まあ」とか「はい」というセリフはすべて省いたそうです。そのほか、新潟公演に比べて、セリフや振りがシンプルになっていきました。

この作品は記憶と慰霊がテーマであり、世代間の記憶の共有や、ある種の慰霊を表すことができるのが舞台芸術ではないかというお話でした。

また、金森さんは演劇にもとても興味があり、今度は半々(舞踊家10名、俳優10名)で創作してみたいとも話されました。

NoismとSPACは分野は違えど日本で二つしかない公立劇場専属プロ集団であり、今後も交流を深め、新潟と静岡で育まれている文化を、これからも世界に発信していくという共通認識でアフタートークは締めくくられました。

そのあとは、さわさわ会静岡懇親会!劇場2階のカフェシンデレラで開催。佐和子さんおつかれさまでした!

齋藤正行会長から「世界のお茶コンクール金賞受賞」の静岡茶と「こころを込めて」という静岡茶が花束の代わりに渡されます(参加者には笹団子も)。

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バヤデール、ほんと大金賞です。佐和子さんと和やかに話したり、サインをしてもらったり、写真を撮ったりと楽しいひとときでした♪

佐和子さんのブログ更新されましたね。長い長いツアー、本当におつかれさまでした。http://www.niigata-nippo.co.jp/blog/iseki/

翌日新潟に帰り、バヤデール興奮が冷めやらぬ私に、月刊にいがたの情報が・・・143ページNoismメンバーリレーコラムによると、「Noismでの3年の活動を終え台湾に戻るリンさん。」と書いてあります。ショック。。リンさんやめちゃうの!?  「穣さんを目標に振付家という夢に向かって頑張ります。」というリンさんのコメントもあります。 残念ですが、ますますのご活躍を期待しています。

そして、バヤデール鳥取公演情報も! 9月24日(土)16:00開演予定、 チケット:8月3日(水)発売予定、会場:米子市文化ホール、問合せ:BeSeTo演劇祭 問い合わせ窓口(鳥の劇場内)tel.0857-84-3268

鳥取公演にはリンさんも出演するみたいです♪ (fullmoon)

ツアー最終地、静岡公演初日を観てきました

2016年7月23日(土)、思ったほどの気温上昇もなく、曇天。
朝、新潟を出て、新幹線を乗り継ぎ、東静岡駅を目指したのですが、途中、分厚い雲がたちこめていて、残念なことに富士山の姿を拝むことはできませんでした。

静岡入りしてからはまず、Noismメンバーたちが食べていたハンバーグに舌鼓を打ち、夕方17時半過ぎに、目的地・静岡芸術劇場に到着しました。東静岡駅に向けて示すグランシップの威容に圧倒されながら、反対側にある入り口へ。受け付けや案内などをSPACの俳優の方々が担当しているなかに、新潟のNoismスタッフの姿を見つけ、やがて新潟から駆けつけたサポーターの方々と合流して話しをしながら、客席開場を待ちました。

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静岡芸術劇場はこじんまりとしていながら、アールが印象的な円柱に似た作り。開場時間になると、客席への入り口に立った小柄な芸術総監督の宮城聰さんに挨拶しながら入場するお客様が多くいらっしゃることに、「ここはあなたの劇場」を肌で感じることができました。「奥野さん、貴島さん、たきいさん、おかえりなさい」という思いの方々も多かったことでしょう。

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予定の開演時間18時半を少し過ぎていたでしょうか。静かに緞帳が上がると、鈍い銀色の慰霊碑、そして老いたムラカミの姿。ツアー最終地・静岡公演初日の舞台が始まりました。舞台を「額縁」のように区切る構造物を「プロセニアムアーチ」と呼ぶのだそうですが、こちらの舞台にはそれがないため、臨場感も格別です。いきなりムラカミの回想のなかに投げ込まれでもしたかのようでした。

恐らく、日頃からこちらでSPACの演劇をご覧になられているお客様の目には「劇的舞踊」の「舞踊」部分が、逆に、この舞台、この客席でNoismを観ようと臨まれたお客様の目には「劇的」部分が際立つ、そんな劇場と観客の構図だったのではないでしょうか。どちらにとっても新鮮な視覚体験だった筈です。

1ヶ月にも及ぶツアーも最終盤ということで、錬磨に錬磨を重ねた表現は身体化の度を深めていて、そんな俳優と舞踊家が拮抗する舞台は、「劇的舞踊」ならではの濃密な刹那の連鎖として観る者を揺さぶっていきます。

ここを「自分の劇場」とする豊かさを知る客席から、1幕では「壺の踊り」の終わりに、2幕では「影の王国」の終わりに、それぞれ大きな拍手が湧き上がりました。その拍手の極めて自然な様子に、SPAC18年の活動が達成した「結実」の一端を見る思いがしました。こうした劇場があり、こうした観客がいることは、両者にとって幸福な状況であるのは間違いないことでしょう。それこそ金森さんが常々口にされる「劇場文化」なのであり、他方、奇しくも、この日配布された公演プログラムが、他会場で渡される通常プログラムとは異なる、SPAC独自制作のもので、そのタイトルとして刷られた「4文字」もまさしく『劇場文化』なのでした。そんな同じ射程で営まれる劇場を有するふたつの祝福された土地、ここ静岡と新潟。贅沢なことです。
(なお、SPAC独自プログラムには、文芸評論家で舞踊研究家・三浦雅士さんによる劇評も掲載されていて、とても参考になります。こちらで読むことができます。http://spac.or.jp/culture/)  

話しをこの日の舞台に戻します。この日、「壺の踊り」や「影の王国」を超えて、私の目に強烈なインパクトを残したのは、ラストの結婚式の場面、上からの白い照明を浴びつつ、両眼を覆って立つ亡霊・井関さんのその立ち姿の強靭さでした。まるで見るのを拒絶することで、続くカタストロフィを引き起こしでもしたかのようです。そしてひとり、混乱に背を向けて舞台奥に去っていく・・・。そんな印象で振り返ってみると、舞台全体がまた別の遠近法で描かれたものに変貌していきます。

終演後、SPAC劇場総監督の宮城聰さんと金森さんが登壇したアフタートークでも、同じものを見つめて活動してきたおふたりであればこそ理解し合える先駆者の胸の内から話が始まりました。
クリエーションの過程で抽象化作業を通過することは観客の想像力を刺激することに繋がり、とても重要だとする点で認識の一致を見るおふたり。
「劇的舞踊」に関して、俳優と舞踊家、異なる身体表現者をその専門領域で対峙させることへの金森さんの飽くことなき意欲。
「物語」は普遍性を持ち得るが、ともすると、演者が「物語」のための絵の具や道具に成り下がってしまう危険性を孕むため、演じるカンパニーの力が問われるという宮城さんの指摘、等々。
本当に興味深い話ばかりだったのですが、なんと言っても、圧巻だったのは、宮城さんが携えて登壇していた平田オリザさん執筆の脚本から、その一部を紹介してくれたことではなかったかと思います。例として皇女フイシェンとミランふたりの場面を取り上げながら、平田さんによって書き込まれたミランの台詞を読み上げ、クリエーションの様子について訊ねると、金森さんからは、舞踊においては音楽が台詞なのであり、書かれた台詞を説明する必要性は感じなかったこと、ただ平田さんが何を思っているのか知りたかったので書いて貰った旨の答えがあり、創作過程の背景を少しだけ垣間見ることができました。

帰りの新幹線の時間を気にしつつ、ギリギリ粘って、なんとかおふたりのお話を聞き届けて、慌ただしく小走りで劇場出口に向かうと、既にそこには着替えを済ませた奥野さん、貴島さん、そしてアフタートークを終えたばかりの宮城さんまでもが挨拶に立たれていて、観客と時間を共有しながら「劇場文化」を育もうとする静岡芸術劇場の立ち位置が窺え、温かい思いを胸に会場を後にしました。

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さまざまな見方ができるこの豊かな舞台『ラ・バヤデール −幻の国』も、鳥取公演を別にすれば、静岡での千秋楽を残すのみとなりました。俳優と舞踊家、それぞれの身体が際立つ熱い舞台は生涯に渡る感動をもたらしてくれることでしょう。まだご覧になられていない方はこの機会をお見逃しなく。   (shin)

愛知公演に行ってきました!

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愛知公演バヤデール、これまでよりも更に磨き上げられ、演出も照明も変わり、出演者の気迫がみなぎる渾身の舞台でした!どこまで行くのか金森穣Noism!!

愛知会場が今回のツアーでは一番大きく、ステージもかなり広いので、それに合わせて当地でのリハーサルは相当厳しいものになったのではないでしょうか。見事な舞台に大拍手です!!!

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全体的に動きがより大きくなり驚きましたが、一番顕著に感じたのが前半の井関佐和子さんのミランです。今までとは何かが違う。バートルへの愛の喜び、そして悲しみ、苦悩がより鮮明になり、たおやかな中にも、運命に翻弄されるだけの弱い存在ではない、芯の強さ、激しさ、一人の女性としてのプライド、等がはっきりと感じられました。

このことはアフタートークで佐和子さん自身も話されていたので、私の目も案外節穴じゃないなと自画自賛、ではなく、佐和子さんの表現力がすばらしい!

後半の亡霊の踊りもとてもよかったです。今回ラッキーなことに、1階11列目のちょうど「あのライン」がまさによく見える席でした♪ 幻のように幽かな精霊たちの踊りが徐々に徐々に広がり、躍動感と力強さを増していく様子は圧巻! そして触れ合うことのないミランとバートル、残された衣裳のなんと儚いこと。。

最後の場面、幻の民の行進は神奈川バージョンでしたが照明は白系でした。あと、私は気づかなかったのですが、アフタートークによると、その前のシーンで柱が倒れる時、ステージに奥行きがあるので、なんと柱を奥の方に6本追加したのだそうです! ほかにも馬賊の仮面や亡霊の衣裳がグレードアップしたように感じたのは私の気のせい??振りも微妙に変わったところがあり、ますます素敵です♪

さて、アフタートークの司会はシニアプロデューサー唐津絵里さんの挨拶とご感想から始まり、最初に金森監督が登壇。愛知の大ホールでやると決まった時から金森さんはいろいろ構成を考えていたそうです。ここが一番ベストになると思っていたそうで、実際そうなったとのこと♪

金森さんは唐津さんの質問に応え、140年前の夢物語であったバヤデールを題材にして、今日的に蘇らせ社会化し、何かを感じさせ考えさせる作品を創りたかったこと、言葉を持ち込むことによって舞踊と演劇を対峙させ、それぞれの専門性を際立たせたかったこと、身体表現の専門性を信じ、これからも向き合っていきたいこと、等を話していると、着替えた井関さんと俳優の貴島さんが登場。

井関さんは、言葉にはすごく影響されるが、舞踊家として原点に立ち返り、発話しない身体の何をもってこれから挑戦していくかを考えていきたいということ、台本にはもともとミランのセリフは少ないこと、愛知公演ではミランは翻弄される弱い女性ではなく、自分で自分のことを決め、死さえも選択していく、ある意味でカルメン的な女性として捉えたこと、しかしそれは前もって決めるとかではなく、その瞬間に生まれる感情であること、等を話されました。

貴島さんは、俳優は言葉を武器にしていることを強く感じたこと、しかしこういう大きな舞台では言葉だけでは無理で、劇場で見せる、見られる身体の存在感がなければならないこと、金森さんには発話前の身体の状態、それから呼吸、そして声の音階という順で指導されたこと、今回のセリフは様式化されたものであり、非日常の舞台では非日常の言葉が必要なこと、ニュアンスを込め感情を露わにすると舞台が日常化してしまい、観客の想像を奪ってしまう、この舞台はそういうものではないこと、ムラカミの役はこの物語を引き受ける立場であり、最初のセリフで草原の国が観客に見えないと困ると思ったこと、等を話されました。

う~ん、NoismもSPACも公共劇場が擁するプロフェッショナル集団だけあって奥が深いです。ちなみに俳優さんたちは日々のNoismメソッドはもちろん、バーレッスンにもちょっと参加されていたそうですよ。

他にもいろいろお話はありましたが、唐津さんの最後の質問は、舞台芸術が劇場においてどうあるべきか、ということ。この問いに対し、「文化は豊かなものであることを浸透させたい。ヨーロッパでも難しくなってきているが、寄せ集めではない専門家集団が劇場でひとつの舞台を創り上げ続けることが日本には必要。そういう人たち(集団)がいることによって持続可能な舞台芸術、ひいては伝統が育まれていく。その伝統を担保するのが劇場ではないか。」というのが登壇者たちの一致した返答でした。

Noism13年、SPAC18年の実績と自信に裏打ちされたこの言葉は重みがあります。おばあちゃんと孫が世代は違っても同じ集団の同じ演目を観ているということ。能や歌舞伎と同じように、Noismひいては劇場文化を孫子の代へ伝え続けていけるかどうかは、金森さんたちではなく、私たち観客一人一人にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

ますます進化、深化するNoismバヤデール、今週末の静岡公演がますます楽しみです!     (fullmoon)

追記:愛知での感動の舞台を胸に、翌日は名古屋から静岡へ。スノドカフェでの金森さん&奥野さん&柚木さんトークに行ってきました♪ 詳細また後日。一番感じたのは金森さんのメンバーたちへの信頼と愛です。あんなに厳しくて怖くて何が!?と思うあなたや私。それが愛なんです、信じているんですメンバーたちを。もっと輝く日が来るのを、きっとわかってくれる日が来るのを。

 

兵庫公演無事終了、次は愛知公演!

兵庫公演には残念ながら行かれませんでしたが、盛況のようでよかったです♪

今週末16日(土)は名古屋、その翌週は静岡、私も行って参りまーす!皆様もぜひ!!

閑話休題:

金森さんも講師として参加する、9/10-12開催「ゲンロン 利賀セミナー 2016」申込受付中です。http://school.genron.co.jp/seminars/

講師陣は金森さんのほか、鈴木忠志、大沢真幸、平田オリザ、佐々木敦、梅沢和木、そして東浩紀という錚々たる顔ぶれ。

1日目だけ参加したいなあ。。

さて、前のブログでもご紹介しました、元Noism所属、中野綾子さん、加藤千明さん砂丘館公演、堀田千晶さん「メシュラシュ」燕喜館公演、再掲します。

加藤・中野さんの公演は静岡公演と重なっているので残念ですが私は行かれませんが、メシュラシュ公演は行きます。皆様どちらもぜひどうぞ!

加藤千明・中野綾子ダンスパフォーマンス「カンパネラ」

7月23日(土)16:00、24日(日)14:00・17:00 料金各回1,500円(学生1,000円)予約受付中、申込は砂丘館へ。http://www.sakyukan.jp/2016/06/4243

「メシュラシュ」公演 振付・出演:堀田千晶、イタイ エクセルロード、ダニエル デヴェリースhttp://www.you-can-dance.jp/archives/7315

新潟公演 :7月25日(月) 17:00 19:00 全2回 会場: 燕喜館 チケット: 1,500円 お問い合わせ: sankakusan.jp@gmail.com

東京、広島、京都公演、ワークショップも開催  Facebook[メシュラシュ] https://www.facebook.com/Meshulash-%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%8B%E3%81%8F-1138045622894537/

そして、8月20,21日は言わずと知れたNoism0さいたま公演!!今年もダンスが熱い夏です。(fullmoon)

堂々の終幕 『ラ・バヤデール -幻の国』KAAT公演楽日

7月3日(日)、うだるような真夏日の横浜、
Noism『ラ・バヤデール -幻の国』KAAT公演は楽日を迎えました。

チケット前売り分はこの日も売り切れ。
嬉しいことに、神奈川公演は三日間通して完売だったのだそうです。

私は神奈川公演は2日目だけのつもりでいたのですが、
この日(楽日)の早朝、
「神奈川に来てからも結構変わって
昨日(2日目)御大鈴木忠志さんが見たので
その意見もあって今日またさらに変更ある事を覚悟しております」
などというお話しが伝わってきたものですから、もういけません。
「折角、まだ近くにいるのだし、ならば・・・」という気分に傾くと、
急遽、新幹線の切符を変更し、当日券を求めることにしてしまいました。
当日券は1枚4,500円。前売りより1,000円安い価格はお得でした。

当日券で売り出された3階席は、ホールのかなり上方で、
まるで「天井桟敷」のような席。
そこでは身を乗り出し、両の掌で頬杖をつくといった寛いだ姿勢で見ることすらOK。
そんな急勾配の下に舞台を見下ろす席は、
照明の様子もつぶさに受け止められる「良席」でした。

そして私が買った席ですが、
「二幕」で中川賢さんと亡霊が形作る「縦列」の延長線上に位置する席でしたし、
とりわけ、その流れから、為す術なく立ちすくむバートル(中川さん)の手前、
舞台を埋め尽くすように、一斉に仰臥位に横たわった亡霊たちが
今度は次々に時間差で上半身を起こし、
顔を隠しながら客席側へと捻る場面を、
(個人的に最も好きな場面のひとつなのですが、)
舞台上の一部始終を余すところなく視野に収めて見つめたとき、
その儚さは一層際立ち、
戦慄にも似た、身震いするほどスリリングな視覚体験に、鳥肌が立ちました。

「劇的舞踊」の全体を俯瞰することで、この日初めて気付いたことも数多くありました。
『ラ・バヤデール -幻の国』、後方席もお勧めですよ。

神奈川公演楽日の様子に話を戻しますと、
回を重ねることで、舞台はこなれて、メリハリのある情感豊かなものとなり、
全てがスムーズに繋がって展開していくさまに、目は釘付けにされていました。

上に書いた「影の王国」のほか、
特に、この日はエッジの効いた「一幕」に目を奪われました。
前半終わりの幕が下りたとき、隣の連れ合いと顔を見合わせると、思わず口をついて出たのは
「面白い!」「よかったね!」というものだったのですが、
それも不思議はありません。
何しろ、この日遅く、日付が変わろうとする頃に伝わってきた金森さんの舞台評は、
「今日(神奈川楽日)の前半は今までで一番良かった」というものだったらしいので。

それはそうと、目を皿のようにして待ち受けたはずの「変更」ですが、
・・・気付きませんでした。(汗)
ラストも前日と同じ「神奈川エンディング」で、変わりありませんでしたし。

充実の2時間も終演を迎え、
幕が下りると、劇場内には前日よりも更に大きな拍手が谺しました。
なかでも、当日券の3階席、私の付近の
「天井桟敷の人々」が最も熱心に拍手されていた印象があります。
「ブラボー!」の掛け声も、スタンディングオベーションも、
「1,000円安い」ホール最後列がその中心だったように感じました。
勿論、私も、自然な流れでそのどちらにも加わりました。

ややあって午後5時半前、KAATの自動ドアを出ると、
外にはまだむせかえるような暑さが残っていましたが、
私たち幸福な観客の心はそれ以上の熱を帯びていたと思います。
みんな、暑さなどものともせず、満ち足りたような笑顔を浮かべていましたし、
何人かでご覧になられた人たちは例外なく饒舌に話していました。

そんなふうに、堂々と終幕を迎えた神奈川3DAYSの楽日。
一日遅れでこれを書いていますが、
この間にNoism+SPACご一行様は、既に関西入りしておられるご様子。

次は今週末、7月8日(金)、9日(土)の兵庫公演。
両日とも熱い舞台になること請け合い。
乞うご期待! ですね。  (shin)

 

 

 

『ラ・バヤデール』KAAT公演2日目に驚く

本格的な「日本の夏」と言う他ないような
蒸し蒸ししたこの日7月2日(土)、
神奈川芸術劇場KAATに
『ラ・バヤデール −幻の国』の神奈川公演2日目を観に来ました。

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2幕見終えたとき、舞踊家も俳優陣も明らかに滑らかさを増した印象を持ちました。
加えて、表現は刈り込まれ、削ぎ落とされ、
よりシンプルなものになっていたように感じました。

前日の神奈川初日を観ていない私にとって
最大の驚きは変更がラストにまで及んでいたことです。

新潟・りゅーとぴあでは基本的に3日間同じエンディングだったものが、
この日、目にしたのは明らかに別のスタイルへの変更だったからです。
SNSで様々な方面から教えて頂いたところによれば、
ラストの変更は前日からのものだったとのこと。
言ってみれば、それは新潟とは異なる「神奈川エンディング」、
この先はこれでいくのでしょうか。
それとも、兵庫、愛知、静岡でも変わっていく余地があるのでしょうか。
目が離せないとはこのことですね。

終演後のホワイエで衣裳を担当された宮前義之さんを見かけ、
畏れ多くも言葉を交わす機会を得てみると、
お互いの口をついて出たのは、
まず「ラスト、変わってましたねぇ」ということ。

宮前さんは続けて「あれは相当キツイですよね。
Noismだからできるんですよね」と、
より強度を増したスタイルへの変更に言及されておられましたが、
まさに「我が意を得たり」の感を得ました。
他にも割と大きなものから細かなものまで、
様々な変更が目にとまった、と書き記しておきたいと思います。

実際、連日推敲が繰り返される舞台を前にして
「明日はまたどうなっているのだろうか」などと考えてしまうと、
胸中、嫉妬心が膨らんでくるのを如何ともしがたくて困ってしまいます。

かように人の心を揺さぶり続けるNoism『ラ・バヤデール −幻の国』。
神奈川公演も残すところ、あと1日。
複数回観ても飽きないばかりか、
まだまだ観たくなる、そんな舞台です。

神奈川楽日は15:00からの2幕・2時間。
あなたが目にするのはどんな『ラ・バヤデール』なのか、
興味は尽きないところです。
開演1時間前から当日券販売もあるとのこと。
楽日のKAAT公演にご期待ください。 (shin)