「vol.11」として届けられた穣さん+佐和子さんインスタライヴは文山烏龍茶を飲みながら京都公演から新年の抱負まで

2021年初のおふたりのインスタライヴが1月12日(火)の夜8時から配信されました。私は同時刻に生で拝見することが出来ず、遅れてアーカイヴに残されたものを楽しませていただいたのですが、皆さまも既にご覧になられたことと思います。

以前に佐和子さんが台湾で求められたという立派なお茶道具のセットを前に、この度の京都行で出会われたという文山烏龍茶(爽やかな口当たりで、限りなく緑茶に近いのだそう)を飲みながらの寛いだお話には引き込まれて聞きました。

まず、ちょっと細かなことから始めますが、「vol.11」と銘打たれた今回の配信ですけれど、昨年9月に、おふたりのアカウントではなく、穣さん単独のアカウントから行われた7回目の配信「バレエ談義」を含めますと、正確には「12回目」或いは「vol.12」となるものでして、今後、表記に若干困るなぁ、と勝手に思い煩っております。ですが、今後のことは今後、改めて困ることにして、今は割り切って、その「vol.11」として届けられた回をかいつまんでご紹介することに致します。

間近に「Duplex」新潟公演・全12回のロングランを控えた今、この時勢で公演が打てることを恵まれているとし、「勿論、観に来て欲しいが、観に来てくださいと言い難い歯痒さがある」と穣さん。実際に観ている人がいるのはエネルギーが全然違う。2000人規模のロームシアター京都で感じたのは生の波動、静寂なエネルギー。「静寂」とは音がないことではなく、人が作るもので、息を詰めている緊張感が伝わってくるもの。京都ではヒリヒリして、35分が長く感じられたそう。

伶楽舎の皆さんが身を包む装束は5kgもの重量があり、座ると重心が下がって安定することで、身体性に寄与する側面がある。対する、佐和子さん・穣さん・勇気さんの羽織は空調でも動くくらいの軽いもの。「風」や大きな揺らぎのなかにある感じがし、見えない何かに翻弄されながら、空間性を感じられる衣裳。滑らかな揺るぎは半端なかった。

指揮者不在で演奏される生の雅楽は、当然ながら、毎回、スピードもテンポも異なり、それは指揮者がいるオーケストラの比ではなかった。そのときのベストなテンポをどう読み取れるか、「入り」のニュアンスにどう反応するか、まさに「インプロ(ビゼーション)」した感じ。貴重な体験であり、たった一回の公演では勿体ない。どこかでまたやりたい。また、武満徹の雅楽は雅楽でありながら、武満徹であった。改めて凄さを感じた。

昨年、聖夜のオルガンコンサートでも、生のパイプオルガン(石丸由佳さん演奏)で「くるみ割り人形」のアラビアの踊りを踊った佐和子さん。「生で影の映像を使うマジックショー的な演出」は3分半とはいえ、ストレスが大きかったと明かしました。途中、なかなか音が来ない箇所もあり、スクリーンの陰で勇気さんが両手で合図を送ったりというハプニングもあったそうですが、「お客さんにとって面白いものじゃなきゃ」と穣さんは平然。

昨年来のコロナ禍がまだまだ続く2021年。「自分の身の回りの人のことを気にするようになってきている。いろんな人たちに目を配れたらなと思う」と佐和子さん。

穣さんは、活動継続問題などもあり、「闘っている」意識が強かったが、「恵まれてたんだな」と認識することができたと言い、「守りに入らなければならない世の中にあって、なおのこと、挑戦しなきゃと思う。それが恵まれている者の責務」とし、自分がやってこなかった新しいことへのチャレンジを誓いました。また、作品を創作するときには常に、「観ている観客・他者を『embraceしたい(包み込みたい)』気持ちとポカ~ンと突き放したい気持ち、その相矛盾した気持ちがある」と語り、言葉では言い表し難いものの「自分のなかで『攻めている』ものとそうでないもの」があるとしました。それを聞いた佐和子さんは「常に攻めて欲しいと思っているから」と返し、穣さんも「常に攻めているから」と応じました。そして、その「攻める」ことに関して、穣さんはいろんな攻め方をしたいとし、自分のなかの精神の傾きの「プリズム」が止まらず、くるくる回り続けて、いろんなことが乱反射する一年にしたいと締め括りました。

京都を発つ前に穣さんがAmazonでポチッとしたという文山烏龍茶のリラックス効果でまったりと話されたおふたり。皆さんも試したくなったでしょ、文山烏龍茶。かく言う私もです。Noismサポーターの相次ぐ注文で時ならぬ品薄になるかもですね。(笑)

最後に、穣さん、「客席と舞台で時間が共有できたら嬉しい」と。この模様はおふたりのアカウントにアーカイヴが残されています。まだご覧になられていない向きは、是非、全編通してご覧下さい。拙いご紹介でしたが、これまでとします。

(shin)

1/16『Duplex』活動支援会員対象公開リハーサルに行ってきました

1月16日(土)の新潟市は朝から雨が降っていたのですが、寒くなかったのは救いでした。前日のメディア向け公開リハーサルに続き、この日は活動支援会員対象の公開リハーサル(15:30~16:30)が開かれ、そちらへ行ってきました。

受付時間の15時より少し早くりゅーとぴあに着いてみると、スタジオBから降りてくる金森さんと井関さんの姿に気付きました。少し距離を隔てたところからお辞儀をすると、手を振ってくれるお二人。久し振りのNoism、その実感が込み上げてきました。

入場時間の15:30になり、ワクワクを抑えきれぬまま、スタジオBに入ると、森優貴さん『Das Zimmer』のリハーサルが進行中でした。前日のメディア向けリハの記事でfullmoonさんが「ヨーロッパ調のシックな衣裳」と書かれたものは、見ようによっては、チェーホフの舞台で観たことがあるようなものにも思えました。そこに、森さんの「ノーブルさが欠けている」などのダメ出しの声が聞こえてきますから、どことも知れぬ「異国」が立ち現れてきます。また、森さんが発する言葉が、英語と関西弁であることも国の特定を困難にしていたと言えるかも知れません。

ノートをとり、ダメ出しを伝える役目は浅海侑加さん(Noism2リハーサル監督)。それを聞いて森さんが身振りを交えて、Noism1メンバー一人ひとりに細かな指示を出しながら、動きのブラッシュアップを行っていきます。時には、自分が踊ってもみせる森さん。そうやって見せた回転はとても美しいものでした。森さんのなかにあるイメージが具体的な動きを伴って手渡されていきます。

10人の舞踊家(ジョフォアさんの姿がなかったのは少し気になります…)と10脚の椅子。振りを見ていると、椅子の他にも、印象的な小道具がありそうな予感がしました。そして、頭上に吊されて、剥き出しの存在感を放つ照明を観ていると、前作『Farben』の印象も蘇ってきます。その『Farben』では、舞踊家一人ひとりの個性を最大限に活かす演出をされていた森さん。今度はどんなドラマを見せてくれるでしょうか。楽しみです。

16:00少し前になると、森さんとNoism1メンバーは撤収し、3本の筒状に巻かれたリノリウム(表・黄色、裏・緑色)が縦方向に敷かれ、張り合わされて、能にインスピレーションを得たという約6m四方の「舞台」が作られていきます。その転換作業の過程そのものも見物で、誰も席を立ったりすることなく見入っていたことを書き記しておきたいと思います。ものの5分ほどの作業の末、黄色い舞台が整うと、もうそこからは少し前までの「異国」感とも異なる、まったく別の時空に身を置いている気がしました。

舞台上手奥からの照明は傾く日の光のようで、季節はすっかり秋。残り30分は『残影の庭-Traces Garden』の公開リハです。シルク製で、それぞれ異なる色の「薄翅(うすば)」にも似た羽織を纏ったNoism0の3人がお互いに感じたことをやりとりしながら動きを確認していく様子には、大人の風格が色濃く漂っていました。ですから、まず最初、井関さんと金森さんのデュエットから金森さんのソロまでを通して踊った(「舞った」の語の方がしっくりきます)後、「緊張するね」と金森さんが漏らした一言には意外な気がしたものです。ロームシアター京都という大きなハコからスタジオBというミニマムなスペースに移ったことも、「無風」で揺れがない衣裳の感じも、録音された音源も、鋭敏なセンサーを備えた3人の身体には京都とは「別物」のように感じられたのではないでしょうか。「新潟版」が作られていく貴重な過程を覗き見させて貰った気がしました。

16:30を少し過ぎて、金森さんが時計に目をやり、時間が超過していることに気付くと、それまでの張り詰めていた時間にピリオドが打たれ、固唾をのんで見詰めていた私たちも普通の呼吸を取り戻しました。ついで、金森さんが私たちの方に向き直り、金曜日からの新潟ロングラン公演について「観に来ることも快適とばかりは言えない時期ですが、私たちも精一杯のことをやってお迎えします。是非、非日常の感動を味わいにいらして下さい」とご挨拶されると、その場にいた者全員が大きな拍手で応え、この日の公開リハーサルは終了となりました。

1/22から始まる「Duplex」新潟公演(全12回)は全公演ソールドアウトの盛況ですが、2/25からの埼玉公演(全5回)はまだ少し残席もあると聞きます。普段からの健康観察と感染予防を徹底したうえで、ご覧になれるチャンスのある方はご検討下さい。

(shin)

謹賀新年♪りゅーとぴあマガジン「偏愛、Noism」にサポーター中村さんご夫妻

新年明けましておめでとうございます。

コロナ禍が席巻した旧年、すっかり変貌を遂げてしまった社会に、皆さまも怖れと不自由、そして気詰まりばかりだったことと存じます。しかし、私たちは蓄えた経験に基づき、叡智を結集して、「コロナ2年目」に立ち向かうのみです。「一陽来復」。勇気を持ち、辛抱しつつ、明日を信じて。勿論、私たちの伴走者はやはりNoism Company Niigata。支えつつ、支えられている訳です。Noismのある私たちの「New Standard」、本年も宜しくお願い申し上げます。

「迎春」金森さんから活動支援会員への年賀状

そうして迎えたお正月。2021年1月1日発行「RYUTOPIA MAGAZINE(りゅーとぴあマガジン)」vol.63 2021Winterの「偏愛、Noism」に、私たちサポーターズのメンバーでもある中村玄さん・昌子さんご夫妻が取り上げられています。皆さま、ご覧になられましたか。昨年聖夜の石丸由佳さん「オルガンコンサート」へのNoismの出演の舞台裏など興味深いお話も読めます。

「Stay Home」が提唱されるお正月、ゆっくりお読み下さい。

(shin)

めでたい♪「Noism」特番、芸術祭大賞受賞!おめでとう、BSN新潟放送!

聖夜のオルガンコンサートの華やぎの記憶も新しいところですが、2020年のクリスマスはまだ終わっていませんでした!そう、プレゼントはまだ残ってたのです!それは…

祝!BSN新潟放送!「芸術の価値 舞踊家金森穣16年の闘い」、2020年度芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞!(文化庁・12/25発表)

受賞を知らせる新潟日報12/26朝刊記事

このたびの受賞ですが、テレビ・ドキュメンタリー部門での大賞受賞は県内民放では初めての快挙とのこと。BSNテレビではそれを記念して、新年1月20日(水)午後7時からの再放送を発表しています。嬉しい限りですね。「オール新潟」で喜び合うことができますね♪BSNのニュースサイトには、「『芸術』が目に見えない大きな力を与えてくれることを信じ、応援したい」と高く評価された由が記されています。同ニュースサイトへはこちらからどうぞ♪

コロナ禍一色だった2020年、「芸術」のもつ意義も各所で取り沙汰されました。延期や中止に見舞われる公演が相次ぐ中、当たり前に「それ」がある日常の豊かさが再確認された年だったとも言えるかと思います。奇しくも、同番組はNoism活動継続問題を取り上げ、一足先に、行政や企業による芸術への支援の必要性を世に問いかけていました。

「密」になる他ない性質を有する「劇場」をどう再始動させるかが問われた2020年にあって、金森さんとNoism Company Niigataは、今だからこそやる意味のある取り組みとして、過去作品のオンライン公開からはじめて、映像舞踊『BOLERO 2020』の製作・公開という成果を生み出してみせました。それらに接することが出来た私たちは、苦境の2020年にあってさえ、深刻な「Noismロス」には陥らずに過ごすことが出来た訳です。そしてそれはそのまま、誰もが自分の人生に占める「Noism」(或いは「芸術」)の比重の大きさを思い知ったことでもありました。

そうした思いと同根の問題提起を行う番組として必見です。まだご覧になっていない方は是非この機会にご覧ください。

改めまして、「大賞」受賞おめでとうございます♪

(shin)

Noism出演のオルガンコンサート、聖夜を彩る♪

2020年12月24日(木)の新潟市。この時期にしては気温が高く、宙からは雨。そしてそれは降ったり止んだりを繰り返しましたが、夜更け過ぎになってさえ雪へと変わることはありませんでした。

その宵、19時からの「りゅーとぴあオルガン・クリスマスコンサート2020」(コンサートホール)を楽しんできました。

この日のコンサートは『聖夜の饗演!~くるみ割り人形の世界』と題され、ホフマンとチャイコフスキーによる『くるみ割り人形』を軸に、今年4月にりゅーとぴあ専属オルガニストに就任された石丸由佳さんのパイプオルガン演奏+ラジオドラマ脚本家・北阪昌人さんの構成・脚本+山崎真波さんによる朗読+Noism Company Niigataのダンスという一夜限りの贅沢なものでした。当夜のプログラムは次の通りです。

オルガニストの石丸さんは光沢のある上品な深紅のドレス、銀色のバレッタで髪を束ねています。一席ずつ空けて千鳥に座る客席には主に背中を見せているのですが、その背中も光を受けてキラキラ輝くなど、美しい後ろ姿に見とれました。登場後、一礼して椅子に進み出る姿は、譜めくりの女性とともにパイプオルガンの心臓部にその「器官(organ)」の一部として組み込まれるイメージとでも言えましょうか。または、奏でられるのを待つ音楽が彼女を召喚したといった趣を感じたりもしました。祝祭感も満載です。

で、そのパイプオルガン備え付けの椅子に座る動作が何か見覚えのある動きに映りました。「はて、何だろう?」そしてすぐ「スキー・ジャンプの選手がジャンプ台のスタート位置につくときだ」と思い当たりますが、パイプオルガン演奏を初めて生で観て聴く私には、そのときはまだ何故かは不明のままでしたが。

公演後、許可を頂いて撮影した当夜のコンサートホール

演奏が始まると、ライトアップされた無数のパイプから放たれるのは、鈴の音のような繊細な音から「ひとりオーケストラ」という呼ばれ方が似つかわしい重厚な音まで。音の多彩さがまず単純に驚きでした。そして、石丸さんの下方に据えられた大きなスクリーンが曲名のほか、聖夜のイメージなどを映し出します。やがて、演奏する石丸さんの上半身を左やや後方から捉えた映像に切り替わり、更にそこに、石丸さんの足が行うペダルワークの映像も混じり、交互に映して見せてくれます。

で、やや後方からの横顔を含む上半身が映ると、先ず目を奪われたのは4段もある鍵盤を操る様子でした。最初の驚きです。そして続いて、椅子の下の映像に切り替わったとき、黒のレギンスとベージュの靴が足許一体に広がる無数のペダルを行き来するさまに完全に度肝を抜かれ、目は釘付けになりました。その休みを知らない足の動きは、Noismの公演時にホワイエに飾られる舞踊家の足をモチーフにしたタペストリーのようでもありました。

と同時に、ここで遅まきながら漸く気付きます。件のスタート位置へと進む「スキー・ジャンプ選手」との類似の理由に。そうです。一面を覆うペダルの上に立つ訳にはいきませんから、先ず腰かけておいてから、両手を補助的に使って、自分が「ここ」と思う位置まで横移動する他ないのだということに。パイプオルガン初鑑賞なので長々書いてしまってますが、要は、手のみならず、尋常じゃない足の動きに圧倒されたことから来るものと思って下さい。(これを読まれている多くの方にとっては、当然のありふれた動きに過ぎないのでしょうが。)

音楽は徐々に「聖夜」一般から『くるみ割り人形』へとフォーカスしていきます。山崎さんの声で届けられる北阪さんアレンジの脚本にはユーモアも満載だったようでした。例えば、「ハツカネズミ」が攻めてくる場面での石丸さんによる劇伴が『スター・ウォーズ』「ダースベイダーのテーマ」だったり、ハツカネズミの女王が発する憎々しい台詞がドラマ『半沢直樹』の「大和田常務」(香川照之)による有名な「お・し・ま・いDEATH!」であり、朗読する山崎さんも(少し恥じらいながら)ジェスチャーを交えて再現したりしていました。気付かなかっただけで、他にももっとあったのかも知れません。そんなふうに様々なものがコラージュされて、肩の力の抜けた、実に楽しいパフォーマンスが届けられました。

プログラムを見ていましたから、特別出演のNoismは休憩後の後半冒頭とわかっていました。そこへ至るまでの『くるみ割り人形』の展開をゆったり受け止めていた筈が、ある曲目で大きく心を揺さ振られることになります。「J.S.バッハのカンタータ『われらは多くの困難を経て』BWV146よりシンフォニア」と表記された曲が奏で始められたときです。「えっ!これって『クロノスカイロス1』の曲(チェンバロ協奏曲)ではないか!」となったからです。虚を突かれたことは言うまでもありません。そうした様々な仕掛けの背後にほくそ笑む石丸さん、北阪さん、山崎さんを想像するのも楽しいことでした。聖夜のお楽しみはこうでなくちゃと思ったような次第です。

後半のNoismの出演部分についてです。先ず、スティーヴンさん振付の『フランスの踊り』から。黒い衣裳に身を包み、聖書とおぼしき書物を片手に現れる「胡散臭い」神父のカイさんを中心に、白い衣裳の二組は、ジョフォアさん&スティーヴンさん、井本さんと鳥羽さん。リフトも多用する男性ペアのなかのジョフォアさんの表情も「胡散臭さ」では負けていないものがありました。(笑)観ている者は一気にお楽しみの時間に放り込まれました。

次いで、金色の袖章入りの青い衣裳を纏った水兵然として、大袈裟かつコミカルに両手両足を動かして登場してくる林田さん、西澤さん、三好さん、中尾さん、杉野さん、樋浦さんたち。カイさん振付の『ロシアの踊り』です。みんな楽しそうな表情を浮かべながら、錯綜しながらもぶつかることもなく動いていきます。

そんな青い人たちの動きを止め、退場を迫ったのは、舞台上手側から聞こえてくる耳をつんざくようなホイッスルの音。赤い衣裳に着替えた鳥羽さんが吹いていました。そして、同じく赤い衣裳を着たチャーリーさんが手に5つの風船(赤4、黄1)をもって姿を現します。ジョフォアさん振付『中国の踊り』。黄色の風船を手にした鳥羽さんと赤の風船をひとつ持つチャーリーさんによる愛らしい踊りを観るパートでした。

ふたりが風船を撤収して下手側に捌けると、今度は上手側から四角のスクリーンパネルを押しながら、ここまでのどのダンサーよりも役柄コスプレを徹底させた「アラビア人」山田勇気さんが登場してきます。その姿はこの日の「胡散臭さ」MAXで、他の追随を許さないものがありました。(笑)そして、スクリーンが透かすシルエットと見せながら、投影される映像で黒く浮かび上がる姿形は井関さん。スクリーンからはみ出すときの生身の姿は、こちらもしっかり「アラビア人」。金森さん振付の『アラビアの踊り』です。『CARMEN』等でお馴染みの手法を用いて、映像と動きのシンクロ振りを楽しみながら、魔法のような幕切れに酔うに至る、良質のエンターテインメントは会場中を幸せな空気に包みました。

『箱入り娘』などとも異なる、どこをとっても、幸福な諧謔味に満ちたNoismというのも、なにやら新鮮でした。それもこれも聖夜が見せる夢のひとときだったのでしょう。そして夢であるだけに、もう観ることもないかもですが、また観たいですね、今度は『くるみ割り人形』全編として。

何分、この時期の定番のバレエ作品に関しても、観た回数は数えるほどですし、パイプオルガンのコンサートなどお初ときています。ですから、Noism繋がりで今回の鑑賞機会を得たことを嬉しく思っております。この宵、こうして時代を超える人類共通の「宝」に触れてみて、毎年同じ季節に繰り返し身体で受容して楽しむ豊かさが存在することを身をもって味わったような気がします。コロナ禍が収まる様子も見せない2020年の暮れですが、そうした厳しい状況をいっとき忘れて過ごすことができ、心豊かに帰路についたことを書き記しておきたいと思います。

ダラダラと纏まりのない文章を書いてしまいました。皆様方のご容赦をお願いしまして、おしまいとさせていただきます。m(_ _)m

(shin)

快晴で暖かい豊橋から戻った新潟は初雪、インスタライブはvol.11

2020年12月14日(月)はこの冬一番の寒波が列島を襲い、新潟市も初雪に見舞われました。そんな寒い月曜日の夜20時、土曜日の豊橋公演から戻ってのインスタライブは11回目。おやつに弘前産の蜜入り林檎(佐和子さんは堅めが好み)を頬張りながら、特にテーマを定めないかたちのフリートークでした。その肩肘張らないものの、深みも備えたお話から一部ご紹介いたします。

年末・年始も忙しいNoism Company Niigata。12/24はオルガンコンサートに特別出演での「くるみ割り人形」、明けて1/4には京都のロームシアターに向けて出発。「年末年始も踊り続けます」(佐和子さん)

「豊橋、めっちゃくちゃ疲れました」(佐和子さん)…新潟での通し稽古の最中、ある場面で一瞬のカウントの遅れから外反母趾の足指を「がっつり突き指」したことから持病の腰痛も出て来ていたという佐和子さん。

豊橋公演(一回公演)について: 「もう、一回やし、いてまえ」(穣さん)に、「いってもうた」佐和子さん、本番は楽しかったものの、終わってからの身体のボロボロさ加減は大変だったとか。今回の豊橋公演のような一回公演には精神的なキツさがあり、その一回に賭けるときに「訳がわからなくなってはいけない」という大前提があると佐和子さん。最高のものを見せるためのコントロール。「初日だと思ったらダメ。我を失ってはいけないし、コントロールし過ぎで面白みがなくなるのも困る。色々考えて、考えて、でも、最終的には『いってきま~す』ってなる」(佐和子さん)「緊張しない、ワクワクしない、ヒリヒリしないとダメなのはわかっている。同時に、そんだけ熱くなったらコントロールできないよ、っていう冷たい自分もいるから、敢えて『うるさいっ』って言って出ていく」(穣さん)

豊橋公演の『FratresIII』、自覚としては結構良かったという穣さん。ゲネで良いと、その波で上手くいくのが穣さんだと佐和子さん。

「ここ最近、舞台で『知らない自分』が出てくるのが楽しい。前は、自分の身体がスペースのどこにいて、どういう感じかというアウトラインが見えていたのが、最近は、内側の方が見えている。『あっ、そんなふうに感じるんだ』とか」(佐和子さん)「それはその瞬間、ライブのその場にいるっていうことから受けるものを感じられているっていうことで良いんじゃない」(穣さん)「ライブのその瞬間に受けるものは絶対キャッチしたいから、あんまり固執し過ぎないようにしている。そのバランスが今は楽しいっス」(佐和子さん)「良かったっス」(穣さん)

本番前、ストレッチしながら久し振りにJポップを聴いていたという穣さんに対して、佐和子さんは演歌。「演歌オンパレードで、楽しかったっス」(佐和子さん)

『Adajo Assai』の二人の関係性について: 最終的には女性がいなくなるのだが、「いないんだけど、いる。いるのに、いない。いなくなったから、いる。そういうことなの。『Adajio Assai』では、言語化しづらいことを探究して作っている」(穣さん)「私の感覚的には、男と女という感じではない。ふたりの人間、舞踊家。名前が消えたときに、ただ人間が二人そこにいて、時間軸が逆戻りしたりとかする」(佐和子さん)「時間はひとつのテーマ。後半、動きを完全にリバースにしている。時間は前にしか進まないんだけれど、振付的には動きを全部逆にしている。離れているけど、影響し合っていることもある。別な空間にいながら共有したり、ズレたりみたいな構造もある。そのテーマはずっと大切なテーマ」(穣さん)そこから、鈴木忠志さんの本を介して、「演じている=観ている場で、本来、共有されがたいものを、ある種の妄想、幻想、虚構を通して、あたかも必然的に、そこに存在して、共有したと感じられる瞬間みたいなものを産む装置として演出や作品があると思う」(穣さん)

『Adajio Assai』から『春の祭典』への佐和子さんの変貌に関して: 「変貌大好き。でも、何かになろうとするのは嫌い。身体を変えるというのが大前提。自分の身体を見たりした感じから、自分の身体の奇妙なシェイプや奇妙な気持ち悪さがどうやったら出るかから。バレエ的なものから崩れたものが面白いと思った。自分の身体を研究することから始まる」(佐和子さん)

舞台に出る前のことなど: 「頑張ろう」みたいに声をかけ合ったりすることはない。それは、あくまで一人だから。「一人だからこそ、その後、舞台上で会ったときに会えるっていう」(穣さん)「凄い集中したいときに、人と触れることによって集中が切れちゃう。集中したまま『ヨロシク』とはなれない。(穣さんが)言ったとおり、舞台に行ったときに出会いたいから、その人たちと」(佐和子さん)「聖域さんだよね」(穣さん)「すごいわかる」(佐和子さん)「祈るときって一人なんだよね。集団で祈っていても一人だと思うんだよね」(穣さん)

…とまあ、そんなところを拾い出してみました。これからもインスタライブは続けていくそうですし、ゲストを呼ぶことも考えたいそう。で、次回は、鈴木忠志さんをはじめ、大先輩たちからどんな影響を受けて、どう血肉になっているか。また、昨年の利賀村での『still / speed / silence』の裏話なども内容としたいそうです。

おふたり共同のインスタアカウントにアーカイヴがあります。全編はそちらでどうぞ。それでは今回はこのへんで。

(shin)

「ランチのNoism」#8:チャーリー・リャンさんの巻

メール取材日:2020/11/14(Sat.)

今年もメンバーの入れ替わりを経たNoism Company Niigata。「ランチのNoism」は今回が第8回目。チャーリー・リャンさんのランチをお送りします。先の映像舞踊『BOLERO 2020』では隣の井関さんの部屋への「闖入」の顛末もコミカルなチャーリーさん。思い起こせば、実験舞踊『R.O.O.M.』での「軟体」を駆使したモジモジも同じような味わいだったなと。そんなチャーリーさんのランチ、ではでは拝見といきますか。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

りゅーとぴあ・スタジオBに昼がきた♪「ランチのNoism」!

*まずはランチのお写真から

大公開、ど~ん!
う~ん、おいしそう♪

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 チャーリーさん「鶏肉、ごはん、野菜入りの味噌汁、それに温泉卵です」

 *これはまたえらくそそられるランチですねぇ。お腹が減っているときに見たりすると、もう「めしテロ」間違いなしの画像かと!

2 誰が作りましたか。or 主にどこで買ってくるのですか。

 チャーリーさん「スーパーマーケットで購入します」

 *で、そのスーパーマーケットについてお訊ねしましたところ…

 チャーリーさん「お気に入りのスーパーはお弁当の種類が豊富なイオン。でも、家から遠いので、いつもはイトーヨーカ堂に行きます。それも大体、夕方の6時~7時くらいに。値引き価格で買えるからです」

 *出ました、イトーヨーカ堂!そしてお得な「お値引き時間帯」の利用!これはもう「Noismメンバー的生活様式」としてすっかりお馴染みですよね。(笑)賢い消費者になることって大事なことです、うん。(再確認致しました。)

こちらは別日のランチ(11/20)♪
鶏肉、温泉卵、ごはんと
この日はクラムチャウダー。
それにしても、いい表情です♪♪

 *とろけるようなチャーリーさんの表情に目は惹き付けられますが、脇に置かれたプラケースに貼られた「赤札」も見逃せませんね。これぞ、「最強」イトーヨーカ堂を物語るものでしょう。(笑)

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 チャーリーさん「毎日の昼食では、たんぱく質が最も重要と考えています。たんぱく質は筋肉の回復に役立つからです」

 *チャーリーさんも、空腹を満たすだけではなく、考えて食べておられるのですね

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 チャーリーさん「肉、野菜、ごはんに卵です。特にランチに関しては、バランスを心掛けています」

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。 それとも毎日変えようと考える方ですか。

 チャーリーさん「時に食べる肉を変えたりします。鶏肉だけでなく、牛肉や魚なんかも食べたりしますね」

 *ランチで食べるものはほぼ固定されている感じですかね。で、画像とコメントから好物は鶏肉とお見受けしましたよ、チャーリーさん。

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 チャーリーさん「公演がある日には、いつもより少なめに食べます。例えば、おにぎりふたつと味噌汁とかみたいな。舞台に立つには食べ過ぎるべきではないと思うからです」

 *この言葉から映画『蒲田行進曲』のヤス(平田満)の台詞を思い出しました、って古いか?(汗)ところで、おにぎりですけど、チャーリーさんのお好みは、鮭、エビマヨネーズ、豚がベスト3とのことで、割とヘビー系。身体、使いますもんね。うんうん、納得。

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 チャーリーさん「ジョフ(=ジョフォア・ポプラヴスキーさん)と一緒ですね。いつも彼と一緒に食べています」

 *おっ、セブンイレブンのゆで卵推しのジョフと一緒!好きな「卵」論争とかになっちゃったりして…。(笑)

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 チャーリーさん「実際のところ、食べているときには話したりしません。子ども時分に両親から、『食らうには語らず』と教わったことによります。…Youtubeを見続けていたりはするのですが」

 *でも、もしかしたら、今ならご両親から『食らうなら見ず』って言われるかも知れませんよ、チャーリーさん。そんな家庭も多い筈。

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。誰とどんなものを交換しますか。

 チャーリーさん「時々、ジョフとクッキーやらプロテインバーやらを交換したりしてます。また、時に、チキンスープとか餃子を作ったりした際には、絢美(=鳥羽絢美さん)に分けたりすることもあります」

 *そのあたり、お訊きしましたよ。よく口にされるのは、クッキーならバタークッキー、プロテインバーに関しては、ダーク・チョコレート味なのだそう。それから、「スイーツを食べるのは好きだけれど、甘過ぎるのはちょっと…」(チャーリーさん)ってことでした。スリムですもんね、チャーリーさん。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。 料理上手だと思うメンバーすか。

 チャーリーさん「みんな、料理は上手ですね!私たちはみんな一人暮らしをしているので、料理の腕前は大切なんです。そんな事情から、みんなが自分にとって最高の料理人になるんですね」

 *な~るほど、なるほど。道理ですよね。うん、うん。大きく頷いてしまいました。

ってところで、今回のチャーリーさんのランチ、おしまいです。どうもご馳走様でした。最後にチャーリーさんからのメッセージをお読みください。

■サポーターズの皆様へのメッセージ

「いつも支えて下さり、有難うございます。皆さんのサポートが私たちにとって向上の動機になっています。皆さんにより良いパフォーマンスをお届けしたいと思っています」

時はまさしく、金森さんと森さんによる「Duplex Noism0 / Noism1」のチケット好評発売中。届けられるパフォーマンスをワクワク心待ちにする今日この頃ですね。

それでは今回はここまで。お相手はshinでした。

(日本語訳+構成:shin)

インスタライブvol.10「40代舞踊家として生きる」←「佐和さん、俺たち中年でっせ」(穣さん)

2020年11月16日(月)、穣さんと佐和子さんのインスタライブは10回目を数えました。この日のテーマは「40代舞踊家として生きる」。おけさ柿をつまみながらのお二人の寛いだトークを楽しく聴きました。アーカイヴも残されていますが、今回もこちらで概略のご紹介をさせていただきます。

40代舞踊家のお二人: 6歳で踊り始め、週末に46歳になる穣さんは、舞踊家人生40周年。3歳で踊り始めた佐和子さんも来年、40周年。大人の階段を上っている感じ。30代は若かった。苦しかった。40代がこんなに楽しいとは。様々な言葉がリアリティをもって、身に沁みるようになった。40代に入って始めて気付くことが多過ぎる。「毎日、稽古して、実演に向けて向上心を持ち続けていられる者は少ない。気持ちだけでなく、環境面でも」(穣さん)「若い頃はパッと踊れた。今は、準備の動きなど、細かいことを大切にするようになった。飛んだり跳ねたりしていた若い頃には意識がいっていなかった」(穣さん)「飛んだり跳ねたり、やりたい」(佐和子さん)「俺、そこを過ぎたんだよね、もう。俺の方がちょっと先輩だからね」(穣さん)芸事は奥が深い。経験して積み重ねる、終わりがない世界。

若い頃と今(40代): 若い頃の後悔はないというお二人。踊りは確実に上手くなっている。身体の衰えは感じないが、空いた時間(待っている時間)に、「これは40代のせいかなって思う疲れはある。踊っている方が元気。もしかしたらいけるのかもしれないけど、今のことだけじゃなく、控えている本番とか、ちょっと先のことを考えるようにもなっている」(佐和子さん)

30代中盤から後半はしんどかった(佐和子さん); リミットあるんじゃないかと思い、焦っていた。40という区切りまで時間がない感覚。それを抜けて、今は全く焦りはない。

もっと色々経験したい: 新作は雅楽、笙の音で踊る武満徹は人生で初。今からもっとやる。どんなことが出来るか楽しみではあるが、本番までの3ヶ月を捧げると考えると、何でもかんでもではない。

音楽をめぐって: 「ミュージシャンには憧れがある。音楽を自分で奏でられることに、リスペクトと嫉妬がある。『負けないぞ』みたいな気持ちがある。」(穣さん)「作品と作ろうと、音楽と対峙するとき、対決するもんね。私は音を呑み込んでしまうようなタイプの舞踊家」(穣さん)「音楽だけ聴いていれば感動できちゃうもん。要らないんだよ、踊りも、美術も、演出も、照明も。何にも要らない。でも、見えるわけ、そこにあるべき空間とか動きとかが。音楽だけでも満足なのに、そこに敢えて勝負を挑む訳だから、真剣。自分に見えているものの最善のかたちを具現化できなければ適わないから、対決感が出ちゃう」(穣さん)その後、穣さんの「何でも対決するのが好き」には、佐和子さんも同意。

「金森穣50代ブレイク説」: 次の世界が開けそうな気がしている。「大先生」の扉が開くかもしれない。「私も一緒に入っていって」(佐和子さん)

佐和子さんの目標(妄想): 醜くなった姿は見せたくない。練習し続けて、70代くらいで立っているだけで美しくありたい。

長く続けること(佐和子さんの場合): 対極にあるのは「これだ!」の瞬間に引くことだろうが、佐和子さんは大きいことをやってもその直後に「まだ次に」と思うタイプ。「欲深い女なのよ」(佐和子さん)「知ってる」(穣さん)

長く続けること(穣さんの場合): 極論、振付家ゆえに70代でも立てちゃう。自分が出てても出てなくても、「これだ!」っていう作品を作りたい。

欲深いこと: 「というか、単純に好きなんすよね、舞台に立つということとか、この道で日々、自分の身体に向き合うこと、表現についてずっと考えて、悩んで、そのために日常を割いてみたいなことが」(穣さん)「昔は『好き』って言うと格好悪いと思ってたけど、本当に好きなんだと思う」(佐和子さん)「まあ、『好き』って言葉じゃなければ、すごくそれが『大切』なんだと思う。佐和子という生き物にとって。それは俺にとってもそうだけどね。だから、そういうものと出会えて、それでそういうものと向き合う環境がある恵まれた俺たちとしてはもうそこに邁進するしかない」(穣さん)「それはもう捧げる覚悟でいるから」(佐和子さん)「そこで見出したものを皆様にお届けすることで、そのご恩が返せたらという感じだよね」(穣さん)「ホントそうですねぇ」(佐和子さん)

…とまあ、こんなところを取り上げてみました。

途中、幾度か途切れたりした「40代舞踊家トーク」は、ラストに至り、佐和子さんの「ああ、また復活した。また復活した。ハハハ」の言葉を残して、終わりの時間となり、そのまま「復活」を見ずに終了するという意表を突くかたちでのカットアウトとなりました。(笑)

まだまだ、本編にはここで採録していない細部も満載です。是非、アーカイヴでお楽しみください。

(shin)

「潜入レポ」(笑):大汗をかいたものの楽しかった「Noismレパートリー体験(初級)」

前週には数日、冬の前触れを告げる容赦ない冷え込みに襲われたものの、この週末、再び、セーターが不要なくらいの気持ちよい涼しさ加減に戻った新潟市界隈。11月15日(日)16:30。Noism Company Niigataによる「市民のためのオープンクラス」、この日は「Noismレパートリー体験(初級)」が催され、「参加」というより、「潜入」という風情で「体験」して参りました。

「体験」であり、「初級」であったため、蛮勇を奮い起こして申し込みをしたのですが、連れ合い(不参加)曰く、「『初級』といっても、経験者が謙遜してそこに参加するんだよ。よく申し込んだね」と呆れられる始末。何しろ、私、よく足の小指を柱や家具にぶつけているような身体感覚しかもたない身。なかでも、10年ほど前の夏の夜中のことですが、睡眠中に喉の渇きに襲われ、コップ一杯の水を求めて、ガバッと飛び起きてキッチンへ向かう途中、家具に右足の小指を「引っ掛けて」しまい、勢いのついている身体は進む、右足の小指は残るといった具合で、小指と薬指の間が裂けてしまい、あまりの痛みに押し当てた両手が生温かい血で染まり、翌日、4、5針縫ったような経験の持ち主。(今も左足の小指より、右足の小指の方が外側に大きく開くことが出来ます。(汗))

若干怖々、会場のスタジオBに着いてみると、知り合い(久志田さん、モンちゃさん、たーしゃさん)の姿を見掛け、ちょっぴり落ち着きはしましたが、男性参加者は久志田さんと私のみで、見たところ、ダンス経験をお持ちの方が多い様子に、場違いというか、アウェイ感たっぷり。まさに「潜入レポ」の風情で、「ミッション・インポッシブル」の音楽でも聞こえてきそうな心待ちでしたが、同時に、故・植村直己さんの「冒険とは生きて帰ること」の言葉が脳裏に浮かんできて、「ええい、ままよ」とばかり、一番踊れないながら、リタイヤせずに、「90分楽しんでやれ」と開き直って、開始時刻を迎えました。

この日の講師役は今季、Noism2リハーサル監督に就かれた浅海侑加さん。Noism2のメンバーも全員、加わってくれて、ホントに贅沢な時間が始まりました。まずは足裏を合わせて座る姿勢からの呼吸。しっかり時間をかけて行いました。「ゆっくり吐いて、ゆっくり吸って。全身に空気を届ける感じで。段々、身体が温かくなってくるでしょ」(浅海さん)まったく、その通りでした。その後、両肩を回し、前屈をやって、足首を回し、体側を伸ばし、アキレス腱を伸ばして、準備を整えました。

で、浅海さんから告げられたこの日の体験レパートリーは、劇的舞踊『ラ・バヤデール-幻の国』第2幕の「亡霊」の場面。あの幻想的で、優雅で、魅力的な踊り。なんという贅沢!参加者の目は確実に「ハート」型になっていた筈。両掌を身体の前で交差させて、一歩一歩前に出て、パッと横に開くを繰り返すあの動きです。「空気を前に押すようなイメージで」と浅海さん。つま先や踵の伸び具合とか、それ以前に身体をぐらつかせずに足を運ぶこととか、簡単そうに見えて、その実、そんな生やさしいものではありませんでした。何度も繰り返し練習しました。

そして「初級」の「体験」ですから、恐らく、参加者のほとんどが、その動きこそがこの日の中心と勘違いし始めた頃、浅海さんが「ここから踊りに入ります。ちょっと難しいですが」と言い、「ええっ?」と声があがる場面もありました。そうです。緩やかな前進+横への開きから始まり、横にユラユラに至るまでの濃密な約2分間。たうたうように、それでいて淀みなくうつろいゆく一連の動きがこの日の体験内容だった訳で、真似事で終わらない、本気の「体験」機会と言えるでしょう。

まず、全員で浅海さんから振りを細かく切りながら一通り教えて貰ったあと、「情報量が多いので」(浅海さん)と、15名の参加者は、5名ずつ3つのグループに分けられ、順番に2度ずつ、浅海さん、Noism2メンバーと一緒に踊る時間が設けられました。勿論、ひとつのグループが中央の鏡の前で踊っているあいだも、他のグループが脇で一緒に踊って練習している訳です。回転があり、正座姿勢から膝を送り出しての移動があり、手も足も、そして身体の重心の面でも、多種多様、多彩な動きを「体験」させて貰いました。重心の移動がスムーズであることが肝要。そして、身体は動けない方向には絶対に動けないという当たり前の事実。動きの流れをイメージ出来ないなら、もう踊りにはならないことも身をもって再確認したような次第です。私の場合、次はこれ、その次はあれと思い出しながら(ぎこちなく)動く感じに終始し、正直、「音楽を聴き、音楽に合わせて」という段階以前だったのですが、浅海さんはじめ、Noism2メンバーが丁寧に指導してくれたお陰で、自分なりの気付きもありました。

大鏡に映る自身の身体を見てさえ、どこが違っているのか、正確に掴むこともままならない私、身体の隅々まで神経が行き届いている感じから程遠く、全身のイメージを持てない私は、当然に悪戦苦闘。振りを覚えるのも大変でしたし、それを身体を使ってなぞろうとするようなレベルですので、踊りとは別物の、極めて不格好な動きになっていた筈です。汗をかいたのは、身体だけではありませんでした。これまで、小手先だけで小器用に生きようとしてきたんじゃないか、とか。

終始、皆さん、笑顔でしたし、私も例外ではありません。踊りとは無縁できた私が、「『バヤデール』のあの素敵な場面を直接、メンバーから教わって、踊ってみた」と言い得る機会に恵まれたのです。素晴らしい市民還元の機会だと言い切りましょう。金森さん曰く、欧州のカンパニーにも類を見ない「オープンクラス」を実践するNoism Company Niigata。これを「豊か」と言わずして、何と申しましょう。教えて下さった浅海さんはじめNoism2メンバーの皆さん、どうも有難うございました。楽しい90分間でした。

汗だくで帰宅して、すぐにお風呂に入り、湯船につかりながら、あちこち揉んだりしましたが、私の場合、筋肉痛が出てくるのは恐らく明後日くらいかなと思います。身体と心が元気になったように感じるのは気のせいではないでしょう。筋肉痛も身体が喜んでいる証拠かなとも。見た目、優雅にして、動きはハードな場面の実体験。そして感じる、今まで味わったことのない類いの満足感、充実感。90分、1000円は安すぎでしょう。そして、私でもこうして「生還」できたのですから、今回、二の足を踏んで見送ってしまわれた方々、「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損、損」ですよ。次回、是非、是非♪ってところで、今回の決死の「潜入レポ」を締め括りたいと思います。どうもお目汚しでした。

(shin)

インスタライブvol.9は映像舞踊ボレロ裏話♪

2020年10月26日(月)21時、9回目を数える金森さん+井関さんのインスタライブは、10月9日に公開された映像舞踊『BOLERO 2020』の裏話♪なんとも嬉しいじゃあ~りませんか、コレ。おふたりのインスタにアーカイヴが残されています。是非ともご覧頂きたいと存じますが、今回も簡単に概略のご紹介をさせて頂きますので、参考にされてください。

発端: コロナ禍で公演はできないが、メンバーは新潟にいて、「稽古はしてよし」の日々、「このメンバーで何も残せていなかった」思いがあったこと。

今の時代のボレロを作る: 恩師ベジャール版は中心にメロディ(カリスマ、ソロ)を配し、それをリズムが取り囲む構造=極めて20世紀的マスターワーク。同じものを作っても仕方ない。今なら、多視点、同時多発的、個人主義、多様化。

『春の祭典』と共通のコンセプトで創作: ①楽譜の構造の理解、②スコアにのっとった台本作り、③舞踊家に楽器を割り振る。

『ボレロ』の3つの構成: メロディ、Aパターンリズム「メインリズム」、Bパターンリズム「合いの手リズム」(←金森さんの造語)→それら個別バラバラだったものが、やがて同期していく。

使用音源について: アルベール・ヴォルフ(1884-1970)指揮・パリコンセルヴァトワールオーケストラによる1950年代後半のLPレコード。著作権(70年)が切れているもので、演奏が良いものを選んだ。冒頭、登場するターンテーブルはおふたりのご自宅の私物とのこと。

動きのクリエイション: ①テーマ(キーワード)に基づいて、各メンバーに動き(断片・マテリアル)を作って貰う。②それを、金森さんがカウントに落とし込んで、メロディーラインで動きに還元していく。

今回『ボレロ』のキーワード: スコアナンバー1~7「いらいら、もどかしさ、我慢」、スコアナンバー8~11「むらむら、落ち着かなさ、欲望」、スコアナンバー12~15「鍛錬、解放、祈り」、スコアナンバー16,17「憤り、息が出来ない」。→『BOLERO 2020』は井関さんによる「我慢」から始まる。

映像作品を作ることの大変さ: エネルギーや緊張感が変わってしまうのでカットはしたくない。そこで全て一発撮り。SHSの協力を得て、一日での撮影だったため、各自30分以内で撮る必要があった。クリエイションは撮影を入れて2週間、振付も覚え立てほやほや状態で、「試験のようだった」とは井関さん。対して、金森さん、演出振付家としては、当然、最上のものを目指す訳で、「もう一度!」「One more time!」と言わねばならない場面も多く、「残るもの」を作る大変さがあった。

「ボレロ」最終盤の転調: ここではない別の次元にあがる瞬間。それがボレロの肝であり、それを可視化したかった。各自の部屋→舞台へ。非日常への飛躍。一分に満たないながら、生きる証。(…その際の衣裳秘話から続くお話は実際に聞いてのお楽しみ♪)

映像舞踊『BOLERO 2020』と今後: いずれ舞台でもやるつもりだが、それはそれで違う見世物になる。映像としての力や、舞台とは何かを感じることにもなる。一回じゃ見切れない。何度も観て欲しい。

…以上、そんな具合でしたかね。この日は「ショートなんで」(金森さん)と、ほぼ30分きっかりでの終了。しかし、聴いていて興味を惹かれるお話ばかりでしたので、是非、アーカイヴでお楽しみください。

そして聴けば、また観たくなること必定ですよね。ほ~ら、あなたもまた観たくなってきた。我慢は身体に悪いですからね。観たらいいんです、観たら。私も三度目のレンタル期間に入っております。

お粗末様でした。ではでは。

(shin)