インスタライヴ(2023/07/30)で語られた『Silentium』の「一体感」の真相、或いは深層

美容院に行っているときに思い立って、その午後の実施が決まるという油断出来なさ加減で届けられた7月30日(日)のインスタライヴは、リアルタイムでの対応が難しかった向きもあったかと思われますが、かく言う私もそう。その後もバタバタしていて、漸くアーカイヴをクリック出来たのは月も変わった葉月朔日のこと。

この日はゲンロンカフェも控えているし、ってことで、バタバタしたままに、かいつまんだご紹介をさせて頂こうと思います。詳しくは、おふたりのInstagramのアカウントに残されたアーカイヴをご覧ください。

約54分間、実に刺激的なお話を聴くことが出来ます。その「刺激的」というのは、如何に目の前で展開される踊りの実相に迫るのが難しいかということに尽きます。「領域」ダブルビル公演の『Silentium』において、金森さんと井関さんが「ほぼ初めてふたりだけで約18分間踊る」という前情報に接しただけで、おふたりの「息の合った」踊りを見ることになるのだろうという(ある意味、安直な紋切り型の)憶断が形作られてしまい、そうなるともう、それを離れて自由な視線を送り得なくなってしまうという、そんな作品、そんな実相…。

それでは…

*井関さんは昨年決まっていたこの作品を「軽いと思っていた。中継ぎみたいに凄く軽く考えていた。全く想像がつかなかったから」そう語ります。

*しかし、あちこち色々な場所で行われたクリエイションは「ペルトの『音楽ありき』で、曲だけ決まっていたが、曲が曲だけに音にあてて振りを作る訳にはいかず、振りは振りで無音で作っていった。何が生まれるか、実験的だった。漠然とは考えていたが、こんなに大変とは思わなかった」という展開をたどることになります。また、振りの前に宮前義之さんから衣裳が届いていたという稀有なパターンだったとも。

*本番では普通とは違う集中力で噛み合うものの、稽古では、お互い自分を出してくるので噛み合わないとか、本番では「その瞬間を生き切る」刹那感で、予定調和は全部はずれちゃう、と金森さんが語れば、井関さんは本番では委ねられる、委ねるしかないと言い、更に、一緒に踊ると、舞台にあがったときの金森さんはその差が激しく、「ここまではっきり違う人はいない」、びっくりするとも。

*『Silentium』での「一体感」については、ふたりは性格もアプローチの仕方も全然違っていて、直前のルーティンも別々。「そうじゃないとあそこまでいけない。一個人一個人なんだけど、お互い協力して乗り切るしかない」のだと金森さん。そのうえで、井関さんが、金森さんと踊るときの「面白いことふたつ」を、「①委ねられる。行こうとしている動きのところに必ずいてくれる。②自分の足に立てなくさせるときもある。基本、自分の足で立っていない」そう語り、その具合を「安心感」とともに「怖い」と表現して伝えてくれました。

*また、無音のなかカウントで踊るかたちだったのではなく、要は呼吸だったとし、アクセントからアクセントまでの尺のなかで、「ここらへんにいる」は決まっていても、それも大分揺らいでいて、そうした音に対する遅れがわかるのは井関さんの方で、金森さんはざっくりやっている感じなのだと明かしてくれました。

*宮前さんによるあの衣裳に関しては、「塗り壁」がコンセプト。あそこまで覆われていて踊るのはそうないので難しかったそう。軽くて着心地はいいが、存在感があり、骨や身体の中の構造を意識して踊る必要があったと金森さん。

*また、あの作品、床に敷かれていたのはリノリウムではなくて、パンチカーペット。「米を降らせたかったから」(金森さん)、音がしないのがよかった。キュッという音もなかった。「床大臣」の井関さんは滑らないスプレーを見つけたとのこと。

…と、そんなところを取り出して極々簡単なご紹介を試みてみましたが、勿論、もっともっと豊かな膨らみに満ちたお話を聴くことが出来ますから、実際にお楽しみ頂くのが一番です。

最後、再度、この日のインスタライヴを聴いた個人的な印象で締め括らせて頂きます。お話を聴けば聴くほど、予断を持たずに目に徹することが如何に困難だったかに直面させられた次第です。舞台に向かっていた約18分間、あの緩やかさのなかに、或いはその奥に激しさやらきつさやらを見出すことは出来ました。しかし、今、「息が合っている」という枠組みのなかで見詰めるのみだったことを思い出しています。勿論、「息が合っている」のですが、その真相、或いは深層を聴いて、見ることの困難さに愕然とさせられているような塩梅です。その意味で、とてもスリリングなインスタライヴだったと思います。また、聴こうと思います。

(shin)

「柳都会」Vol.27栗川治×山田勇気(2023/7/23)を聴いてきました♪

2023年7月23日(日)、暑い日が続く文月下旬、日曜日の夕方、スタジオBを会場にNoism地域活動部門芸術監督・山田勇気さんが初めてホストを務めるかたちで開催された「柳都会」vol.27を聴いてきました。

山田さんの「柳都会」デビューとなる今回のゲストは栗川治さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程ほか)。視覚障がいを持つ栗川さんは、2019年から続く「視覚障がい者のためのからだワークショップ」に初回から参加し、山田さんと共に、同ワークショップの充実・発展に多大な寄与をしながら、普通に、一観客として、本番の公演にも足を運ばれておられます。

栗川さんには、いったいどんな世界が「みえている」のか。打合せ、メール、ワークショップ、公演を通して重ねてきたやり取りを手掛かりに、参加者の皆さんとも一緒に身体や芸術についてイメージを膨らませ、思索を深めます。

Noism Web Site より

申し込みの動きも早く、定員に達して迎えたこの日の会場。参加者は全員、おふたりによる大いに刺激的な対談を堪能しました。

障がいのある人も障がいのない人と同様に、普通の生活を送るべきであり、双方、社会生活を共にするべきとする「ノーマライゼイション(Normalization)」の考え方に基づいた社会参加を行い、サッカー観戦などにも出向く栗川さん。観客4万人のビッグスワンでは、ゴールを外したときや決めたときをはじめ、その場の雰囲気、臨場感に、「見えていないんだけど、その場に身を置いているだけで楽しい」と語り、聞いているし、感じているし、「見ている」だけではない(視覚優位ではない)「五感で開く可能性」に関して、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」のこれまでを紹介することを中心に、山田さんと示唆に富む対談を聞かせてくれました。ここでは、かいつまんでそのやりとりのご紹介を試みようと思います。

(1)ワークショップ1回目(2019年12月18日): 手のひら合わせ→相手を感じて動く/踊りになっていく
・この時期は、Noism存続問題で大変だった時期と重なり、一層の地域貢献が求められていた。
・サッカー観戦と異なり、声を出せない劇場の性格から、いきなりの舞踊鑑賞は課題も多い。互いに理解し合う必要があった。
・栗川さん「実際に舞踊家の身体に触ってみてくださいと言われ、全身を触りまくった」
・山田さん「手が求めている。手が目である。触りにきているその勢いに頭が真っ白になった」
・栗川さん「肌と肌の触れ合いのなかで一緒に動いていくことに大きな意味がある。視覚障がい者に対する一般的な鑑賞サポートの在り方が、(1)オーディオガイドによる『ことば』を使った説明、(2)事前事後に組まれる『タッチツアー』と呼ばれる大道具や小道具を触る機会の提供だったりするなか、『ことば』に依らないで、ダンスを感じて、体験することを目指すもので、『とてもよかった』。『ことば』は理解するには優れたツールであるが、ダンスを鑑賞するには、足りないし、場合によっては害になり得る。本来、『ことば』では表現出来ない筈のものを『ことば』に還元してはダメ」

(2)ワークショップ2回目(2020年12月19日): Noismの作品『春の祭典』を踊ってみる
・実際の舞台を経験して貰えないかが出発点。
・『春の祭典』の冒頭部、椅子に座って、踵で床をリズミカルに踏み落とす。(2グループで違うリズムで)
・また、『夏の名残のバラ』の音楽に合わせて、身体で相手を感じて、繋がり、踊った。
・栗川さん「金森さんが『ダンスによる音楽や物語の可視化』と言ったものを、再不可視化したとき、何が残るかを楽しみにして本番の公演を観に来た。音、重量感、拍手、米の音や振動、息遣い等、触れるように感じることが出来た。体験したものが始まる瞬間には『来たー!」という嬉しさがあり、身体が覚えているものは一緒に動いて踊っているように感じた。しかし、映像作品(映像舞踊『BOLERO 2020』)には何も感じなかった」 
・栗川さん「視覚的には『見る』とは網膜に映すことを意味するが、網膜を介さなくても頭にイメージが浮かべば『見た』ことになるのではないか。何らかのかたちで外界をキャッチすることが『見る』ではないか」
・山田さん「踊っているとき、まだ見えないものやこれからの動き等、半分はイメージの中にいる。そういう時間軸のなかで踊っている。
・栗川さん「目で『見る』というのはほんの一部に過ぎない。視覚は強烈な感覚であるだけに人を惑わすこともある」
・山田さん「そのことは舞踊の本質と関係ある。いろんな要素が絡み合って、いい舞踊となる」

(3)ワークショップ3回目(2022年3月12日): Noismの作品『Nameless Hands - 人形の家』を踊ってみる
・栗川さんから「物語、ストーリー、Noismの世界観を感じたい」とのリクエストを受けて実施。
・山田さん「『ことば』だけでなく、身体で直接、伝え導いて振り付けることは出来ないかと考え、人形浄瑠璃にヒントを得た、黒衣による人形振りの作品を選んだ」
・栗川さん「本当に後ろから抱きかかえられて、人形となり、それが踊りになっていくのは面白かった」
・山田さん「最後はアラベスク、足を上げる動きまでいった」

(4)ワークショップ4回目(2022年12月17日): 『Der Wanderer - さすらい人』を踊ってみた
・スタジオBに設えられた本番の舞台で、空間も共有し、本番の曲を踊るに至った。
・更にワークショップの終わりには、車座になってのディスカッションの時間が初めて設けられ、感想や疑問を出し合った。
・栗川さん「本番も観に来たが、スタジオBでは、(劇場ほど大きい空間ではないので、)空気を切って動く動きまでを全身で感じることが出来た。また、歌曲の歌詞も貰っていたので、点訳したものに触りながら鑑賞することが出来た。リハーサルでは倒れて死んでいる筈がハアハアしていたのが、本番ではピタッと息を止めていた」(笑)
・山田さん「栗川さんが来ているときの本番では、踊りが『やかましくなる』。(笑)そこにいる人にどうしたら何かが届けられるか、届けたいと思うから」

(5)『Floating Field』 声の踊り: 新たな試み、その映像の紹介
・山田さん「舞台上のあちこちで展開される、抽象的で踊りそのもののような作品『Floating Field』。それを踊っている映像に、演出振付・二見一幸さんの許可を得て、Noism2のメンバーたちによって、『シュッ』『ダッ』『ドンドン』などの声(一種のオノマトペ)をインプロ(即興)でかぶせて録音してみた」
・栗川さん「割といいかもしれない。可能性があるかもしれない。意味のある『ことば』よりもスピード感やきざみがあって、動きに近い。例えば、リヒャルト・ワーグナーは楽劇を創るにあたって、キャラクターの音形を『ライトモチーフ』として予め設定しておいて、それを用いて構築していくスタイルをとった。また、これはこれで現代音楽としても面白いんじゃないか」

*会場からの質問01: ワークショップといった体験なしに、実際の舞台を見ることは可能か?
 -栗川さん: 「領域」ダブルビル公演は体験なしに観た。金森さんと井関さんの『Silentium』はとても静かな作品だったので、ステージの気配を感じ取るハードルは高かったが、『Floating Field』の方は動きが激しいので感じ易かった。

*会場からの質問02: ダンスという非日常の体験を経て、日常の何かが変わったようなことはあるか?
 -栗川さん: 便秘気味だったが、「ピョンピョン」とか「ブルブル」とか、身体を大きく動かしたり、細かく動かしたりして、便通がよくなった。内臓にもいいのでは。Noismのお陰かなと。(笑)

*会場からの質問03: 視覚障がい者のためのからだワークショップ、ひとつの舞台のように見えた。見学できないか?
 -山田さん: 人数が多くなると大変なところもあるが、今後、目が見える人と一緒にやることなどもあっていいかもしれない。

…と、そんな感じだったでしょうか。一緒によりよいものを目指して、模索し、工夫に工夫を重ねて、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」をアップグレードしてきたおふたり。「柳都会」の終わりにあたり、山田さんが「ワークショップで出会えた人たちに感謝します。踊りが広がり、身体感覚が深くなった」と語れば、栗川さんは「一緒に芸術を創っていきたい」と応じました。

手探りで始められたのだろう「ワークショップ」が僅か4回で大きな進歩を遂げてきたことに驚きを隠せません。

そして、何より、山田さんのみならず、金森さんも井関さんも常々、ワークショップに出られる視覚障がい者の方たちの感覚が、「本当に踊れる舞踊家のようだ」と語っている、その一端を垣間見ることができて、多くの学びを得ることが出来ましたし、今回の「柳都会」のおふたりのやりとりの中心にあった『見る』ことや、逆に、やや旗色の悪い趣だった『ことば』の働きについて、更なる思索に誘われる刺激に満ちた時間となりました。そうした空気感だけでも伝えることができたら幸いです。それではこのへんで今回の「柳都会」レポートを終わりとさせて頂きます。

(shin)


「纏うNoism」#09:糸川祐希さん

メール取材日:2023/07/20(Thur) & 07/22(Sat.)

Noism Company Niigataの19th シーズンのラストを飾るNoism0 / Noism1「領域」ダブルビル公演も大盛況のうちにその幕をおろし、季節は真夏。それも災害級に熱い夏。皆様、どうかご自愛ください。エアコンの効いた屋内でお読み頂くにはもってこいかということで、(勿論、どこでお読み頂いてもいい訳で、場所の制約を加えるつもりはありませんが、)ここに「纏うNoism」の第9回、糸川祐希さんの回をお届けします。どうぞごゆるりとお楽しみください。

「スタイルとは、言葉を使わずに自分が何者かを伝える方法」(レイチェル・ゾー)

それでは「纏うNoism」、糸川さんのご登場です。

纏う1: 稽古着の糸川さん

ザ・シンプル!
「何も足さない、何も引かない」って感じですね♪

 *全く奇を衒ったところのないスタイルと表情ですね、糸川さん。リラックスした立ち姿で。ええっと、この日の稽古着について教えてください。

 糸川さん「最近、トップスは肩から腕のラインが見えるのでユニクロのタンクトップをよく着ています。パンツもユニクロの物で、ストレッチが効いていてお気に入りです。黒が好きなので身の回りの物全般、黒を選びがちです。また靴下もユニクロで、踊りやすくて気に入っているのでまとめ買いしています」

 *おおっと、糸川さんはユニクロのヘヴィーユーザーなのですね。しかも、おっしゃる通りの全身黒ずくめ。海外の映画にでも登場しそうな「NINJA」の風情もあります。ニンニン、と。

 *ではまず、タンクトップについて伺います。「肩から腕のラインが見える」という着用の理由を話されましたが、それは「誰に」見えるということなのでしょうか。

 糸川さん「自分がクラスやリハで筋肉の使い方などを視認出来るように着ています。また、最近筋トレを始めたので日々の変化が見えるとモチベーションに繋がります」

 *なるほど。そうですよね。メンバー内で筋肉美を競い合っている訳ではありませんものね。変な訊き方になってしまいましたが、日々自分の身体に向き合う舞踊家らしいお答えに納得です。

 *次いで、もう靴下についても触れて貰っちゃってますが、敢えて突っ込みますね。ユニクロの靴下のどんな点が踊りやすいと感じられるのでしょうか。

 糸川さん「踊る時は薄めの靴下が踊りやすいと感じるので、程よく薄いユニクロの靴下を愛用しています」

 *そうですか。坪田さん、樋浦さんに続いてのユニクロ・ソックス派。わかりました。

纏う2: 糸川さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出について教えてください。

おっ、これってきっとチャイコフスキーの「アレ」ですよね。

 糸川さん「Noismに入団する前、最後の発表会で踊った『白鳥の湖』の王子の衣裳です。
この発表会に出る時にはもう入団が決まっていたので、バレエ衣裳を着るのはもう最後かなと感慨深く思ったのを覚えています」

 *やはり、そうですよね。アレですよね、うん。糸川さん、後方にお立ちですけれど、「稽古着」画像とは全く趣の異なる、凛々しい、リアル「王子」立ちかと。スラッと高身長で。でも、そうしますと、お直しなんかも必要だったのではありませんか、「王子」の衣裳。

 糸川さん「確かウエストが緩くて、詰めてもらった記憶があります」

 *そうでしょうとも、そうでしょうとも。スラッで、シュッですものね。

 *ええっと、これは直接、衣裳とは関係ない質問になるのですが、この発表会のとき既に、周囲にNoismに入団されることを話されていたのでしょうか。それともこの後に話されたのでしょうか。

 糸川さん「本番の時には既に周りに報告していたので、『最後の王子だね』と先生にも言われてました」

 *他にはどんなリアクションがあったりしましたか。

 糸川さん「驚いて、みんな『おめでとう』と言ってくれました」

 *「王子」を送り出すのですから淋しさもあったでしょうが、それ以上にモチベーションにはなったでしょうね、確実に。

纏う3: 糸川さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 糸川さん「『Der Wanderer ―さすらい人』の衣裳です。
最初、衣裳を見たときはピンクのシャツと紫のパンツという派手さに苦笑いしてしまいましたが、長い公演期間を経てだんだん愛着が湧いてきて、とても思い出に残っています。
穣さんが自分にソロを振り付けてくださったことや、全14回という公演回数の多さなど初めての経験尽くしで、この舞台に立った経験は深く自分の中に刻み込まれています」

 *ですよね。「ピンクのシャツと紫のパンツ」、見ていてもインパクト大でした。で、その衣裳で踊られた際の金森さんによる振付には若さが溢れていました。しかし、『セレナーデ』からの後半では、衣裳がお好みの「黒」(と白)に変わり、振付も大人っぽいものになりました。そのあたりの変化についてはどのように感じましたか。

 糸川さん「衣裳が変化することで気持ち的にその役柄に入り込みやすくなると感じました。ただ一つの作品の中で様々な役柄を演じ分けることはとても難しく、自分の中に課題として残りました」

 *なるほど、なるほど。そうですよね、うん。あの作品での金森さんの振付は、一人格としての連続性を保ちながらも、同時に、ピンクと紫の『ヤング・アンド・イノセント』から、なんなら『魔王』にでもなってしまうような変化というか、大跳躍みたいなものが仕掛けられていましたものね。でも、どちらも素敵でした。あと、糸川さん、きつくて苦しい踊りになればなるほど、表情に「笑み」みたいなものが浮かぶことにも気付きましたよ。そこも「M」っぽくてツボでした。(笑)

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
2023年『Der Wanderer - さすらい人』画像で、「衝撃」のピンクと紫ほかをご覧ください。見ているだけで、シューベルトの歌曲が甦ってきますから。

纏う4: 普段着の糸川さん

こうして見ると「がたい」の良さが際立ちますね♪

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 糸川さん「夏は全体的にゆったりしたものを着ることが多いです。
最近購入したリカバリーサンダルが歩きやすくてとても気に入っています」

 *ゆったり何気なさがいい感じですが、まずはそのリカバリーサンダルについてお訊きします。その「疲労回復効果」などは如何ですか。「個人の感想です」レベルで構いませんので、教えてください。

 糸川さん「疲労回復効果はよく分かりませんが、歩く感触がフワフワしててとても気持ちいいです」

 *気持ちいいいんだ、フワフワ。な~るほど。足の心地よさ、大事ですよね。酷使しますものね。

 *次いで、今度はTシャツについて伺います。左胸のワンポイントのデザインが何とも「いい味」を出しています。何の図柄なのでしょうか。また、同じ図柄がバックプリントされていたりするのですか。

 糸川さん「フランク・ロイド・ライトというアメリカの建築家の名前が書いてあります。バックプリントはこんな感じになっています」

このバックプリントは…!!

 *あ、ご親切にどうも有難うございます。これって確かフランク・ロイド・ライトによるステンドグラスのデザインですよね。よくは知らないのですけれど。う~ん、目を惹くのには訳がありますね、うん。ところで、彼が語った有名な言葉にはこんなのもあります。「あなたが本当にそうだと信じることは常に起こります。そして信念がそれを起こさせるのです」舞踊に献身されている糸川さんにピッタリかと。

 *脱線しましたね。戻します。そのTシャツと黒のキャップはどちらかのブランドの品なのでしょうか。そのあたりお訊きします。

 糸川さん「Tシャツは beauty&youth の物で、キャップはポロラルフローレンです。どちらもとても気に入ってます」

 *メモメモメモメモ。皆さん、ここはメモですよ、メモ。もしくはすぐに検索。はい。
糸川さん、どうも有難うございました。

糸川さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもあたたかい応援をしてくださり本当にありがとうございます。
皆様により良い舞台をお見せできるよう、舞踊家として日々精進していきます。
これからもよろしくお願いいたします」

こちらこそ、よろしくお願いいたします。で、ええっと、これは個人的な事柄になるのですが、『領域』新潟公演の楽日、終演後のりゅーとぴあ1F出口付近で偶然、糸川さんに遭遇したときのことを思い出します。外で待っておられたお母様をわざわざお呼びくださり、ご紹介くださった礼儀正しい好青年の「糸くん」。この度もそうした気遣いが溢れていました。誰からも愛されずにはいない人柄、とても魅力的です。重ねて諸々有難うございました。

ということで、「纏うNoism」第9回、糸川祐希さんの回はここまでとなります。

これまで、当ブログでご紹介した糸川さんの次の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」#22(糸川祐希さん)

糸川さんにも、前回の杉野さん同様、この先、「ランチのNoism」(現在休載中)にもご登場頂きたいと思っております。その際はどうぞ宜しくお願いします。

今回の「纏うNoism」糸川さんの回、如何でしたでしょう。では、また次回をお楽しみに♪

(shin)

 

2023年7月18日、日本記者クラブで『闘う舞踊団』について語った金森さん♪

【お知らせ】日本記者クラブでの会見「著者と語る」にて、初の著書『闘う舞踊団』その他について語った金森さん。その動画がYouTubeにアップされています。

著者と語る『闘う舞踊団』演出振付家、舞踊家 金森穣さん 2023.7.18

演出振付家で舞踊家の金森穣さんは、今年1月に刊行した著書『闘う舞踊団』で自身の半生と、日本で初となる公共劇場専属舞踊団「Noism」を率いてきた18年間の「闘い」をまとめた。 『闘う舞踊団』の執筆に至った経緯や、この間何を思ってきたのか、劇場文化の活性化に必要なこと、文化政策のあり方などについて語った。
司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

Youtube より(一部修正のうえ転載)

金森さんが綴った感動の著書『闘う舞踊団』、既にお読みになられた向きも、これからお読みになられる向きも、この度の会見動画は間違いなくお楽しみ頂けるものです。どうぞこちらからご視聴ください。1時間21分25秒あります。「志」を胸に「闘う」金森さんの語り、いっぺんにでも、少しずつでも♪

(shin)

「領域」東京公演最終日、「舞踊」の力を見せつけて大千穐楽の幕おりる♪

2023年7月16日(日)、三連休中日の東京はまるで電子レンジのなかにいて、ジリジリ蒸しあげられていくのを待ってでもいるかのような「超現実」の一日。朝、新幹線で新潟を発ってから、外気に身を晒す度に、「温帯」に位置する国の首都にいることが信じられないほどの危険な感覚を味わいました。そんな「超現実」。

そう、そんな「超現実」の「危険」を避けることができるエアコンが効いた屋内での舞台鑑賞と言えば、何やらこの上なく「優雅」な振る舞いとも思われかねませんが、そこはNoism0 / Noism1「領域」ダブルビル公演です。「優雅」なことは間違いありませんが、レイドバックしてなどいられない、またひとつ別種の「超現実」を受け止めることになるのでした。

開演前のホワイエには、金森さんと親交の深い東京都交響楽団ソロ・コンサートマスター矢部達哉さんのお姿もあり、この先の「サラダ音楽祭」での共演への期待感も一層高まりました。

この日、『Silentium』開演は15時。それ以前から緞帳があがって顕しになった舞台上、上手(かみて)にはこんもりした古米の小山があるのは新潟公演のままでしたが、下手(しもて)側、既に炎が灯っていたのは、新潟で観た3日間との違いでした。

やがて、おもむろにペルトの楽音が降ってくると、それに合わせて緞帳がおりてきての開演。再び緞帳があがると、古米の小山の脇、少し奥に揺れるふたりの姿が朧気に見えてきます。朧気に。それもその筈、未だ紗幕によって隔てられているためです。その紗幕もスルスルあがると、見紛うべくもない金森さんと井関さん、ふたりの姿が明瞭に視認できます。既に緩やかに踊っているふたりが。

既に踊っているのです。新潟公演中日のブログでも書いたことですが、演目の始まりが曖昧化されているのです。

そして落下する古米の傍ら、全くと言ってよいほど重力を感じさせないふたりの身のこなしやゆっくりとしたリフトは見るだに美しいものに違いありませんが、そうこうしているうちに、次に不分明になってくるのが、その「ふたり」であるという至極当然に過ぎる事実です。宮前さんの驚きの衣裳を纏って絡み合う「ふたり」がもはや「ふたり」には見えてこなくなる瞬間を幾度も幾度も目撃することになるでしょう。「じょうさわさん」とも呼ぶべき「キメラ」然とした様相を呈する「ふたり」は、「耽美的」なものに沈潜しようとすることもありません。安直な「美」を志向しようともしない、その振付の有様は、容易に言い表すことを拒むものですが、強いて言うなら、「超現実」的な意味合いで「変態的」(決して貶めているのではありません。むしろ独創性に対する驚嘆を込めた賛辞のつもりですが、安易な形容など不可能な故に、このような一般には耳障りの悪い表現になってしまったものです。ご容赦願います。)とでも形容せざるを得ないもの、そんなふうに感じた次第です。また、無音で振り付けたという動きは、観ているうちに、20分弱流れるペルトが触媒として聞こえてくるような塩梅で、音楽との関係も普通らしい領域を逸脱してくるようにも感じられました。

「変態的」と形容した所以。それは舞台上に提示された「20分弱」がひとつの舞踊作品としてではなく、あろうことか、金森さんと井関さん「ふたり」がこれまで共に歩んできた舞踊家としての膨大な時間のなかの僅か「20分弱」を垣間見せようとする意図の上に構築されたものに違いないと思ったことによるものです。これまでの全てを包含したうえで、今、そこで踊られていて、この先も変わらず踊られていく、互いに信頼し合う「同志」としての「ふたり」の関係性や覚悟そのものが作品として提示されていた訳です。ですから、作品として画するべき始まりも終わりも持たないことは必定でしょう。それはすなわち、私たち観客にとっては「超現実」であっても、「ふたり」にとってはこれまで重ねてきて、これからも重ねていく「日常」でしかないような、そんな「作品」。そこで映じることになるのは勿論、「ふたり」が示す舞踊への献身そのもの。その崇高さが溢れ出てくるさまが終始、見詰める目を射抜く「作品」。「ふたり」の舞踊家の(或いは「ひとつ」と化したふたつの)人生が示す、その選び取られた「やむにやまれなさ」加減が通常とは異なる「美」の有り様を立ち上げて、観る者の心を強く揺さぶるのです。

その「作品」、この日の大千穐楽で観た東京ヴァージョンのラストシーンは新潟公演で採用された2つとは異なる「第三の終章」。隣り合い並んで、下手(しもて)側に傾いた姿勢で静止したふたりの立ち姿がシルエットとして浮かび上がるその様子。それは紛れもなく動的な静止。美しさに息を呑みました…。当然の如く、盛大な拍手とスタンディングオベーションが待っていました。

20分間の休憩。上気したままに過ごしているうち、次の演目が始まろうとする頃合いになり、ホワイエから客席に戻ると、会場後方に、山田勇気さんと並んで座る二見一幸さんのお姿を認め、この間、サインを頂いたお礼も含めてご挨拶させて貰いに行きました。その際のブログもお読み頂いた旨、話されたので、感激してしまい、「握手して貰ってもいいですか」そう訊ねて、この日は握手して頂きました。「手、冷たくてすみません」と柔和な笑顔の二見さん。この日もその魅力にやられてしまったのでした。

そんないきさつがあり、再びニマニマして迎えた二見さん演出振付の『Floating Field』。そう、こちらの作品はそれ自体、ニマニマを禁じ得ないスタイリッシュさが持ち味。

しかし、この日はニマニマしてばかりもいられない事情が…。それはここまでかなり目立つポジションで踊られていた庄島すみれさんが怪我のために降板し、急遽、Noism2の河村アズリさんが新潟から召集されて、代役を務めることになっていたからです。前日も振りやフォーメーションに若干の変更が施されたとのことですが、何しろ、この日は大千穐楽です。もう「頑張れ!」しかない訳です。

冒頭、トップライトを受けた中尾さんの「蹴り」から「領域」を画するラインが横方向に伸びていくと、早速、坪田さんと河村さんの登場場面となります。すると、「頑張れ!」と視線を送ろうとしていた筈が、すぐに「これは大丈夫だ。凄い!」に変わり、安心して作品世界に没入することが出来ました。新潟公演楽日のブログで挙げそびれていた「ツボ」ポイントのひとつ、坪田さんの左の体側に、その右の体側をまるごと預けて、坪田さんが左足を横方向に持ち上げると、そのまま持ち上がってしまうすみれさんという場面も、河村さんでしっかり現出されていて、この日も改めて酔うことが出来ましたし。

そんなふうにして、様々に移ろい、漂っていく「領域」の千変万化振りが、この日も極めて自然に可視化されていき、新潟で観た際と比べても見劣りすることもありませんでした。二見さんによる演出の変更と、しっかりとした基礎を共有する河村さんの奮闘に加えて、サポートする立場にまわったすみれさん、そして見事にカバーした他のメンバーたち。更にはスタッフの尽力もあったことでしょう。それらどれひとつ欠けても、作品の成否を左右した筈です。それだけを思っても胸が熱くなったこの日の二見作品でした。

中間部、メロウでセンチメンタルに響くスカルラッティを経て、テンポアップして、扇情的、挑発的にぐんぐん盛り上がっていく後半は、その圧巻の幕切れに至るまで、音圧とともに目を圧してたたみかけてくる迫力に、観る度、その都度、耳たぶが熱くなり、身中、どくどく滾る自らの血流を感じさせられずにはいませんでした。勿論、この日も例外ではなく。

こちらも鳴り止まぬ拍手とスタンディングオベーションが起こったことは言うまでもありません。

「領域」ダブルビル公演の大千穐楽だったこの日、まったく方向性を異にするふたつの作品からは、「舞踊」の奥深い世界や在り方を見せつけられ、「舞踊」が持つ力に組み伏せられてしまったと言えそうです。「超現実」だったり、「非日常」だったりする時空の懐に抱かれたことの幸福を噛み締めているところです。

この後、Noism Company Niigataとしては、いくつかのイヴェントを抱えてはいるものの、シーズン末まできたということで、すみれさんにはしっかり怪我を直して来季に備えて欲しいと思うものです。

来季、Noism Company Niigataはまた何を見せてくれるのか。完膚なきまでに圧倒されることを期待しつつ、今はその時を待つことといたします。

(shin)

「領域」新潟公演楽日の「キタ、キタ、キタ、キタ、今回もキタァ!!!」

2023年7月2日(日)はNoism0 / Noism1「領域」新潟公演の楽日。前日、このブログにおいて、この時期にあっての「中途半端な気温」をディスったりした訳ですから、今日、「真夏日」になったことについて、愚痴をこぼす資格などないことは自分でも承知しているのですが、そこはすっかり棚に上げて、今日は今日でしっかりこぼしていたのでした。だってやはり暑いものは暑いのですから。(笑)(だったら、昨日黙っとけって話ですよね。わかってますけど。(汗))

で、そんな夏の入り口のようなこの日、あの2演目が新潟での千穐楽を迎えたのでした。サポーターズではこの公演を前にして、サポーターズ・インフォメーション(#8)を作成して、公演を待ちわびていたのでした。

入場時に手渡されるチラシ類のなかに挟み込まれていますから、もしまだご覧になられていない向きは探してみてください。

で、その楽日が「キタ」訳です。この日は鑑賞前の気持ちに、勿論の大きな期待感だけでなく、そこに既にして若干の寂寥感が滲んでしまうのはやはり楽日の常ですね。

そのようにして、金森さんと井関さんのNoism0『Silentium』が始まりました。三度目の鑑賞です。ある種の安心感を抱いて、醸し出されるふたりのあの一体感に浸り切って、心ゆくまでそれを堪能してやろうという思いで臨んだのでした。既にあの衣裳にも慣れた訳ですし、あとはペルトの麻薬的なリフレインに惑わされないようになどと考えながらのガン見だった筈…。

ふたりともあの衣裳にほとんどその身体を覆われつつも、皮膚で無言の「会話」をもの凄い速さで交わしながら踊るのだというお話(←前日のアフタートーク)でしたから、そんな理解をもって視線を注ぐ、その刺激的な安定感、或いは安定感のある刺激。そのひとつさえ見落とすまいと見詰める濃密な時間…。

そのつもりでした。…ところが、ところがです。演目が最終盤に至ったところで、「ん?え?何か様子が違ってないか!?」目を疑うことに。そして気付きます。「キタ、キタ、キタ、キタ、今回もキタァ!!!」違うんです。そう、ラストシーンが昨日までと違っているのです!またしても、またしてもです!これまでにも度々あったことなのですが、またやられちゃったような訳です、金森さんに。最後、締め括りの印象だって大違いですし。もう、油断禁物。金森さん、やってくれるよなぁ。

終演後、金森さんと井関さん、おふたりの極めつきの至芸に対して熱い拍手とスタンディングオベーションを捧げたあと、15分の休憩の間、友人・知人と顔を合わせると、みんな、「またやったね、金森さん」って感じの言葉を発することにならざるを得なかったのは言うまでもありません。

で、めぐろパーシモンホールには今日のラストシーンで行くのだろうか?まだ変わったりすることだってあるかもですし、もう安閑としていられない訳です。金森さんの作品に関しては。そして、それも含めて、「めぐろパーシモン」への期待も高まろうというものです。

同じその休憩の間、ホワイエへと向かう途中、勇気を振り絞って、客席の二見一幸さんにご挨拶をして、作品の感動を直接お伝えすると、その後、プログラムにサインをして頂くことが出来ました。そのサインにはやはり控え目なお人柄が存分に表れていて、それはそれは可愛らしい感じのサインでした。ご覧ください。

コロナ禍を経て再開されたビュッフェで赤ワインを頼むと、ニマニマ嬉しい気持ちに浸りながらグラスを傾けたのですが、そこには、ブログも見てくださっていたとのお話に、嬉しさが増幅されたような事情もあったのでした。

そして休憩後、この日も、その二見さんによるNoism1『Floating Field』に文字通り「酩酊」することになります。旋回する身体が網膜に残す動きの痕跡の美しさ、リフトを経て後の頽(くずお)れる身体が示す寄る辺ない美しさ、両腕を斜め上方に持ち上げた姿勢で凹ませた背中が発する美しさ、そして舞台狭しと繰り出される群舞の力強い美しさ、…もう様々な美しさに溢れていて、観ているだけで多幸感に包まれて堪らなくなるのみです。

やがて観る者を圧するような音圧がやって来て、そこから雪崩れ込んでいく圧倒的なクライマックスには、何度観てもドキドキが抑えられません。そしてあの幕切れ。この日も大きな拍手とスタンディングオベーションを呼び起こさずにはいませんでしたが、それも極々当然のことでしかありますまい。

幸福な新潟の3日間でした。この見どころ満載のダブルビル公演。次は再来週(7/14~16)、東京へ。関東圏でお待ちの皆さま、いま暫くお待ちください。ワクワクとともに。感動は約束されていますから♪

「お宝」今公演での展示品
Noism05の頃のブロマイドより
若き日の…

(shin)

瞬きするのも忘れて瞠目したNoism0 / Noism1「領域」新潟公演中日♪

前日の雨からも湿気からも解放されてはいても、文月朔日らしからぬ中途半端な気温などは、今度はどこかもの寂しくもあり、人とは随分勝手なものだななどと思うような一日、2023年7月1日(土)。

Noism0 / Noism1「領域」新潟公演の中日。前日に引き続き、2演目の舞台を堪能してきました。初日は全体を一望する席(11列目)でしたが、この日は最前列(3列目)から舞踊家たちの身体をガン見。瞬きするのも忘れて瞠目したため、ドライアイ状態になるも、そこは我慢。捩れる身体に翻る衣裳、上気した顔や迸る汗の粒などを大いに楽しみました。

舞踊演目の始まりと終わりや、更には舞台の正面性にさえ疑問を投げかけるかのような側面を宿しながら、金森さんと井関さん、ふたつの身体がともに領域を侵犯し合い、果てに渾然一体となった「じょうさわさん」を立ちあげつつ、落下を続ける古米のごとく弛みなく、舞踊を生きてみせる『Silentium』。

対して、舞台の正面性にこだわり、ソリッドでクールな格好良さにこだわり、編まれては解かれていく様々な関係性が、目まぐるしいがまでの舞踊の連打として、アクティングエリア上のあちこちに現れるのを目で追うことの快感に満ちた『Floating Field』、その愉悦。

ふたつの演目、この日も大いに満喫させていただきました。

終演後は金森さんと井関さんによるアフタートークがありました。やりとりは主に『Silentium』に関するものでした。かいつまんでのご紹介を試みたいと思います。

Q: 1対1の創作、逃げ場がなくて苦しくはなかったか?
 -井関さん: 黒部での野外公演後の一ヶ月、私にとっては地獄でした。
 -金森さん: 逃げ場要る?
 -井関さん: 要らないんですけど、ホントに逃げ場がない状況なので…。
 -金森さん: 劇場出たら、だらっとしてるじゃない。(笑)
 -井関さん: ふたりで創作する大変さ、目の前の人に向き合うしかない。公演前の一週間でやっと何かを見つけ始めた。
 -金森さん: よかったね。
 -井関さん: ハイ。
 

Q: 二見さんの作品、そして踊るメンバーを見てどう思ったか?
 -金森さん:  格好いいダンス、うまいなぁって感じ。 空間処理や、動く身体がどっちに流れて、重心がどう動いて…とか。 踊るメンバー、ガンバレ!
 -井関さん: 二見さんは素晴らしいダンサー。それを吸収しようとしている。いい関係だなと。しかし、舞台はその人が、その人の人生がそのまま出てしまう。その意味では、まだまだ若いなぁと思った。同時にまだまだ先がある。これからが楽しみ。
 -金森さん: ぶち壊せ!

Q: 衣裳のオーダーはどういう感じだったのか?
 -金森さん: 音楽を聴いてもらって、あの衣裳が来た。「何じゃあ、これ!?」びっくり、たまげた。もとは一枚の布。剥がして破いていく過程を見た。
 -井関さん: ホント狂ってますよね、興奮した。(笑)

Q: かけがえのないパートナーと踊ってどう思ったか?
 -金森さん: 特にない。もうあの時間は消えていて、言わば死んでしまっている。あれをご覧いただけてよかったなと。
 -井関さん: 皮膚から出てくる「ことば」凄い。滅茶苦茶出てきて、もの凄く速く「会話」している。踊っていて、(美しい意味じゃなくて、)導かれている。その「会話」が楽しい。

Q: あの金色はホントの金箔か?
 -金森さん: 箔押ししているが、本物ではない。
Q: 剥がれたりしないか?
 -金森さん: ちょっとずつ剥がれてきているが、いっぱい洗濯してくださいとも言われている。
Q: 汗とか大丈夫なのか?
 -金森さん: 着ていると暑いが、見た目以上に動き易い。但し、大事な皮膚が覆われているので大変。いつも以上に集中しないと。

Q: アルヴォ・ペルトの音楽を選んだのは何故か?
 -金森さん: 黒部での創作でペルトを聴き漁っていたら、「見えてきた」から。他に音楽を聴いていたら「降ってきた」のが、お米や壁。あの壁は『Der Wanderer-さすらい人』の壁。どちらも使い回し。(笑)

Q: 今回の照明について。
 -金森さん: 今回の照明のキューはペルトの繰り返される音楽に基づいて16回とまず決めてかかった。通常は30分で大体100キューに届くところ、今回は極端に少ない。みんなに「絶対に嘘」と言われたが。(笑) いつもは身体を起点として合う照明を作っていくのだが、今回は音楽に合わせて照明を入れていくことにしたもので、いつもの逆コースと言える。あと、最初に緞帳が閉まるのもそう、逆。
「振り」も音なしで作ったが、それは大変だった。踊っていて、いつも同じではない。ふたりで「この瞬間、ちょっと遅れているね」とかやっている。

Q: 井関さんの髪の色がさっき黒かったのに、今は金色だが…
 -井関さん: 衣裳の宮前(義之)さんが、「ふたりとも黒髪がいい」と言ってきたので、踊るときにはスプレーで黒くしている。終わったら、筋肉を落ち着かせるために水で冷やすのだが、そのとき、黒も落としている。落としておかないと大変なんで。

Q: 蝋燭の炎も印象的だが、使うと決めたのはあの金の衣裳が来てからか?
 -金森さん: 生の火、降り続けるもの、大きなものが降ってくることなどは衣裳が来る前から決めていた。あの金色の衣裳、宮前くんも音楽に共振したのだろう。

ざっと、こんな感じでこの日のアフタートークの報告とさせていただきます。

で、いよいよ明日がNoism Company Niigata、今シーズン最後の新潟公演となります。来シーズンには『鬼』再演など注目の公演も組まれていますが、まずは、明日です。もとい、書いているうちに日付が変わっていましたね。本日です。新潟公演楽日のりゅーとぴあ〈劇場〉の客席を大勢で埋めて、おのおのの熱い視線を舞台に注ぎたいものです。お初にご覧になる方も、二度目、或いは三度目の方も揃って熱演を目撃しに参りましょう。贅沢この上ない公演ですゆえ、見逃すのは大損ですよ。

(shin)

感性の領域を押し広げられずにはいない2演目-Noism0 / Noism1「領域」新潟公演初日♪

雲が垂れ込めた鈍色の低い空からはひっきりなしに雨が降り続け、湿度が高かったばかりか、時折、激しい風雨となる時間帯もあり、まさに憂鬱そのものといった体の新潟市、2023年6月30日(金)。しかし、私たちはその憂鬱に勝る期待に胸を膨らませて、19時を待ち、劇場の椅子に身を沈めたのでした。Noism0 / noism1「領域」新潟公演初日。

ホワイエにはこれまでの外部招聘振付家による公演の(篠山紀信さん撮影の)写真たちやポスター等が飾られていたほか、見事なお祝いのスタンド花もあり、それらによって、内心のワクワクは更に掻き立てられ、舞台に臨んだのでした。

開演時間を迎えると、顕わしになったままだった舞台装置の手前に緞帳が降りてきて、客電が落ちます。それが再びあがると、Noism0『Silentium』は始まりました。沈黙と測りあうような音楽はアルヴォ・ペルト。先日の黒部・前沢ガーデン野外ステージでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』に続いてのペルトです。そして、数日前にビジュアルが公開された金色の衣裳は宮前義之さんの手になるもの。眩い金一色に身を包んだ金森さんと井関さん。久し振りに髪が黒くなった井関さん、たっぷりした衣裳の金色も手伝って金森さんと見分けがつかなくなる瞬間も。そのふたりが絡み合い、動きに沈潜していくと、2体だった筈の身体領域は溶け合い、ほぼ一体化してしまい、もはやふたりには見えてきません。それは「じょうさわさん」と呼ばれるのが相応しいほどで…。おっと、まだまだ書きたいのですが、ネタバレみたいになってもいけませんし、これがギリギリ今書ける限度でしょうか。ただ一言。観ている側も己の感性の未踏の領域を逍遥せしめられるとだけ。

15分の休憩を挟んで、ノイズが轟くと、二見一幸さん演出振付のNoism1『Floating Field』です。こちらは以前の公開リハーサルで全編通しで見せて貰っていたのですが、照明と衣裳があると、(ほぼ身体だけを用いることは変わらないのに、)やはり格段にスタイリッシュで、実に格好いい仕上がりになっていました。そして小気味よく心地よい動きの連鎖や布置の更新の果てに何やら物語めいたものが立ち上がってくるかのようにも感じられます。随所で、脳内の「快」に関する領域(扁桃体)をくすぐり、ドーパミンの放出を迫ってくる憎い作品と言えるでしょう。

そしてこの日はアフタートークが設けられていて、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんと二見一幸さんが登壇し、『Floating Field』に関して、主に客席からの質問に答えるかたちで進行していきました。なかから、いくつか、かいつまんでご紹介します。

Q: 誰がどこを踊るかはどう決めたのか?
 -A: 直接、触れ合ったなかで、ワークショップの様子などを観察して決めた。

Q: 二見さんの「振り」・動きはどうやって出てくるのか?
 -A: まず適当に音楽をかけて、即興で動きを作っていく。そのなかで、伝えら
れないものは排除して、相手の舞踊家に「振り」を渡して、キャッチボールするなかで、刺激されながら作っていく。
音に合わせている訳ではなく、音と関係ないところで作っていくが、そのうち、音が身体に入ってきて、自然と合っていく。 

Q: 作品を作るときに信条としているものは?
 -A: 自分のやりたいと思ったものが心に訴えかけるものでないこともある。客観的に判断して、独りよがりにならぬよう修正・変更したり、変えていく勇気を持つこと。

Q: 井関さん曰く、「金森さんと共通性がある」とのこと。どこだと思うか?
 -A: グループを組織して牽引していることから、メンバーを活かすことやタイミング的にどういったものを踊ったらよいか考えているところかと思う。

Q: Noism1メンバーの印象は?
 -A: 踊りに対して向き合う姿勢がプロフェッショナル。と同時に、ふとした瞬間に、可愛らしい人間性が垣間見られた。一回飲みに行きたかった。(笑)

Q: テーマ「領域」について
 -A: まず、二見さんが送ってくれた「演出ノート」があり、金森さんも同様に、お互いに作りたいものがあり、そこで共通するものとして「領域」と掲げた。
舞台の空間(領域)において発表することを前提に、Noism1メンバーのコミュニケーションの在り方、繋がり、意識、身体を用いて、最後は天昇していくイメージでクリエイションを行った。

…とそんな感じだったのでしょうか。最後に、山田さん、「二見さんはご自分でも格好いい踊りを踊る」とし、更に「(二見作品は)その日によって見え方も変わってくると思う。まだチケットはありますから、また見に来てください」との言葉でこの日のアフタートークを結ばれました。

あたかも「万華鏡」のように、舞台上の様々な場所で動きが生まれ、踊りが紡がれて、様々に領域が浮遊するさまを楽しむのが二見作品『Floating Field』だとするならば、金森さんと井関さんがそれぞれ領域を越境し、侵犯し合い、「じょうさわさん」と化して展開する一部始終に随伴することになる金森作品『Silentium』。畢竟、いずれも観る側の感性の領域は押し広げられて、見終えたあとには変貌を被った自らを見出すことになる筈です。

「ホーム」新潟での残り2公演、お見逃しなく!

(shin)

「纏うNoism」#08:杉野可林さん

メール取材日:2023/06/19(Mon.) & 06/21(Wed.)

翌週末にダブルビルのNoism0 / Noism1「領域」公演が迫り、準備に余念がない頃かと思われますが、その最中、杉野可林さんとのやりとりをさせて頂き、ここに「纏うNoism」の第8回をお送りする運びとなりました。ホント有難いことです。先の『Der Wanderer -さすらい人』での胸を打つ感動的な踊りの記憶も新しい杉野さん。今回は様々に「纏う」杉野さんを拝見して参りましょう。

「ファッションで最も難しいのは、そのロゴで知られることではなく、そのシルエットで知られることだ」(ジャンバティスタ・ヴァリ)

それでは「纏うNoism」杉野さんの回、始まりです。

纏う1: 稽古着の杉野さん

おおっとぉ、まさかの横倒し!
手は90°、足は30°、頭は40°くらいでしょうか、コレ。

 *このスタイルも今までにないもので、まずは登場の仕方にも気を遣っていただき、有難うございます。では、この日の稽古着について教えてください。

 杉野さん「このTシャツはユニクロで購入したもので、数年前から気に入って着続けています。胸元にアポロチョコのイラストが描いてあるのと、生地が薄くすっきりとしているところが好きです」

 *おお、ユニクロのコラボTシャツ!侮れませんよね。で、杉野さんのチョイスは可愛いピンクに可愛いアポロが3つ♪で、アポロ、明治(製菓)が1969年から製造販売しているロングセラーの名作チョコレート菓子ですよね、言わずと知れた。
 「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」(アームストロング船長)で有名な米国による人類初の月面着陸。そのアポロ11号の司令船を模したフォルムで、着陸のすぐ後に発売されたお菓子、アポロ。
 この頃のお菓子のネーミングって社会事象を取り込んだもの多いみたいですよね。1965年発売開始の源氏パイ(三立製菓)がNHKの大河ドラマ『源義経』にあやかったものだったりとか。
 おっと、のっけから話が逸れまくりでスミマセン。戻します。ユニクロのコラボTシャツにはマンガの有名キャラクターなども取り上げられたりしていますが、他には何かお持ちですか。

 杉野さん「あとはユニクロのTシャツは一枚も持っていません。(笑) 他のTシャツはNoismTシャツやご当地Tシャツなどを着ています」

 *なるほど。NoismのTシャツも種類豊富ですしね。私も毎日、色んな過去ものをとっかえひっかえ着ています。あと、ピンク、お似合いですけれど、杉野さんのお好きな色なのですか。

 杉野さん「ピンクは一番好きな色です! 昔から好きで、今もストレッチポールやタオル、イヤホンなどがピンク色です」

 *あの画像見てわかります、わかりますとも。好きな色って、気分を上げてくれますからね。そんな様子が伝わってくる画像ですよね。私もピンクとか赤とか好きですけど、それとは無関係に、いい画像だなと。

 *ついで、稽古着に関して「お約束」の質問です。お好みの靴下などありますか。お気に入りポイントも教えてください。

 杉野さん「リハ用の靴下は全部無印良品のものを使用しています。適度に薄くて足先が綺麗に見えるかなと思って履いてます。色は様々で、ピンクや緑なども履いています」

 *杉野さんはこれまで被りのない無印良品派。靴下ひとつとっても好みは色々なんですね。人それぞれ。無印良品の靴下、今度試してみなきゃって思ってます。世界が注目する「ブランド」ですしね、「MUJI」。

纏う2: 杉野さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

 杉野さん「2021年に開催された『Dance Dance Dance @YOKOHAMA』でNoismと小林十市さんの共演の時に着た衣裳です。まさか同じ空間でリハーサルをするだなんて夢にも思っていませんでした。写真は衣裳合わせのオフショットとして十市さんに撮影していただきました!」

 Noism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY ~記憶の中の記憶へ』ですね。素敵なワンピースですよね。この衣裳自体の思い出やお気に入りポイントなども教えてください。

 杉野さん「お気に入りポイントは裾のフリルとリボンの可愛さです。あとスカートがしっかりとしていて、回ったりするとふわっと広がって少しお姫様みたいな気分になれます!」(笑)

 *上の2枚はどちらも十市さん撮影なのですか。宝物の写真ですね。
それと、「どうして訊かないんだ?」と怒られる前にお訊きしますが、ご一緒にリハーサルをされた時の十市さんはどんな風だったか教えてください。

 杉野さん「目線の向け方や動き方などふとした瞬間もとてもオーラがあり、思わず見とれてしまっていました。(笑) 休憩中では気さくに話しかけてくださったのでとても嬉しかったです」

 *でしょうとも、でしょうとも。気が付くと一ファンに戻っちゃってる瞬間があったりしたのでしょうね。凄く貴重な体験をされましたね。「憧れていると超えられない」(大谷翔平)なんて言える人はごくごく僅かで…。(笑)うん、やっぱり普通に「羨ましい体験」の範疇ですね、それ。うん。そうです。そうそう。

纏う3: 杉野さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 杉野さん「『春の祭典』の衣裳です。Noismに入って初めての穣さんとのクリエイションだったことと、楽譜を片手に振りを創っていくというのが驚きでした。本公演前にはリノリウムに皆で色を付けていったのも思い出に残っています」

 *楽譜を片手のクリエイションとは驚きですね。楽譜は皆さん読めるのでしょうか。あと、そもそも、これまでに他にも楽譜を片手のクリエイションというのはあったりしましたか。

 杉野さん「楽譜を読むのも高校生以来で、クリエイション中に楽譜を使用するのは人生で初めてのことでした。
 読んでいて分からない部分があった時は音楽をやっていたりおちゃん(=三好綾音さん)に、皆聞いたりしていました」

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
 2021年の『春の祭典』の画像をどうぞ。

そうそう、あのリノリウム。前年のプレビュー公演のときには「白」だったものが生命力の爆発を思わせる着色がされていたのでした。その色塗り、杉野さんは主にどんな場所にどんな色を塗ったのでしょうか。

 杉野さん「どこに色を塗ったかはあまり覚えていません。(笑) 一発勝負だったので皆で相談しながら思い切って色を入れてました」

 *ですよね。愚問でした。相談しながらも、勢いのままに、って感じだったのでしょうね。うん、うん。

纏う4: 普段着の杉野さん

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 杉野さん「この花柄のシャツは叔母が昔着ていたのをおさがりでもらいました。
冬はシンプルなものが多いですが、夏は柄物をよく着ています。特に花柄が好みです」

 *上品な花柄のシャツですね。おさがりとは!素材はシルクですか。それとも…。

 杉野さん「シルクです!」

 *そうですか。やはり。着心地もよいのでしょうね。しっかり着こなしておられますね。素敵な帽子も含めて、全体が「絵」になっていますね。キャスケット帽でしょうか。帽子はよくかぶられるのですか。帽子についても教えてください。

 杉野さん「ロングヘアーだった時はあまりかぶっていなかったのですが、髪を短く切ってから帽子をかぶるのもアリかもしれないと思い始めました。今持っているのはキャップとキャスケットです」

 *ホントよく似合ってますね。他の帽子をかぶっているところも見たいです。

 *あと、「冬はシンプル」とのことですが、冬のお洋服の色目は黒中心だったりするのですか。

 杉野さん「色はそんなに気にしてはいないですが、冬だと柄物は少なくて一色のみのモノが多いです」

 *なるほどです。で、大阪生まれの杉野さんにとって新潟の冬はどんな感じでしょうか。

 杉野さん「私の地元はほとんど雪が降らなくて、積もっても1~2センチほどだったので、オーディションで初めて訪れた時に駐車場に集められた雪の山を見て衝撃を受けました」

 *ですよね、もろ衝撃だったことでしょう。でも、今はその「雪国」の一市民ということですからね。人間は順応する生き物なのですね。もうそんな雪もすっかり楽しめるようになっているものと思います。
杉野さん、どうも有難うございました。

杉野さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「日頃からの応援、誠にありがとうございます。皆様からの声援が本当に励みになっております。
より良い舞台をお届けできるよう日々精進してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いします」

こちらこそ、「領域」公演を控えた忙しい時期にどうも有難うございました。『Floating Field』での躍動、楽しみにしております。といったところで、「纏うNoism」第8回、杉野可林さんの回はここまでとなります。

これまで、当ブログでご紹介した杉野さんの次の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」#21(杉野可林さん)

杉野さんには、今後、いずれかのタイミングで、現在、休載中の「ランチのNoism」にもご登場頂きたいと思っておりますので、その際はどうぞ宜しくお願いします。

ということで、今回の「纏うNoism」杉野さんの回、いかがでしたでしょうか。では、また次回をお楽しみに♪

(shin)

「領域」活動支援向け公開リハ、『Floating Field』の熱気を全身で受け止める♪

2023年6月17日(土)午後の新潟市は太陽がギラギラ照りつけ、ぐんぐん気温が上昇して、もう一気に夏が到来したかのような陽気でした。そんななか、りゅーとぴあのスタジオBまでNoism0 / Noism1「領域」の公開リハーサルを観に行きました。

15時からのリハーサルに向けて、10分前の14時50分、スタジオBに入ったところで、この日見せて貰うNoism1『Floating Field』を演出振付した二見一幸さんの姿を認めましたので、fullmoonさんと一緒にご挨拶。二見さん、穏やかで優しそうな、とても腰の低い方でした。

場内には、今回久し振りに踊られる浅海さん、三好さん、中尾さん、庄島さくらさんとすみれさん、坪田さん、樋浦さん、杉野さん、糸川さんそして横山さん(準メンバー)、合わせて10人の舞踊家がそれぞれに動きの確認をしています。まず、目は自然と浅海さんを追うことになりましたし、同時に、かつて二見さんに師事し、同氏のダンスカンパニーカレイドスコープに所属していた横山さんへの興味にも大きなものがありました。

開始予定時間になると、国際活動部門芸術監督の井関さんが挨拶に立ち、二見さんをご紹介くださいました。そして二見さんに「もう始めちゃって大丈夫ですか」と振ると、「じゃあよろしくお願いします。参りましょう」と応じた二見さん、上に触れた通りのお人柄が窺えました。

深海を思わせるような揺らめくような、漂う(floating)ような音楽に水泡のようなノイズ。(個人的な印象です。)まず、上手(かみて)やや手前に位置する中尾さんがひとりで踊り始め、次いでその奥、庄島すみれさんと坪田さんがそれに続き、その後、下手(しもて)側も稼働し、遂にはアクティングエリア全面をフルに使った10名の踊りに繋がっていきます。舞台上の「領域(field)」が更新されていくある演出もあります。そちらもお楽しみに。

と、7分ほど過ぎたところで、CDにトラブルが発生し、リハーサルが中断するというアクシデントに見舞われることに。それに対処しているあいだ、中尾さんが寛いだ笑顔で私たちの方を見てくれています。そして曰く、「緊張が少し解けました。めっちゃ緊張していたから」と。他のメンバーからも「洸太、緊張してたね」との声が聞こえてきました。レアなことだったのでしょうが、意味のあるアクシデントだったようです。同時に、井関さんが中尾さんに指で何やら「3」の数字を伝えています。中尾さんも笑顔で同じ仕草を返しました。「3?何だろう?」そう思っていたところ、「今ので3回目。今日は2回通しているんで」と教えてくれた中尾さん。有難うございました。私たちも和みました。

トラブルシューティングが済んで以降は、淀みなく無事にリハーサルが進行していきました。

まさに「万華鏡」よろしく、音楽がそのボディを回転させるにつれ、オブジェクトケース内の舞踊家たちが現れたり消えたり、位置を変え、動きを変え、フォーメーションを変え、関係性を変え、或いは連動し、繋がり、またはシンクロし、と千変万化の様相を呈して踊っていきます。それも広いアクティングエリア上のあちこちで新たな動きが生じたりするものですから、その情報量の多さに、おのれの目の不自由さを痛感しながらも、この上なく贅沢な作品を見せて貰っている、そんな豊かさに浸りました。一度では見切れないことは間違いなさそうです。

そして同時に、Noism Company Niigataの身体性と二見さんの演出振付の間に高い親和性が認められることにも触れなければなりません。振り付ける側にも、踊る側にも、よそゆきな感じなど一切見られなかったと言い切りましょう。まさに出会うべくして出会った二者。それもまたこの作品を観る贅沢さに繋がる要素でしょう。

約30分の贅沢。どんどん加速度的に盛り上がっていく作品に、観る側の昂揚もマックスに達したところで、パチンと指を鳴らし、「ハイ」と声を掛けた二見さん。この日の通しの公開リハーサルの終了です。

「観ているこっちも動いた気分になりましたよね」とは井関さん。その流れで、二見さんにバトンを渡したところ、「トラブルがあり、すみませんでした」からの、まさかの「緊張してちょっと言葉が出ない…」と多くを語らなかった二見さん。その熱気を全身で受け止めたことで、まだドキドキが収まらない凄い作品とは裏腹に、これまた第一印象のままの謙虚なお人柄は、そのギャップが実にチャーミングで、まさに「ギャップ萌え」状態でした。

稽古場(スタジオB)でやるのは、これが最後だったのだそうで、あとは場所を〈劇場〉に移し、マスコミ向け公開リハーサル(来週6月23日(金))を挟んで、いよいよ再来週には本番(6月30日(金)~7月2日(日))3日間のダブルビル公演となります。その初日には二見さんと山田勇気さんが、2日目には金森さんと井関さんがそれぞれアフタートークに登壇します。チケットは只今、好評発売中。アフタートークでは何でも質問することができますし、まだまだ繰り返して複数回観るチャンスもあります。是非この贅沢な機会をお見逃しなく!

(shin)